ortensia
2025-10-27 23:04:47
1493文字
Public 傭リ
 

赤服人物×子牛、淫魔傭×人間?リ、ファンタジー。


 男に迫られても嬉しくない、例えそれが外見的な問題であって、実際対象が人間でもなんでもないとしても。
「おまえの精液がほしいんだ。口から飲ませてくれれば良いから。」
「紳士に興味は無いとは言いましたが、そんな色気の無い誘い文句では余計悪印象です!」
「そんなに女の見た目が良いのか?戦い易い体のほうが強くて良いだろう。」
「なんか会話がワンテンポずれてません!?」
 自称淫魔の男が何か考える素振りを見せる。好転する予感は全くしない。
「別に女に姿を変えることは出来るが、それはおまえがおれとずっと契約して精液を食わせ続けてくれるって話になってからだな。」
「絶ッ対嫌!」
 だいたい見た目は重大問題じゃないか。こっちは普段芸術を生み出す立場だぞ。見た目を重要視するのは当然だろう。
 それに今はまだ陽も明るい。真っ昼間から彷徨いている悪魔なんて居ても良いのだろうか。
「ここは陰鬱な空気で良い部屋だな。」
「余計なお世話だ!」
「明かりを気にしているのか?可愛い奴だな。」
「黙ってろ!」
 どうしてもこの淫魔にとっては優良物件らしい。引っ越したい、今直ぐ。
「じゃあまた夜に来てやる。別に準備とかはこっちがちょちょいっとやってやる、こっちは専門家なんだ、心配すんな。」
「もっと準備に手間取ってほしかったです!」
 もう来たくなくなるくらいに。
 一先ず招かれざる客は帰って行った。
 しかし次の約束を取り付けられてしまった。しかも一方的に。しかも今日の夜と来た。
 厳密にはいつなんだ。いつ来るか分からぬ不安に背筋の冷たい思いをする。
 逃げ出すか。いや、もしあの淫魔が逃げた先にも来てしまうのだったなら、そこでどんな目に遭うか知れない。あられもない事態になるのなら、慣れ親しんだ自分のテリトリーが良い。ここは田舎で隣家も離れているし。
 どうしよう。
 しかしどうしようもない。
 出来ることと言えば、普段通り芸術品を生み出すことだ。悪足掻きにもならない。
 この至高の、芸術品と言っても良い、牛乳。
 そう言えば聞いたことがある。寝所に牛乳を置いておくと、淫魔は精液と間違えてそれを受け取り、満足してその儘帰って行くのだと言う。
 それで本当に良いのか淫魔。精液しか受け付けない体とかではないのか淫魔。栄養問題的に摂取出来るのか淫魔。
 淫魔のことは良く分からないが、ものは試しだった。
 こうして、要らないと言われた準備を、いつ来るとも知れない「夜」への対抗策の、準備をしたのだった。
 そして夜、夕暮れを過ぎて直ぐというわけでもなく、落ち着かなく早めに就寝したこちらが布団の中で鬱々としていると、奴が来た。
 昼に現れた時のように音も無く、気付けば部屋に居て、きょろりと一周見回すと、直ぐにこちらに向かって来る。
 そして寝室の牛乳を見た。
 牛乳は皿に垂らした。意図せず犬猫に餌でも遣るような形になった。
 淫魔はぱっと牛乳に寄って行くと皿を口に傾けて、ごくごくと飲み干して行く。
 いっきに全て飲み干してしまうと、満足そうに唇をなぶり、ことりと空の皿を元の場所に戻すと、その儘寝室を出て行った。
 や、やったー。
 そして朝迄、誰も、招かれざる客は訪れなかった。
 しかし。
「よく考えたら昨晩飲んだの精液じゃねえな。」
「戻って来んな!」
 本当にこんなんで騙されてくれるわけがなかった。いや、一晩は騙せても、と言ったところか。一生騙されてろ。
「晩の時点でなんとも思わなかったんですか!」
「命を育める良い味だと思ったんだが……。」
 そりゃ牛乳ですからね。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。