匣舟
2025-10-29 22:13:40
1961文字
Public RKRN
 

兎にも角にもふたりきり

ショートショートの次乱です。初次乱を書かせて頂きました!
攫ってまでもふたりきりになりたかった次となにもしらない乱の話です。成長ifです。(次▶︎六、乱▶︎四設定)


 六年生の方向音痴で有名であるひとりの先輩に放課後、医務室へ向かうために歩いていたら、いきなり手を引かれてから早くも数十分は経ったんじゃなかろうかと乱太郎は諦めながら思った。
 連れ去られた当初、最初は抵抗したのだ。どこに行くんですか!?とか、わたし委員会があるんですけど!と大声で言っても目の前で背を向けている彼は自分の声に耳を貸さず、ふんふ〜ん♪と鼻歌を口ずさみながらどんどんと裏山の中をかき分けていく。なぜそんなに機嫌が良いのか、ただ攫われた側の乱太郎はさっぱり分からない。
っふ、ぅ。」
 ずっと走りっぱなしなので少しづつ乱太郎の体に疲労が溜まってきているのに対して、乱太郎の前を走る彼は流石、この六年間で体育委員会を務め、いけどんマラソンや忍務で鍛えられたのか乱太郎より体力はあるようで少しずつ息が上がっている乱太郎に対して、三之助はちっとも息が上がってないみたいで余裕そうな横顔が見えた。
(涼しい顔して本当に……。)
 むかつく。と心の中で悪態をつきながら、攫った側のくせに少しぐらいどこに行くのかとか会話ぐらいしてくれたっていいのに。とまた目の前を走る三之助に対して心の中で愚痴る。
 そんな愚痴でうるさい乱太郎の脳内とは裏腹に、ふたりの道中は静かで二人の走る音と草をかき分けていく音しか聞こえない。
 本当にどこに行くんだろうか、というか私無事に忍術学園に帰れるんだろうか。というか数馬先輩絶対心配してるよなあ。と一抹の不安を持ちながら乱は手を引かれるまま彼の背中を見続けた。
「と〜ちゃくぅ〜!」
 何も会話のないままただ三之助の背中を追い続けて着いたのは海がよく見える砂浜だった。ほらほら、お前も座れって。と普通に自分の隣に手を砂浜に叩きつける三之助に、乱太郎はふつふつと怒りが湧いてくる。
まず、攫ってごめんなさいは……!?」
「え〜、ちゃんと最初言ったよ。行くぞ!って。」
「そんなので伝わるか〜ッ!」
 行くぞ!で伝わるものならこんなにも怒ってないんですよ。とイライラ気味の乱太郎に、そんなにカッカすんなよお〜。とケラケラ笑いながら座っている三之助に乱太郎はまた怒りをぶつけようと口を開いたが、彼の口から出たのはうわああ!という悲鳴だった。
 悲鳴をあげた乱太郎は今、自分に起こった状況がなにかよく分からなかったが、砂に体を打ち付けたことだけ理解し、いたたと言いながら目を開けるといつの間にか三之助の顔が乱太郎の間近へと迫っていた。
「なぁ、せっかくふたりっきりになれたのに、怒んのばっかりやめてくれない?」
 突然の三之助の行動と発言に一瞬フリーズしていた乱太郎だがすぐに何が起きたかを察知しもう、三之助せんぱいっ!と顔を赤く染めながら彼の名前を呼ぼうとした時、三之助は乱太郎の唇に自分の人差し指を軽く当ててから優しく口づけを落とした。
「乱太郎、すき、だぁいすき。」
 そう言ってから三之助は優しく乱太郎の体を抱きしめる。いまだけは、俺だけにお前を独り占めさせて。と言ってまた乱太郎を抱きしめた三之助。
 彼の胸元から感じられる鼓動がドクンドクンと高鳴っているのが感じられ、その鼓動に胸の奥から心地よさを感じながら乱太郎は彼の胸元へと顔を埋める。すると三之助は更にぎゅうと乱太郎を抱きしめながら頬を擦り寄せた。
(随分と甘えてるな。)
 なんて心の中で思いながらそういえば最近、ふたりとも忙しくてこうしてふたりっきりになる時間がなかったな。と乱太郎は今更ながらに思った。
 それでも何も言わずに、聞く耳を持たずに攫われるのは頂けないけれど、結局自分もこうして三之助とふたりっきりになれて嬉しいのだから共犯者と言ったところなんだろうか。
せんぱい。」
 胸元に擦り寄せていた顔を上げて、彼の名前を呼ぶと三之助がん?なに?と言ってこちらを見た。そのまま乱太郎は三之助と目線を合わせる。
「ね、せんぱい。せっかくふたりっきりになれたんですし。」
 三之助せんぱいの顔、ちゃんと見せてください。と三之助の頬を手で包んでそのまま、唇へとキスを落とした。珍しく乱太郎からのキスに一瞬呆然とするものの、三之助はははっ、と笑った。
そんな技どこで覚えてくんの、本当に。」
 本当に俺の恋人ったら末恐ろしいな。と言いながら三之助は、自分の目の前でキスを待っている乱太郎の唇にかぶりつくようなキスをしたのだった。
 結局忍術学園に帰って事の顛末を聞いた乱太郎が所属する保健委員会委員長の三反田数馬と、三之助が所属する体育委員会の委員であり、乱太郎と同じは組所属である皆本金吾からこっぴどく叱られたのは三之助だけであり、乱太郎は二人から謝罪と心配をされたそうだ。