ふぁお
2025-10-29 22:31:17
2913文字
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【サンプル】愛しているの伝え方

2026/01/25 WAR OF THE PLANETにて配布予定
MTMTEマグメガ冒頭サンプルとなります。

小さな切っ掛け

 ノックと共に船長室に入ってきたマグナスは、室内を見渡してからメガトロンへと声を掛ける。
「ロディマスはどうした?」
「さあ。三日前から見かけていないが」
…………
 頭を抱えるマグナスに、どうにも慣れているらしいことが伺えてメガトロンもまたため息を呑み込んだ。拗ねるのは勝手だが、船長の責任も果たさないとはとんだ船に乗ってしまったものだ。
「何かあったのか?」
「いや。船内の点検を終えたので、その報告を」
「ああ、丁度いい。船内の構造も確認しておきたかった。私が見ておこう」
……そうだな。これが報告書だ」
「ありがとう」
 マグナスから受け取ったデータパッドを起動すれば、そこにはロストライトの防衛設備が細かく記載されていた。警報装置一つもれなく記載されていながら整然とまとめられている報告書は読みやすく、思わず笑みが零れてしまう。
……ふむ。スワーブスのスプリンクラーはいつから故障を?」
「あ、ああ。一か月前だ。船員がボヤ騒ぎを起こして、その弾みに。修理しようにもパーツが無い」
 その場で読み始めたメガトロンに、マグナスはぱちりとアイセンサーを瞬かせる。問われた内容に我に返り、原因を伝えればメガトロンは苦笑しながら報告書の細部に目を落とす。
「ポンプの故障か。次の停泊地で取り寄せよう。少し型が古いな……いっそ買い替えてもいいかもしれん。この非常ハッチの異常は?」
「作動時に僅かながら異音がする。建付けの問題だろう。扉の角度が数センチずれていた」
「早急に対処しよう。今は問題なくとも、いつ必要になるかわからん。その際に欠陥が起きたら事だ。……他にも色々と問題がありそうだな。過去の報告書はどこに?」
「サーバーにアップしてある。後でパスを送ろう」
「助かる。どうやら色々と把握しなければならない事が多そうだ」
「だろうな」
 苦笑を零すメガトロンにマグナスも肩を竦めてしまう。

  ■

「ウルトラマグナス。今大丈夫か?」
「ああ。何か用か?」
 数日後、船内のパトロール中に呼び止められて振り返ると、メガトロンが居た。周囲の船員達の間に走る緊張感も余所にメガトロンは気にした様子もなく手にしたデータパッドを差し出してきた。
「君の報告書から船内の修繕箇所をリストアップした。いくつかは買い替える予定だが、問題ないか一度目を通しておいてほしい」
「報告書……設備点検の? 全て読んだのか?」
「ああ。体裁が整えられていたので見やすくて助かった。ありがとう。問題のある個所は実際に確認もしたが、君にも確認してもらった方が確実だろうと思ってな」
 確認すると言っただろう、と。当然とばかりに答えるメガトロンに言葉を失くす。ロストライトが出航してから今まで、一体どれだけ時間が経っていると思っているのだろう。一年分にはなるだろう記録を、彼は全て確認したのだと事も無げに言ってのけた。
 呆然と受け取ったデータパッドに目を落とせば、確かにマグナスが記していた内容と修理に必要な予算が並べられていた。報告した頃から時間が経ち、劣化が進んだ箇所も記載されている。本当に、全ての報告書に目を通した上で一つずつ確認していったのだろう。五万語に渡る報告書を、余さず全て読み込んだのだ。
…………ありがとう。すぐに確認しよう」
 緩んでしまう頬が抑えきれない。初めて自らの仕事を認められた気さえする。
 言わずもがな、ロディマスはマグナスの報告書になど碌に目を通さない。オプティマスだって細部にまでは目を通さないだろう。それでもマグナスが細部まで余さず記載を忘れなかったのは、生来の性格故でもあり、秩序を守る法の番人としての矜持故。読まれることが無いと知りつつ書き続ける虚しさを感じたことなど一度や二度ではない。
 修繕の為に行っただけだと言われればそれまで。それでも、たかが報告書を読んでくれただけでここまで嬉しいものなのか。
「頼んだぞ」
 たった一言から伝わってくる信頼に、踵を返して船長室へと戻るメガトロンの背をただじっと見つめていた。

  ■

「メガトロン、いるか?」
「ああ、どうした?」
 あれ以来、ウルトラマグナスが頼るのはもっぱらメガトロンの方で。ロディマスとしては仕事が減って楽なはずなのに、どうにも面白くない。
 今もそう。二人してデカい図体で一つのデータパッドを覗き見て、小声でやり取りを重ね、ふとした瞬間視線を合わせて微笑み合う。
それで、ここの予算を増やしたくて」
「そうだな、ならこちらの予算を削って、先月の余剰分も上乗せしておこう。それでも足りなければ言ってくれ。多少であれば私の財布からも出せるだろうし」
「いいのか? それより、君の財産はプロールが押収しているだろう」
 一体どこから出すつもりだと訝しむマグナスに、メガトロンは得意気に笑ってみせる。まるで悪戯を成功させた子供のように。
「『メガトロン』の名義はな。別名義で持っている口座はバレていないのがいくつか……あー、聞かなかったことにしておいてくれ」
「全く……今回だけだぞ」
 途中から誰と話していたか気付いたのか、メガトロンは気まずそうに視線を泳がせる。それを見て法の番人であるはずのマグナスが、仕方ないと苦笑してメガトロンのあのメガトロンの!悪行を聞かなかったことにすると言うのだ。明日は槍でも降るのではないかという天変地異に、彼ら二人だけが気付いていない。
……やってらんねー」
「こら、ロディマス、サボるな。手伝ってるだろう?」
「今回ばかりは全て終わらせるまで逃がさないからな」
 ぽつりと零してしまったロディマスのぼやきはしっかりと届いていたようで、二人揃ってロディマスに釘を刺して来る。仲が良くて結構だが、こんな所で見せつけないでくれ。
「かーちゃんが二人に増えた気分」
「何を言ってるんだお前は」
 呆れかえったメガトロンがロディマスの頭にデータパッドを乗せてくる。渋々それを受け取れば、来月のロストライト予算案。数字の羅列ばかりのそれをロディマスがまともに見るはずもなく、適当にサインを書いて放り投げた。
 そもそもこういった地味な事務作業は基本的にマグナスとメガトロンの二人に任せているのだ。船長であるロディマスの仕事はもっと派手なものであるべきだというのがロディマスの主張であり、二人が頭を抱える要因でもある。
「少しは仕事をしようという姿勢は見せてくれ」
「見せようとはしてるよ。どっかの誰かさんが目の前でいちゃつかないでくれたらな」
「さっきから何を言っているんだ?」
 本気で理解できないと言いたげなメガトロンに、その後ろで同じように首を傾げるウルトラマグナス。
……やってらんねー」
 本日二度目のぼやきに、マグナスとメガトロンのため息が重なった。


──サンプルここまで──

他、べったーにアップしていたマグメガ小話や書下ろし小話を詰め合わせたマグメガ本となる予定です。
二人が距離を詰めていくところからLL最終話までのほのぼの小話詰め合わせ。