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白煙
2025-10-30 23:10:38
2317文字
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10/31 キャンサー家
イギリス・ロンドン
時間帯はアフタヌーンティーには早くランチには遅い。古き良きを体現した外装の大きめの家の一室からこの話は始まる。
「
…
ヨシ、これでいいデショ」
「
……
」
「ココ、仕事だと割り切った方が楽になるよ。あのディビッドからの依頼ならなおさら、ネ」
「
……
わかっています。ですが、」
「たっだいま〜
……
って、なんなんだよその格好?!?!!?!」
世間が浮かれ気分でハロウィン色に染まる10月最後の日。街の浮かれる様子と真逆の雰囲気をまとったホワイトロリィタの女と、支度の手伝いをしてる男。そして、タイミング悪く帰ってきた上記2人の弟がこの場にいた。
「タイミング悪かったネ、ヒューゴ。おかえり」
「姉貴が好き好んでそんな格好するわけねぇし、なんだ
…
そのひらっひらな服。母さんでも流石に着せ、る可能性はあるか
…
?」
「残念。この服の指定はディビッド」
「ゲェッ!?マジであの人、何考えてんだよ
…
?」
「それがわかったら俺たちも苦労しないんだけどネ」
「動きづらい格好はともかく、なんでこんな服を
……
」
「オマケに、ご丁寧にウィッグまで用意して俺にも仕事を振って
…
本当にわからないよネ」
「うっっっわ
…
もう面倒ごとの予感しかしねぇ
…
!!」
男兄弟二人の会話は説明と確認が入り混じり、やいやいと話が進んでいく。そして、取り残される程度に項垂れているホワイトロリィタは、ドレッサーの前で溜息をつく。
…
屈辱だとは思わないが、なぜ似合いもしない自分に。ついでにこれで仕事をしろなどと。
うんうんと唸るも脳内に浮かぶ依頼主はにこやかな笑みを浮かべて何も言わない。何かに巻き込まれた時点で、彼の仕掛けにはまったことに気づくのが常なのだ。そのせいか自分を含めて、兄弟たちはこの存在に白い目を向けがちなのである。
……
一番の被害者である一番上の兄は、それもあってか心が海原のように広いのだからお察しなのだろう。
浮かんだ笑みがこの依頼を受けた時の状況を思い出させる。嫌々ながら依頼内容を思い出すように彼女は1度目を閉じた。
ーー遡るとこ、約3時間前。
「今日は俺とセシル、ココが一緒だな」
「
……
それは聞いてるけどさァ。誰からの依頼って兄チャン言ってないよネ?」
「確かに聞いてませんね。匿名の依頼ですか?」
「あー
…
それな、」
黒いスーツにネクタイ、仕事で身にまとう衣服をまとった3人が話をしていた。仕事人にしては距離が近い話し方をしているのは、ここにいるメンバーが兄弟妹であるからであった。
兄チャンと呼ばれた体格のいい男は口を濁す。どこか後ろめたさを感じるような雰囲気が滲む中、頭が痛いと言わんばかりの動きをした。
「
……
すまん、依頼主はデイブだ」
「ウッッッワ
…
帰っていい
…
?」
「駄目だな。セシルも指定で連れて来いってことだ」
「最悪」
「
……
その言い方的に私も指定ですか?」
「残念ながらな。
…
というか、お前を連れてこいで俺が仕事になった」
「
……
」
「ココ、諦めろ。あれでもうちの太客なんだ」
「
…
わかりました」
「ほら、行くぞ。アイツ待たせると面倒後とが増えるからな」
一番長い付き合いの兄が声をかけ、その一室に入る。渋々と言った表情を消し兄妹たちも続く。
シンプルながら上品に仕上げられたワイン色のベルベットが印象的な一室。その雰囲気に馴染む高そうな椅子の上にその姿があった。
「やぁ、待ってたよ。セシルもココも、久しくあってなかったけど元気そうで何よりだ」
柔らかなウェーブのかかる銀髪から甘い顔立ちを覗かせて、部屋で待機していた男ーーデイビッド・クラークは幼馴染みの弟妹に声をかけた。
「お久しぶりですネ、Mr.クラーク」
「仕事だからってそんな堅苦しく対応するのはやめておくれ。セシルだってずっとこのま話続けるのは肩が凝るだろ?」
「
…
じゃあ、普通に話すケド。で、今日はなんの用事?俺たちと遊ぶ、なんて事はないと思うけどサ、ココがいるのに俺も呼ぶなんて何事?」
「おや、私はセシルのことは評価してるつもりだけどね。護衛だけじゃ足りない部分を補えるスタイル、嫌いじゃない」
「
……
あのねェ~、」
これだからコイツは
…
と言いたくなるような言葉がセシルから漏れる。なかなかに厄介な性質を持っていることは兄弟妹(きょうだいたち)は知っていてもこれだ。この人物の対応は性格が悪い人と別ベクトルで苦労するのだ。
「
…
Mr.クラーク。私からもいいですか?」
「なんだいココ?最近面白い事件にでも巻き込まれたと言う報告なら、是非とも後で聞きたいな」
「
……
」
「おや、違ったかな?
…
あぁ、すまない。そうか、用件だったね。ウィルに黙ってて貰ったんだった」
「デ、本当になんで呼んだ?」
「
……
俺からは言わないからな。デイブ、自分で言えよ」
「そんなに身構えないで。何、ちょっとした"予感"があったから手伝って貰うだけさ」
デイビッド・クラーク。資産家の一人息子であり、現在はミステリー作家として名前を馳せている。
彼の言う"予感"、彼の生体を知る人物なら身構えてしまうワードだ。現に一番身構えたのは、一番このワードに被害を受けているココである。
「じゃあ、今回の依頼を伝えるね」
「ハロウィンで盛り上がる街のとあるところを調査してきて欲しいんだ」
「実働はココ、セシルはココの仮装の仕上げをよろしくね」
「「
…………
???」」
この瞬間、宇宙を背負うものが2人、それを見て朗らかに笑うのが元凶が1人。そして、幼馴染み兼兄がその風景に頭がいたくなったのだった。
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