三毛田
2025-10-30 22:37:17
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61 061. 与えるものが愛ならば

61日目
応えてくれるのだろうか

 彼が与えてくれるものが愛ならば、それに対して、どう応えるのが正しいのだろうか。
 すぐに答えが見つからないことくらい、織り込み済みだ。わかっている。
「はあ……
「どうしたんじゃ?」
「丹恒から向けられているのがさ、好意だっていうのはわかるんだ。でも、それに対して俺が何かを返せるのかって」
「無理に返さなくても、よいと思うぞ?」
「でもさぁ俺がちょっと気になるんだよ」
「それなら、資料室の整理の手伝いをするのはどうじゃ? 丹恒の邪魔にならないのなら、手伝うのもいいじゃろう」
「なるほど。早速手伝いが必要か聞いてくる!」
「これ、走るな!」
 パムの叱る声を背に受けながら、資料室へ向かう。
「開いている」
「入ります!」
 いつでも出入りは自由だと言われたけれど、ここは礼儀としてノックをしてから入る。
「穹か。どうしたんだ? お前がそんな顔でここに入ってくるのは珍しい」
 手を止め、こちらを見る表情は柔らかく優しい。
 慈愛に満ちているって言うのかな? ほのかに愛情を感じる。
 それに気づいて、嬉しくなると同時に、どうしてそんな表情を俺に向けるのだろうか。という疑問も湧き上がり。
「何か手伝いできることって、あるかなぁって」
「お前にできることか……
「ない、か」
「いや。論文のために、資料として取り寄せてデータがある。それを、そっちの端末を使って表題順に並べてもらえると助かる」
「そんなんでいいの?」
 驚いて目を丸くしていると、
「ああ。数システム時間前に見つけてしまった、埋もれていたアーカイブの整理に着手してしまったから、そちらにまで手が回らないんだ」
「じゃあ、お手伝いさせてもらいます」
「頼んだ」
 俺が頭を下げると、頷いて。
「パムに差し入れ持って来てもらっても、構わないよな?」
「休憩を入れないと、作業効率が落ちるからな。食事の時間になったら、好きにラウンジに行くといい」
「その時はお前も一緒だからな」
 俺の言葉に、一瞬手が止まり。
「ああ、そうだな。そうしよう」
 また彼は微笑む。
 キュッと心臓を掴まれ。
 もしかしたら、もしかして。
 俺って、丹恒が好き?
 彼が俺を好きだっていうのは、伝わってくる。
 行動で、言葉で。それから……視線で。
 それにつられているって可能性はある。あるけれど、普段笑わないからこそ、それだけでドキッとした可能性も否定できなくて。
 難しいな、感情。
 二人きりの部屋。どちらも喋らないと電子音が響いているだけ。
 でも、それも案外心地よい。