haru_haru0704
2025-10-31 12:36:34
1265文字
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悔恨

仇遠と哥舒臨(CPなし) 全年齢

捏造しかない

竹林にて、彼と対峙する。奇しくもそれは、彼がまだ一介の伍長に過ぎなかった「あの時」と同じであった。
しかし今の彼は、伍長ではない。将軍でもない。鳴式に染まりし大罪人だ。もはや彼の前方に残像はおらず、背後に守る民もいない。
──此度こそ、彼を殺す。

「久しいな。15年ぶりくらいか?その顔、よく覚えているぞ」
以前よりも落ち着きを深め、気怠さを含んだ声が仇遠の耳に届いた。その声には、どこか楽しげな様子も感じられる。
仇遠は強く踏み込み、鋭い突きを繰り出す。もはや問答は不要だ。
それは渾身の突きであったが、彼はいとも容易く大剣で受け止めた。流石、鳴式の共鳴者となっただけのことはある。
以前の彼は、随分と手加減した一撃をかろうじて受け止めるのが関の山であったというのに。
「──俺を見逃したことを、後悔しているか?」
刃を交えたまま、彼は仇遠に尋ねた。その目には黒い炎が灯っている。
「当然。お主を殺しておけば、あのように大量の犠牲者を出すこともなかったであろう」
「はっ、そうか」
彼は軽く笑い、無造作に大剣を振った。仇遠の刃が振り払われ、黒炎がぶわりと燃え盛る。それは仇遠の肌を、髪を、服を、じわりと焼き焦がしていった。仇遠は抗うが、鳴式の力に染まった炎はそう簡単に消えはしない。
ならば、一気呵成に事を成すのみ。
仇遠は竹筒の中の薬液を全て飲み干し、全力を乗せた斬撃を繰り出した。その一撃一撃は非常に重たいものだったが、彼には・・・届かない。
「どうだ?俺は強くなった!もうお前のような犬には負けん」
「っ・・・!」
攻勢は瞬時に逆転し、今度は彼の斬撃が仇遠を襲う。かろうじて防ぐが、重たい。かつ速い。
仇遠は徐々に競り負け、やがてその腹に鋭い蹴りを食らった。吹き飛ばされ、竹を薙ぎ倒しながら地を転がる。仇遠は数瞬の内に体勢を立て直したが、その時には既に彼の大剣が首筋に這わされていた。
「まだ、殺されてやるわけにはいかんのだ。今日のところは諦めろ」
「・・・諦めぬ、と言ったら?」
「諦めろと言っている。お前だけでは、俺には勝てない」
すっと大剣が下ろされる。どうやら彼には、仇遠を殺す気はないようだ。
仇遠はしばし逡巡した。今ここで逃せば、また大きな被害が出るやもしれぬ。だが、某の剣は此奴には、届かぬ──。

ぽつり、と。雨粒が地に落ちる。
それはすぐに、土砂降りの雨へと変化した。
「・・・・・・」
仇遠はぎりりと歯を食いしばり、小さく頷いた。ぱちりと音を立て、迅刀を鞘に納める。
敵わぬと分かっている相手に、それでもなお挑むのは得策ではない。五体満足でいられる内に撤退し、次の機会のために剣を研いでおくのだ。
「ふん。聞き分けのいい犬は好きだぞ。じゃあな」
彼は踵を返し、雨の中を去っていく。仇遠はその背に向かって、悔恨の滲む声色で告げた。
「・・・哥舒臨。お主は大業を成すと、そう信じておった」
「成すとも。これからな」
激しい雷鳴が響き渡り、竹林を白く照らす。哥舒臨の歩みを止める者は、誰もいなかった。