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まきわ
2025-10-28 20:53:03
4592文字
Public
クロリン
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木漏れ日のレスポンス
学院時代to創後のクロリン
サボってる先輩を探す後輩君です
どう考えても学院時代の距離感おかしい書き方なのに違和感ないなクロリンは…
「はーいHRするわよー
…
って、あ゛」
教室に入ってきたサラが眉を寄せて剣呑な声をあげたので、リィンはその視線が向く先に目をやった。
「
…
あ。いつの間に
…
」
窓際の一番後ろの席を見てサラの声の理由に気づく。
ほんの少し前までそこで突っ伏していたはずのクロウがいない。
いつ出て行ったものか、まったく気づかなかった。
「ほんっとあいつはもー。
…
リィン、探して一言注意しといてやって」
「
…
はい」
クロウとミリアムがⅦ組にあっという間に馴染んだ後、なぜかリィンはクロウ担当のような扱いになっていた。
どうしてそうなったものかわからなかったが嫌な気はしない。
クロウといると心地よくて、肩の力が抜ける気がした。
だから傍にいる理由ができるなら願ったり叶ったりだという気がしたからだ。
そんな風に思う、気持ちの名前についてはリィンは気にしたことがなかった。
クロウも仲間になったから、ただそれだけで充分だと思っていたから。
「さて
…
と」
本校舎を出たリィンは軽く辺りを見回した。
サボったのだから恐らく人目につかないところにいるだろう。
手始めにグラウンドの倉庫の陰を覗いてみたが誰もいない。
ここは人目につきにくい分密会に使われることがよくあるから、クロウはかえって使わないだろう。
(
…
あとは旧校舎
…
とか?)
顎に手をあてて考え込む。
あそこもあまり人が来ない場所ではあるし、色々と不気味な噂があったりもして近づく生徒はここより少ない。
鍵がかかっているから旧校舎内には入れないものの、サボり場所としてはうってつけだ。
「うん」
リィンは何に対してか頷くと旧校舎の方へ足を向けた。
真夏の苛烈さを失い始めた日差しが旧校舎を照らしている。
リィンは鳥の声を聞きながら辺りの気配を探ったがクロウの姿は見えないし、気配も感じない。
(ここでもない
…
?いや
…
でも
…
)
何かさわさわと胸がざわめくような、不思議な感覚がある。
気配察知にかかるのとは違う、言葉にならない感覚。
それに導かれるように、なんの根拠もなくリィンは旧校舎脇の茂みに足を踏み入れた。
掻き分けて少し進むとまばらに木の生えた、少し開けた場所に出た。
視線を地面に落とす。
そこでは枝の間から差し込んだ日差しの中で、クロウが寝転がっていた。
「
……
」
リィンは小さくため息をつきつつも、無意識に顔を綻ばせた。
誰か見ていたらそんなに嬉しそうな顔をするものかと驚くかもしれないくらい。
リィンは足音をたてないようそっとクロウに近付いて、その横に膝をついた。
手をついてクロウの顔を覗き込めばかすかに寝息の音が聞こえる。
よく眠っている。
ふと何か悪戯をしてやろうかという気持ちが頭をもたげた。
基本的にリィンは真面目だから、親しい仲間であっても妹であったとしてもそんな事を考えることはない。
けれどクロウの顔を見ていると、まるで幼い子供のようにそんな気持ちになるのだ。
クロウならやりそうだ、と思うからかもしれない。
とはいえ、し慣れていないせいか何をすればいいかまったく思い浮かばない。
どうするか決めかねたままそぉっと手だけをクロウの顔に向けて伸ばした。
「
…
寝込みを襲うだなんていつから優等生リィン君はんなワルイ子になっちまったんだ?」
「うわっ」
突然聞こえた声に慌てて手を引っ込めると、クロウがにやにやしながら上半身を起こした。
リィンは気まずそうに伸ばしていた手を軽く振って唇を尖らせた。
「なんだ、起きてたのか」
「まーな。つってもお前が来るまでは寝てたけど」
悪びれずにそう返すクロウに、リィンはあえて怒った顔をしてみせた。
「HRサボっただろ。サラ教官が怒ってたぞ」
「サラに言われてもなぁ」
咄嗟にリィンも反論できなかった。
サラは優れた教官だと思うが、教官にしてはちょっといい加減なところと、サボり癖がある。
人の事を言えない部分は確かにある
…
が、クロウがサボっていいことにはならない。
「なら、学院長に伝えて叱ってもらうか」
「いやいやいや学院長だって困んだろ!
…
よし、なら」
「えっ」
クロウの紅い瞳が光ったような気がした次の瞬間、リィンの腰にクロウの手が回されてそのまま抱き寄せられる。
声をあげる間もなくクロウに抱え込まれるようにして彼の隣に寝転んでいた。
「ちょっ
…
!」
クロウの体温と香水の匂いを間近に感じて、成すすべもなく抱き込まれて悔しいと思う余裕もないくらい急激に鼓動が早くなる。
なんだか体も熱い。
どうして、と思っていると抱え込まれた頭の上からクロウが零した笑い声が聞こえた。
「クク、お前も共犯にしちまえば告げ口もできねーだろ」
逃がさないとでもいうように腰に回されている腕に力が込められるのを感じた。
心臓が爆発しそうで苦しいのに、この状態が終わってしまうのを恐れる気持ちに戸惑いながらリィンは少しだけ顔を上向けた。
「
…
もう授業は全部終わってるからなんの共犯にもならないぞ」
「ぐっ
…
、んじゃ明日もさぼろーぜ」
「サボりません。俺は授業を受けたくて仕方ないしな。大体そんなにサボってたらなんでトールズに入ったのかわからないだろ」
「ったく、真面目だねぇ」
茶化すような返答にリィンはふとクロウを見上げた。
「そういえばクロウはどうしてトールズに入ったんだ?」
純粋な興味が湧いた。
そういえばクロウとそんな話をしたことはまだなかった気がする。
ほんの少しの沈黙の後、クロウはなぜかぎゅっとリィンの頭を胸に抱き寄せた。
「
……
さぁな」
返事を聞いた瞬間、日が陰ったような気がしたけれど視線を動かせば日差しは変わらず降り注いでいる。
クロウの声に昏さが宿ったからだと気付くより前にクロウの体がリィンから離れた。
「
…
ったくしょーがねーなー。お前に免じて明日は真面目に授業出てやんよ」
クロウは欠伸混じりに伸びをし、にやりと笑った。
「押しつけがましい言い方してるけど、それ普通のことだからな。
…
ほんとか?」
「ホントホント、クロウサン嘘ツカナーイ」
「
…
明日は朝部屋にたたき起こしにいくからな」
「うええっ」
他愛ない、軽口のやり取りに違和感は霧散して消えていった。
その裏に潜んでいたものに、全てを奪い去ろうと運命が爪を研いで狙いすましていたことに気付くことはできなかった。
………
「あ、リィンくん」
教官室に戻るとトワが席から声を掛けてきた。
自分の席に教材を置いて顔を向けるとトワは扉の方に目を向けた。
「クロウ君来てたよ」
「ああ、着いたって連絡来てましたね。どこにいるとか言ってましたか」
常には別所で仕事をしているクロウだが、今日から数日はリーヴスに滞在する予定で帰ってきていた。
仕事が終わったら会う予定でいたのだ。
「特に言ってなかったけど学院内にはいるみたいだから連絡してあげて?」
「了解です、ありがとうございます」
微笑んで返すと、少しだけ教材の整理をして端末だけ持って教官室を出た。
廊下を見渡したが校舎内にはもう気配が少ない。
一瞬だけ手の中の端末に目を落としたけれど、すぐにそれをコートのポケットにしまって歩き出した。
(
…
別に今はサボっているわけじゃないから人気のないところにいるとは限らないけど)
校舎を出ると目を閉じて気配を探る。
気配察知と同時に胸の奥に感じるさわさわとした不思議なざわめきを意識して追いかける。
この感覚はクロウと眷属関係を結んだ時に強まり、騎神が消えた後も薄まったが残った。
一度掴んでしまえばその感覚を掴み続けるのは難しいことではない。
さすがに遠く離れてしまえばわからないが、こうして同じ敷地内にいればなんとなくクロウのいる方角は感じられる。
「
…
うん」
頷くとリィンはその感覚が導くままに歩き出した。
敷地の端から茂みに入り込んで、林のようになっているところにあの時と同じようにクロウは寝そべっていた。
どうせこんなところで熟睡はしないだろうし、人が近づいて目覚めないような生い立ちではないことをもう知っているから、リィンは足音に構わず傍に近付いた。
膝をついて屈むと素早く手を伸ばしてクロウの鼻を掴んだ。
「んぐっ!おま、躊躇いなく手出してきやがるようになりやがって!」
慌てて肘をついて体を起こしたクロウをどや顔で見返してやる。
「どうせ寝てなかっただろ。油断大敵だ」
「
…
ほんっと食えなくなりやがって
…
おらっ」
「うわっ?」
クロウは頭を掻いていた腕を素早く伸ばしてリィンの腰を抱き寄せた。
抵抗はしなかったから、あの時と同じようにクロウの腕の中に抱き込まれて折り重なるように草の上に寝転がる。
半分クロウの胸の上に体を乗せるようにしてリィンは目を閉じ、微笑む。
あの時の事を覚えていてくれているのだとわかって嬉しかった。
「
…
焦ったか?どうしてトールズに入ったのか聞かれて」
唐突にそう聞いたが、クロウはあの時の話をしているのだとわかったようだ。
ふん、と鼻を鳴らす音が頭の上から聞こえる。
「んな可愛げあったらサラ辺りに全部見抜かれてたと思うぜ」
聞かれる可能性も当然予測済みだったということか。
なんだか少し悔しくてリィンは小さく口を尖らせた。
それが見えたわけでもなかろうが、クロウは宥めるようにリィンの髪を撫でた。
「まぁでも
…
全部気付きゃいいのに、とは思ったかもな」
「
…
俺が?」
顔を上げるとクロウが小さく頷くのを感じた。
「そうすりゃ他にどうしようもなくなってお前を連れ去っちまえたのにな
…
とかな」
言いながらクロウはリィンの頭を抱き寄せた。
こういう風に本音を吐露する時、クロウは表情を見られるのを嫌がるところがある。
全部見たいのに、と思いながらリィンはクロウの胸に額をすり寄せた。
「それはそれで
…
よかったかもな。あの頃から、俺はずっとクロウの傍にいたくて仕方なかったし」
くす、と自嘲気味の笑いが頭上から聞こえる。
「実際そうなったらんな事思う余裕なかったと思うぜ?」
「どうかな
…
。傍にいて、一番大事な時に近くで止められたかも」
クロウの温もりが喪われていく瞬間を思い出して無意識に体を硬くした。
それを察したようにクロウの手が優しく背中を撫でた。
「
…
そりゃそれで困ったな。ただ、そうはならなかったし、ならなかったからオレらはここでこうしてんだよな」
「
…
うん」
それはそれで素晴らしい事だと思った。
あの時何も気付けなかったけれど、取り返しのつかない後悔として心を苛み続けることはなくなった。
リィンはゆっくりと体を起こしてあの頃より大人になったクロウの顔を見下ろした。
そのリィンの頬を手を伸ばして撫でてクロウが言った。
「なぁ、もっかい聞いて」
「え?
……
なんでトールズに入ったのか?」
クロウが頷いたのでリィンは苦笑して質問を繰り返した。
「
…
クロウはなんでトールズに入ったんだ?」
クロウはにや、と笑った
「お前に逢うため」
睦言のような返答にリィンは思わず吹き出した。
「調子いいなぁ」
嬉しそうに返してリィンはゆっくり頭を下げた。
それを受け止めるようにクロウの手が髪を撫でるのを感じながら唇を重ねる。
調子よくはあるけれど、その返しは悪くないな、と思いながら。
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