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望月 鏡翠
2025-10-30 21:46:39
918文字
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日課
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#1888 新たな旅人
#毎日最低800文字のSSを書く
逃した。逃げられた。一度までならず二度までも、仕損じた。
萬木には大人の龍を倒すほどの力がある。なぜあのような小物を幾度も撮り逃すのだ。角の生えた人だって、力は読めなくとも、竜に比べれば取るに足らぬ相手では
視界が狭まってゆく。吐息が頭蓋の内側で響いている。
思考を置き去りにして、体は正しく動作した。反射でも動くように教え込んだ指先が、投げる背中に矢を放つ。
地面に転がったとき、しめたと思った。
しかし、半人は立ち上がり走り続けた。
深い森の木々が邪魔だった。
雛を抱えたまま、蹄の音は森の奥へと消えていった。
だから、人形の妖怪は嫌なのだ。外見に引っ張られて見誤る。
矢を抜いただけで走り出すという決定的な動きを見せた時点で、効果はないと気づくべきだった。
いや、あのときすでに走り去ろうとする背中に届くものは、矢以外になかった。
もっと前、あれが赤い血を流さなかった時点で、察するべきだった。
呻き声ひとつ上げずに、飄々と会話していたではないか。
縛るか、足を断つか、どちらかをしておけば、結果は違っていたはずだ。
唯一の手掛かりだった。
あの雛を殺し、この気持ちの悪い術を払い、街に帰るのだ。
足跡は、まだ残っている。追いかけることができる。
不治の呪いなどではない。妖怪が萬木を惑わせるために嘘をついたのだ。
それに、と萬木は悪い考えを必死に頭から追い出した。たとえ龍がかけた呪いだったとして、その解き方を知っているのは同族以外にはありえないではないか。
龍は目撃例のない稀有な妖怪だ。
寿命を費やしたとて、新たな個体など見つけられるはずがない。
あの雛を見つける。あの雛と、あの男が必要だ。
言葉を交わしている風だった。雛と話すことができるのだ。殺すのが駄目なら、呪いを解く方法を見つけさせる。
大きく息を吐いた。
大丈夫。大丈夫だ。まだ終わってない。狩りの方法が変わっただけだと考えればいい。
息を整え、立ち上がる。
足跡を追いかける。今まで通りに、狩人の仕事をこなすだけだ。
その行手には霧が立ち込め、いつしか足元には人が踏みしめてできた道ができていた。
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