#ヴィンランド・サガ #漫画 #感想

2025/10/10

——最終29巻——

原住民と良好な関係を結べると思った矢先に生まれる双方の疑心暗鬼。人が集まれば争いが起きる。「欲」が絡めば簡単に野獣と化す。不殺を誓ったエイナルがアルネイズの村を死守する為に戦い相手を殺し葛藤し、ようやくトルフィンと同じ立ち位置になり理解しそして

争わないという理想の重さと、それでも人を信じたいという願いを胸に抱く。一番の不殺を貫いたのは皮肉にも戦争大好きトルケル将軍の『娘』コーデリアだった。登場時になんだこのギャグ要員のデカかわいい乙女と思っていたのに、産気づいたグズリーズを守る為、襲撃者を前に身を盾にして槍を受ける。不動の彼女を前に怯み撤退する襲撃者。コーデリアこそまさに「自分には敵はいない」というトルフィンの理念を、誰よりも純粋に貫いた人物だった。

最後に、この戦争の中で真の絆を結んだのは結婚したギョロとニスカだったと思う。
ヴィンランド・サガは「ココジャナイドコカ」へ続く物語。誰かの夢が潰えても、別の誰かの旅が始まる。これからの物語を切り開くのは次の世代 カルリと、トルフィンとグズリーズの子なのだろう。
彼らが見る海の向こうにこそ本当の“ヴィンランド”があるのかもしれない。好都合な楽園など存在しない。挑戦し続ける限り希望が生まれる、その終わり方がとてもこの作品らしいと思った。

20年間続いた北欧放浪譚。
単行本派だったので新刊が出るたびに心待ちにしていた。血と涙と海の匂い、そして広大な麦畑の土の匂いが詰まった『生と死』を描いた物語だった。

壮大な叙事詩に敬意を。ありがとう、そしておつかれさまでした。