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望月 鏡翠
2025-10-30 22:26:09
929文字
Public
日課
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#1889 灯りの酒場
#毎日最低800文字のSSを書く
開店準備が整うと、看板の代わりのランタンに火を灯す。霧深き道、暗がりの中でもそれは旅人の目に留まり、彼らをここまで導いてくれるのだ。
煤で少し内側の曇ったガラスの内側に、マッチを火を差し込む。芯が短くなっているかもしれない。なかなか火がつかない。
モタモタしている間に、指先が炙られた。
「あち」
冷たい金属を挟んで指先を冷やす。きっとすぐにそれもタンプの火で温まってしまうだろうから、氷をもらうために店内に戻った。
「ねー、今度来た旅人にあれ貰いましょうよ。火が付くやつ」
マスターは全然興味がなさそうに、手元から顔を上げない。
「アレってどれだ。松明?」
確かに壁に設置した瞬間に光出すあれは便利だけど、秒が限界がある。
「もっと小さい」
「リッタ」
「違いますって。私魔法とか使えないし」
「オート火打、ヒノカミキバ、ライター」
「それライター」
「うーん、マッチで十分だからな」
「私はマッチだと火傷しちゃうんですけど」
氷を指で摘んで冷やす。今は平気だけど、きっとまた熱いものを持ったときに、ジリジリと痛み出すんだろう。
「こっちは困ってないから、どうしても欲しいんなら自分で購入するんだな」
「けちぃ」
せっかく旅人が来るんだから、新しいものをもっと取り入れたらいいのに。便利なものがたくさんやってくるし、ぶつぶつ交換できた方が旅人さんだって助かるに決まっている。
実際、ここの厨房には便利なものがたくさんある。こっそりと家に持って帰ったら大騒ぎになるんだろうな。
そんなことを考えていると、最初のお客さんがやってきた。
ドアベルがカランとなる。私は急いでカウンターの内側に逃げた。お客様との距離にはいつも十分に気をつけないと、つまみ食いされてしまうかもしれない。
幸い、今日初めてのお客さんは見たことがある人だった。
「あ、侘助さん、久しぶり〜」
安心してカウンターから顔を出す。大人しくて優しいお客さんは大好きだ。注文を通しやすい一番いい席に通した。
その肩に、知らないお客様が乗っていることに気づいたのは、グラスに入ったお水を出すときだった。
「あら、可愛い」
ピカピカのトカゲが角の間に挟まっている。
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