彼方の作品倉庫
2025-11-01 01:01:34
1059文字
Public 利こま
 

【利こま/SS】万聖節の前夜へ滑り込み

現パロ。恋仲で同棲中。ハロウィンネタです。
※年齢操作の要素あり。転生&前世の記憶あり。ふんわりした独自設定前提。

「ただいま……
「おかえりなさ――うわっ……だ、大丈夫ですかぁ……?」
 帰宅早々、小松田君に投げかけられた言葉は仕方ないものであった。ボサボサの髪によれよれの服。目元は疲れのあまり、隈ができているかもしれない。今の自分はきっと「“疲労困憊”が人間の形を取っている」と誰もが考えるレベルで、見事な体現をしているに違いなかった。
「仕事でちょっとね……急ぎのデータが行方不明になったとかでその捜索に駆り出されたり、突然クラッシュしたパソコンの復旧に追われたりで……。ごめん、こんな遅くなるつもりじゃあ……
 もう日が変わる直前だ。お陰でほとんどの店は閉まっており、コンビニで安売り直前だったお菓子しか確保できなかった。小松田君も明日は休みだから、久々に一緒にゆっくりできると思っていたのに……
「これ、少ししか準備できなかったけど……
 ラッピングもへったくれもない、ビニール袋に入れただけのお菓子を差し出す。チョコに飴、クッキーなどなど……そんな情けばかりの詰め合わせにも、彼は目を輝かせてくれた。
「わぁ! ありがとうございま――じゃなくて……。利吉さん、こーゆーのは形式が大事なんですよ。お約束、というものです」
 そう言って彼は、ワザとらしく咳払いした。そして満面の笑顔で、両手をこちらへと伸ばす。
「とりっくおあとりーと、です!」
 つたない発音の言葉は、表情と合わさって余計に子供のように思えて。そんなおかしさから、つい小さく笑いを漏らしてしまった。
 それが狙いだったのかもしれない。小松田君は特段怒りもせず、寧ろどこか満足げな表情を浮かべている。参った――と諸手を上げた私は、彼にお菓子入りの袋を渡した。
「ありがとうございまぁす!」
……それで、私には?」
「ちゃーんと準備していますよぉ。でも……利吉さんも、“お約束”は守ってくださいね?」
「はいはい」
 ささやかな飾りつけ。テーブルの上に準備された可愛らしい袋。カボチャの帽子を被っただけの簡単な仮装。自分など仮装すらしていないが……まぁこのボロボロの見た目から、お化けに見えなくもないだろう。
 それに、お化けは夜に出現するものだ。今のような真夜中に近い時間こそ相応しい存在である。……かつて忍者であった自分にとっても、だ。
 さて……相変わらず太陽の下が似合う君はこの深夜に、夜の住人だった自分をどうやって出迎えてくれるのかな? そんな小さな期待を抱きつつ、私も“お約束”の言葉を口にした。

――トリックオア、トリート?」