Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
のたり
2025-10-30 12:35:00
1038文字
Public
hrsz
Clear cache
同じ傘の中
イベントお疲れ様でした
夢を見た。
私は走っていて、周りを流れるのは見慣れた風景で、身体から酸素がなくなっていく感じや流れていく汗が気持ちいいな、なんて思っていた。
走っているコースの先に雫を見つけた。スローダウンしながら雫のほうへ向かっていく。なぜか雫は傘を差していて、雨も降っていないし日差しが強いわけでもないのに、どうしたんだろうと思っていた。
雫は最初から私を待っていてくれていたのか、私の姿を見つけると私の方へと歩き出した。走っている私と歩いている雫の距離が近づいて、同時に足を止めて向き合う。そして雫は私に傘を差し出した。
「雫、雨なんて
……
」
降ってないよ、そう言い終わる前に、差し出された傘に覆われていない背中側に冷たさを感じた。雫が微笑んで傘を私の方へ傾ける。
「
……
雫が濡れちゃうよ」
雫の持つ傘の柄の少し上の方を持って雫の方へ傾ける。まっすぐになった傘の中で、もう一歩近づいた。
いつから私は冷たい雨の中にいたんだろう。いつのまに私の身体は冷え切っていたんだろう。差し出された傘の中でようやく気付くなんて。
「遥ちゃん」
雫が眉を下げて、どこか自信なさげに微笑む。
「
……
大丈夫?」
「
……
うん」
雫はいつも、優しくて強くて温かくて、雫に差し出された手を取るたび、私は自分がどれだけ凍えていたかを知るんだ。
「
……
もう、大丈夫だよ」
ふたりで入るには少し傘は小さくて、雨は防ぎきれなくて、はみ出た背中にかすかな冷たさを感じる。それは雫も同じで、でも、雫はそれでいいと思ってくれる人だから。
目を覚ましたとき、視界に広がったのは二段ベッドの上の床板だった。
「
……
」
途切れることのないノイズ音がかすかに聞こえる。一呼吸おいてから雨の音だと気付いた。窓の方に顔を向けたら本を読んでいる雫がいた。雫が、私の視線に気付いたみたいで顔をあげる。ふっと雫の表情が緩んだ。
「遥ちゃん」
立ち上がって雫が私の方へやってきた。
「おはよう。よく眠れた?」
「うん。雫の夢を見ていたよ」
「私の?」
「うん。雫のこと、好きだなぁって思った」
「え?」
雫がきょとんとして、それから少し顔を赤くした。その顔が可愛くて、つい頬が緩む。
「私ね、雫がいてくれたら、大丈夫なんだ」
「本当?」
「うん」
雫が嬉しそうにふふっと微笑む。
「じゃあ私達、もう大丈夫ね」
「うん。もう大丈夫だね」
もう大丈夫。だってどんなに冷たい雨の中でも、凍てつく雪の中だって、ふたり、同じ傘の中にいれるから。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内