三毛田
2025-11-01 21:47:24
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63 063. 日を浴びたひまわりの笑顔

63日目
それは俺だけに向けられたものだから

『これ、丹恒に似合うと思って』
 差し出されたのは、学校で育てているものよりも大きな、大輪のひまわり。
 受け取って、これはどうしたのかと尋ねれば、近所の年寄りから貰ったと。
 その時に、なにか言われたのだろう。
 もじもじと恥じらうように指先を動かしていて、落ち着きがない。
『好きな子に、あげたら喜んでもらえるって……言われたんだ』
 〝好きな子〟と、彼は当たり前のように彼は口にする。もう少し隠そうとしないのか? いや。口を滑らせたことすら気づいていなそうだ。
 その言葉に動揺するどころか、思っているよりも冷静で。
 まるで他人事のように感じる。
『そうか。ありがとう』
『うん! あっ』
 俺が受け取った事が嬉しいのか、ニコニコと頷き。だが、何かを思い出したように表情を変え。
『どうした?』
『カフカに、お使い頼まれてた! もう行く!』
 問いかければ、来た道を引き返そうと、体の向きを変え始める。
『気をつけて』
『うん! また学校で!』
 満面の眩しい笑みを浮かべ、勢いよく手を振る。それに応え、俺も家へと戻るために体の向きを変えて歩き出す。
 彼を花に例えるのならば、きっとひまわり。
 今この手にある、大輪のひまわりだろう。
 彼の〝好きな子〟が俺であることは、薄々わかっていた。
 嬉しくあると同時に、俺でいいのだろうかと少々複雑な気持ち。
 帰宅して調べた花言葉は、
〝あなただけを見つめる〟
〝情熱〟
〝憧れ〟
〝光輝〟
 で。
 多分だが、最初の花言葉が当てはまるはず。
 だが、穹のことだ。そんなことなど気にせず渡したのだろう。
 どうしてか、簡単に想像できるのだ。
 そんな彼との付き合いも、十年近くが経過しようとしており。
「うえっ、ひぐっ、ぐすっ……
「泣いていたってどうにもならないだろう」
「丹恒と別のクラスやだぁ~」
「それは、教師の采配だからな。俺にはどうすることもできない」
「なんで毎年クラス替えなんかするんだよ……必要ないじゃんかぁ」
 確かに、それは俺も思う。
 一年かけて仲良くなったクラスメイトと、別れを告げなくてはいけない。また一から信頼関係を構築しないといけないのは苦痛だ。
「毎日休み時間に会いに行っていいか?」
「ああ」
「お弁当も、一緒に食べたい」
「用意するが、たまにはお前も用意してくれるなら」
「朝はなるべく頑張るし、帰りも一緒がいい」
 俺の胸に顔を埋め、ぐりぐりと額を押し付けてくる。
 でも、絶対に面と向かって好きと言ってこない。
 俺はあの日からずっと待っているのに。