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めめた
2025-10-27 23:43:30
2964文字
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20251027_種曲(tnpr)
今タネマガがアツい!
独自解釈と捏造のみ。
※作者には特別な知識はありません。フィクションと現実は切り離してください。
行儀の悪いことだ、と思いはするが、見えてしまったものは仕方がない。目の前のソファに座す大曲竜次も特に隠そうとはせずに、談話室で広くはない画面をスイスイと指でなぞっている。鈍感でもないのだから、後ろに人が居る事にも、気が付いているだろう。
「彼女?」
後ろから肩を組むようにもたれ掛かると、今まで光っていた画面は指一つで暗く消灯されてしまった。
「おめーに関係ねーし」
大きく、皮の厚い手が顔を覆う。
「つれへんなぁ」
修二は自身の顔面を掴む手につ繋がる手首を掴み、引きはがす。
嬉々として彼女のことを話してくれるとは思っていなかった。仲が良く、気の置けない間柄になったとは自負しているが、そもそも竜次という男は惚気話だとかはしない奴だ。
「今度合コンにでも誘おか思てたのに」
「勘弁しろし
……
間に合ってんだよ」
修二はおや、と思った。どうやら竜次は彼女のことを相当好きらしい。こんなにいい男に愛される彼女とはどんな人なのか。修二の好奇心が疼いたが、あらぬ邪推をされてこちらの関係に傷が入っても困る。
そうか。とだけ返して、修二はその場を離れることにした。合宿中にとれる自由時間は多くない。そんな彼女との時間を邪魔するのも無粋だと。そう思ったからだ。
□□□
行儀の悪いことだ。と思い、前にもこんなことがあったなと思い返す。以前と同じ場所に座り、同じ姿勢でいる竜次を見ながら、同じように声を掛けようとする。
唯一違うのは、その画面に表示された相手の名前だけだ。
こちらは友人か。というのがまず初めに浮かんだ。次いで、前の子とは別れていてもう新しい彼女がいるのか。無いことだと確信しているが僅かに浮かんだのは、浮気をしているのか、ということ。
「前の子とちゃうやん?」
浮かんだ想定のいずれも口にはせず、単純に疑問を放つ。
「おい
……
見んなし」
以前と同様に、画面は消灯されてしまった。竜次はそのまま口を噤んだ。特に回答する気はないらしいが、この場に留まっている時点で明確な拒絶は無い。
修二はソファの背もたれを乗り越えて、竜次の肩と己の肩をぴったりとくっつけて隣に座した。
「別れたん
……
?」
こちらを見ようとしない顔を覗き込みながら言えば、竜次はわずかに眉を顰めた。それから、諦めたように、軽くため息を吐く。
押し除けたり、これ以上拒絶の言葉があれば、修二だって無理に聞こうとは思わない。けれど竜次はそうしなかった。
修二になら話しても良い、と。そう思ってくれたのが分かって、修二は込み上げる気持ちを抑えながら竜次の様子を窺った。
「両方、彼女だし」
仕方ないな、と言外に含みながら、竜次はあっさりとタネ明かしをした。
「う、浮気してんの
……
?」
だからと言って、軽蔑するほど自分が出来た人間とは思わないが、相手の気性によっては竜次が無事では済まないのでは。修二の言葉は、そんな大事な相方への心配から来るものでしかなかった。文字列での名前しか知らない人間に対して、同情心はあまりわかなかったのだ。
「んなわけねーし。合意だ」
修二はパチクリ、と音がしそうなぐらいに丸くした目を瞬いた。
「良かったわぁ! 竜次が刺されでもしたらどないしよか思たわ
……
」
今度は、竜次がパチクリとする番だった。どういうことか、と事細かに聞かれると思っていたのだ。
けれど、修二は何も言わなかった。それが竜次に、ただ心配をされただけなのだと知らしめた。
「こいつも」
竜次は手に持った携帯電話を軽く持ち上げる。
「あいつも、俺のこと好きだって言うからよ」
竜次は言いながら、正面の、どこか遠くを見ている。修二のほうを見ようとはしないのに、触れた肩を離す気もないらしい。
「相変わらず、欲張りさんやなぁ」
常に、竜次の両手は埋まっている。それでも生来の優しさや器量が取りこぼすことを許さない。彼に抱えきれないものなど無いのだろうと、修二はそう思っている。
それを今伝える必要はない。だから修二は俗っぽい言葉を選んだ。
「竜次は? 竜次も二人のこと好きなん? っていうか
……
、二人だけなん?」
竜次の良いところを知っているからこそ出た疑問だった。彼に惚れる人は老若男女問わずいるだろう。
「好きじゃなかったら付き合わねーし」
竜次はようやく、修二のほうを見た。
読書も、食べ物も。好きなものを一つに絞ることは、竜次にとって難しいことで、考えもしないことだ。それこそ恋人だって、一人しか居てはいけないという理由はないだろう。
竜次はそんな自身の考え方が、世間一般とはズレている自覚があった。だから修二に突かれて動揺だってしたし、この関係が壊れるのは堪えるなとまで思ったのだ。
「今んとこ、二人だ」
けれど修二は軽蔑するでもなく、根ほり葉ほりと聞くわけでもなく受け入れた。修二はそういう奴だったと竜次は納得して、気を緩めて答えた。
思いのほか柔らかな声色が鼓膜を揺らす。修二はその音に、竜次のさらなる領域への立ち入りを許された気がした。
「俺も竜次のこと好きやで?」
髪に隠れた耳元に唇を寄せて、空っぽの手を指先で撫でて、握る。
「おい
……
」
「三人目に立候補しよかな〜思て。どう?」
修二は正直なところ、二人の彼女よりも自分のほうが竜次のことを知っていて、距離もうんと近いと思っている。それに、竜次の事が好きなのは決して嘘ではない。では何故自分は竜次の恋人では無いのかと、そう思ってしまったのだ。
「俺も竜次の愛、欲しいわぁ」
握った手に力を入れて、肩に頭を預ける。空いた手で肩を抱いた。
「あのなぁ
……
」
声色に呆れが乗る。竜次はきっと諦めるよう言いくるめるつもりだろうと修二は思う。結局は、竜次が折れるのだとも思った。
今まで抵抗されずに繋がっていた手に力が入る。それに気が付いた頃には間近に竜次の顔があり、修二の顎は捉えられていた。
鼻先が触れそうなほど近くで、竜次の眉が寄せられるのを見た。
「こういう事だって、解ってんのか?」
あと少し近づけば、唇同士が触れ合う距離だ。吐いた息だって肌で感じただろう。
竜次は弁舌では修二に勝てない。なら、行動で解らせるしかないのだ。自分が何を求めたのか、遊びでやることでは無いのだと。
「当たり前やろ」
修二の眼尻が細くなり、低く静かに言葉が落ちる。
あ。という迂闊な声は響かなかった。
「いただき☆」
「
…………
勘弁しろし
…
」
そうは言ったが、嫌では無いのだ。それは竜次本人は勿論、修二も解っていた。
口角を上げて満足気な修二のそこを、竜次はもう一度塞いだ。
やられっぱなしは性に合わないし、それ以上の回数をすることになるのだから二度目をすぐに済ませたって良いだろう。
「竜次も俺のこと大好きやなぁ」
修二はなんだか機嫌が良い。自分の思い通りになったなら、それは気分も良くなる。
「そりゃ、好きじゃなけりゃこんなことしねぇし」
ふわふわの髪をくしゃりと撫でながら言えば、修二は僅かな間動きを止めた。
「そ、かぁ
……
」
小麦色の頬が赤らんでいるのが分かる。
竜次も気分が良くなって、笑みを浮かべた。
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