とはり
2025-10-31 00:01:07
2627文字
Public ハデ少
 

【ハデ少】Trick or ……?

付き合っているハデ少がハロウィンにかこつけて戯れる話
"付き合っている""ハロウィン"のハデ少
何もかもぜんぶ嘘すぎる

世界観ガン無視だったとしても、ハロウィン楽しむハデ少があってもよくない?って言ったらほぼ一晩で生やしてくれました 私が
やればできるんかい 

はぴはろ~🎃





「トリック・オア・トリート~」
 月の光が満ち、眠りにつこうとしていた教会に不思議な呪文が響く。
 同時に視界の外からぬうっと淡く光るオレンジ色の塊が姿を現して私は顔をしかめた。焦点を合わせるとそれはカボチャのようで、数ヶ所くりぬかれている。どうやら人の顔を模しているようだ。そこから淡く放たれる光はそれがランプであることを示していた。
……一体、何のまじないかな。少年?」
 カボチャ頭に問いかけると、それを両手で掲げている体ごとこてんと横に傾く。おどけるような仕草がどこか可愛らしいだなんて思ってしまう。
「あれっ、バレた?」
「バレるも何もここを訪ねる人なんて君くらいしかいないさ」
「そうなのか? 教会だし何人かは来てると思った。お菓子を切らした頃かなと思って来たのに残念だ」
 私が肩を竦めると、『半死神の少年』はカボチャ頭の陰からいたずら顔を覗かせた。
「さっきの呪文といい、お菓子がどうだとか一体何をしているんだ?」
「知らない? お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうぞ~ってやつ。仮装した子ども達が家々を回ってお菓子をねだるんだ。最近は大人達も混じってやってるみたいだけど。みんなでお菓子交換会って感じ」
「知らないな。そんなことをして何が目的なんだ?」
「さぁ? みんなお菓子が食べたいんじゃないか?」
「少年も?」
 私の問いかけに返事をするかのように同じタイミングできゅるり、と少年の腹の虫が声をあげた。
「そうだな。俺もお菓子食べたい。ハーデイ、お菓子ちょうだい。トリック・オア・トリート~」
 思い出したように再びカボチャ頭を自身の顔の前に持ってきてふるふると揺らす。そういえばそれは仮装のつもりなんだろうか。人間の儀式には理解できないものが多い。味気のない日々に少しでも彩りを添えようという涙ぐましい努力の結果なのかもしれない。
「お菓子を渡さなかったらどうなる?」
「言っただろ、悪戯するって。俺の悪戯はおそろしいよ~。大人しくお菓子を渡した方がハーデイのため」
「そうか。それは怖いな」
 さっきまで悪戯をしたくてたまらないという顔をしていたくせに、あっという間にお菓子へと気持ちが傾いたらしい。切り替えの早さは子どもらしいといえばそうなのかもしれない。微笑ましさについ笑みがこぼれる。
「おいで、悪戯しようという気も起きないほどもてなしてあげよう」
「本当? 寒かったから温かい飲み物も欲しいな」
 注文に注文を重ねながら少年がぱたぱた軽やかな足音を立てながらと後をついてくる。とんでもない怪物を引き入れてしまったのかもしれない。最初に出会った頃にあったわずかな警戒心ももはや懐かしい。
「夜にこんなところに来るからだ。道に迷わなかっただけ運がいい」
「もう何度も来てるんだ。今さら迷ったりなんかしないよ」
 いくら慣れた道とはいえ、雪の降りしきる街灯もないモノクロの帰り道を彼はどうやって帰るつもりなんだろうか。
 一抹の不安がよぎるが、提供されるお菓子の内容が気になって仕方ないらしい彼の質問責めに応えているうちにその胸騒ぎもいつの間にかどこかへ溶けてしまった。



「ごちそうさま。美味しかった」
 少年が教会に通うようになってからストックしていた嗜好品がこんなところで役に立つとは思わなかった。
 温め直したパンプキンスープにスコーンやブラウニーなどの焼き菓子、更には淹れたての紅茶を綺麗に平らげた少年は満足気に息を吐いて椅子に背中を預けた。満腹感がもたらす安らぎに眠気を催したのか目蓋が重そうに上下している。すっかりと気を抜いている様子の少年へと、今度はこちらから仕掛ける番だった。
「それじゃあ、私も言わせてもらおう。トリック・オア・トリート」
「え?」
 甘美な余韻がもたらす微睡みに緩んでいた少年の表情がぴたりと固まる。
「お菓子をくれなきゃ悪戯だよ、少年」
「ああ……ずるいな、ハーデイは」
 眉を下げて笑いながら両手を挙げて降参のポーズをとった。困った風な顔をする割にどこか楽しげだ。腰を上げて少年の後ろに立つ私を追う瞳は爛々と輝いている。
「どんな悪戯をされちゃうんだろう?」
「それはこちらの台詞だな」
「あっ、ちょっと……!」
 私に服をまさぐられ、少年は顔を赤らめて身じろいだ。私の腕を掴んで抵抗する素振りを見せる少年の吐息は期待に濡れている。
 そんな少年に気づかないフリをしつつ探るように動かしていた指先が目当てのものにたどり着くと私は腕を引き抜いた。見込みが外れてあっけなく遠ざかっていく私の指先を少年の名残惜しそうな視線が追いかける。
「甘い香りを纏って、一体どんな悪戯をされに来たのかな」
 少年の懐から取り出した、ラッピングされたクッキーやキャンディーを眼前で揺らして耳元で囁くと、少年は目を見開いて息をのんだ。
「全部バレちゃった。ハーデイってば何でもお見通しなんだ?」
 策が空振りに終わり手札を使い果たしたらしい少年は、お手上げだと言わんばかりに溜め息をついて私の胸へと頭を預けた。
「帰り道も見えない夜にこんな場所にやってきて、本当は帰るつもりなんてなかったんだろう? 何をしに来たのかな?」
……分かってるくせに。いじわる」
「お菓子をくれなきゃ悪戯。君が先に言ったことだよ」
 唇を尖らせて上目遣いに唆すその体に今すぐ噛みつきたくなる衝動を抑え込んで、その唇から顎、そして喉元へと指先を撫で下ろしていく。
「少年が言ってくれないと私にはここからどうすればいいか分からないな」
「っ、」
 下ろした指先で襟元だけを緩め、鎖骨のくぼみをくすぐると、少年はもどかしそうに体を揺らした。
 舌の上で言葉を転がしているらしい少年の肌に唇を落として、その躊躇いを少しずつ剥がしていく。柔く唇を食むとカカオや紅茶の甘く華やかな残り香が口の中に流れ込んだ。
 優しく触れるだけの、戯れのような口づけだけで少年が満足するはずはないと分かっている。膨らんでいく甘美な誘惑を大切に育てながら少年の言葉を待ち続ける。
 何度もキスを送って爪先で肌を弄ぶ度、少年の眼差しが熱をもち、思考がどんどんととろけていくのが手に取るように分かる。
 とうとう観念したらしい唇が私の名前を呼ぶ。
 さて、少年は一体どんな『悪戯』を望むのだろう。
 甘く焦れったい空気をふたり、夜が明けるまで楽しもう。