syanpon
2025-10-31 01:59:07
2171文字
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できあがりの二人

オトスバ
現パロ


 酔っ払いの介抱というものが意外と大変であることをスバルはこの友人との付き合いで嫌というほど知った。
 機嫌よく絡んでくるのはちょっとうざったいが酔いが回りきると途端に目がすわりだすのも怖いため泥酔オットー第一段階の方がマシだとは思う。
 冷たいのだろうか左の頬を完全に机に預けてヘラヘラ笑う男を横目に見てスバルはため息をついた。
 
「うぇへへへ......」
「こんなこと言うのもなんだけどさ。こう、両思いになった記念すべき日に酔い潰れるのってどうなん?お前は酔ってるけど俺はさめるぞ」
「んあ」
「完全に出来上がってる.......オットーの茹で蛸。ほら水
飲め」

 これ以上酒を飲まれては困る。スバルはオットーがここぞとばかりに出してきた高そうなワインを脇に避け、コップに注いだ水を酒で真っ赤になった頬に押し付けた。とろんとした両目が開いてスバルをぼんやりと見つめてくる。
 
「あれ、なつきしゃん.......?」
「おっと、ずっと横にいた俺の存在が飛ぶまで飲んでるな??? 明日覚悟しとけよ」
「ふへへ、なつきさんっていうんですかあ? なつきさん奇遇ですねぼくの恋人もなつきさんっていうんれすよ」

 増えている。
 オットーの中でスバルが増殖しているようで楽しい酔っ払いができあがっていた。こうなってしまうと適当なことを喋ってひとりでケラケラ笑う男になってしまう。
 
 あとしばらくしたら吐く。迷惑。

……恋人のナツキさんってどんなやつなの」

 缶チューハイ二缶しか飲んでいないがスバルも酔っていたようだ。この酔っ払いで遊んでやろうという感情が芽生え、ついそんな言葉が口から飛び出た。
 オットーはスバルにぱちぱちとまばたきを返す。ペタリと今度は反対の頬が机についた。

「僕のナツキしゃんはあ、めんどくさくて、めつきがわるくてすぐばかなことかんがえるおおばかでえ……
「殴っていい?」
「らめですよ! ぼくのこいびとをなぐっちゃ!」
「うお、顔近。酒くさ」

 出てくる悪口にスバルが拳を固めるとオットーがむずりとした顔でスバルに顔を近づける。

「きょう、りょうおもいになったばかりなのでらめです」
「らめなんだ」
「らめ! ん? ら! め!」
「ふっ、くくく……。可愛いから恋人割りでチャラにしてやる」

 呂律が全く回っていない。オットー本人も舌が回らない自覚があるのか何度も口をもごもごさせては発声する。その様子が面白くてスバルは笑って近づいていた距離をさらに寄せ、ちゅうと口付けた。

 途端、オットーが目の前で小さく飛び跳ねる。

「ひゃあ!」
「ひゃあって」
「ら、らめなんですよ!? うわき! らつきしゃんはぼくをうわきものにするんですか!」
「俺らつきしゃんになっちゃった。ナツキさんは俺がお前にちゅーしでも怒んないと思うけど。でも、両思い当日に酔い潰れるのはよしとしないとみた」

 両手で口を隠したままスバルを睨みつけるオットーはその言葉にへらりと笑う。思い出したかのようにグラスを探して彷徨う手に水入りのコップを持たせてやればそれをぐいと一気飲みした。

「みず!」
「水ですねえ」
「おさけは!」
「閉店ガラガラです」
「うう〜。りょうおもいになったこんないいひ、うかれたきもちのままにのみたいんですぼくは!」

……ふーん。ほれ飲めオットー」
「あ、ありがとうごじゃいます……。ってみずじゃないですか!」
「うるさい! 俺も酔いが回って顔すげー熱いからそれで我慢しろ! また好きすぎてちゅーするぞ!」


 ***

「と、いうこともありましたが」
「うぇへへへ......」
「うーん既視感」

 違うのはオットーの熱くて柔らかい頬がスバルの肩口にあり、後ろから抱き込まれていることだろうか。この恋人はひとりで楽しく酔っ払ってスバルを残して楽しく夢の世界にふよふよ旅立っているらしい。

「なつきしゃ」
「はい俺です」
「ぼくのナツキさんなんですよねえ〜かわいい……
「お前のナツキさんですよ。今回は間違えるなよ」
「ぼくはぼくのの番を間違えたりしませんよ」
 
……

 スバルは目の前の小さな箱に手を伸ばす。
 数刻前に受け取ってからなんだが自分には勿体無くて取り出せなくて。
 ちらちらと眺めるだけになっていた箱を開けば小振りの指輪。取り出し、薬指に嵌める。サイズは一緒に測りに行ったのだからもちろんピッタリだ。
 
 指輪のサイズをこっそり測ろうとしたオットーがつまずいてスバルを押し潰し、一緒にリングを選びに行ったのも懐かしい。
 
 それを薬指に嵌め、口付ける。

「これでお前は正真正銘俺のものだからな。オットー」

 蛍光灯の灯りに指輪をかざすとささやかにキラリと光る。その輝きに満足そうに笑っているとかざしていたスバルの左手を大きくて熱い手が伸びてきてぎゅっと握りしめてくる。

「お、おっとー?」
「ふふ、あんたも僕のものですよ。もういなくなるとか別れるとかだめ、ですからね」
「お前、酔って――

 オットーよりも赤くなり、腕の中から抜け出そうとするスバルをさらに抱き込んでオットーは笑った。
 
「こんないい日、酔ってしまったら勿体無くて!」