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mado-ga-las1
2025-10-27 13:53:44
2277文字
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征かせ給へこの花道(さのぱち)
状況設定に無理がある
CP要素は薄い
永ぱちのバサカしぐさに対する無限の夢、希望
注意
・新八の下半身が無い(描写は薄め)
「おい、」
生きてるか、と言い切る前に左之助は咳き込んだ。自分の唾で噎せるなんて爺みてえだ、と思いかけて、口内に広がる血の味に顔を顰めた。さっき石造りの壁に叩きつけられ、壁伝いにずるりと落ちたままの恰好から動けない。なんとか五体満足だが、投げ出した足の爪先が透け出して、そこから金色の粒子が舞い上がり始めた。もう動かないエーテルの体が崩れ去ろうとしている。
左之助は長い地下通路の先に目を凝らした。明かりのない埃っぽい回廊の先で、巨大なスプリガンは無防備にもこちらに背を向けて悠々と去ろうとしている。最早戦闘行動は不可能と判断されたらしい。何度も腹を切ったこともあり、左之助は魔力切れで消滅寸前だし、もう一人はさっきから返事もしない。
名前を呼ぼうと息を吸うだけで、気管支に血液が入り込む。折れた骨でも刺さったのだろうか。体が軋む痛みに耐えながら、左之助はたった数歩で届くはずの距離に倒れている新八を見やった。暗い中にあっても、銀の髪と浅葱の羽織はよく映える。それが血と土埃で汚れていても。
だから、余計にその違和感は大きかった。羽織から先の下半身の陰はぺちゃんこだった。というより、無かった。そこにあるのは血だまりで、それに浸かった羽織の端がじわじわとどす黒く染まっている。
その光景を改めて認識し、事態を顧みて、左之助は痛みではなく己の不甲斐なさに歯噛みした。スプリガンとの戦闘中、背後の暗闇からの不意討ちに対応できたのはいいが、そいつが自爆機構を備えている想定を左之助はしていなかった。新八に庇われ、突き飛ばされて次に見たのが下半身が吹っ飛んだ友の姿だった。相性の悪いエネミー相手に引き際を見誤るほどに、頭に血が昇ったのだろう。左之助の腹部の衣服はずたずたに裂けている。大量に血を失った今、冷え始めた頭は冷静に自分を顧みた。
もう祈ることしかできなさそうだ、と左之助は思った。スプリガンの進行方向には、おそらくマスターがいる。この地下迷宮の調査任務は、事前情報がほとんどなかったことが災いし、大量のエネミーとの遭遇と戦闘で始まった。混乱による味方戦力の散逸がそれに続き、マスターの孤立という最悪の事態が起こった可能性もあった。左之助も新八も魔術に明るくないから、マスターとの魔力のパスを頼りにおおまかな位置関係を把握するしかない。それでもかなり近づいている、と思った矢先の会敵だった。
今生は、どれだけ死に損ねてでもあの人を生かしたい、せっかくそう思えたのに。今の左之助にできるのは、マスターの傍に誰か一騎でも他のサーヴァントがいるのを祈ることだけ。
「あー、くっそ」
声帯を震わせることすらつらいのに、わざわざ悪態をついてみる。どこからでも届く槍だなんて、振るえなければガラクタと同じなのだ。この一本道を駆ける力すら、もう左之助には残っていない。
「動けよ」
呟いてみるが、それも虚しい抵抗だった。足の感覚がない。エーテルの拡散が加速して、靴の先は既に闇と同化している。ここで座に還ったら、この俺はどうなるのだろうか。色んな思惑と後悔の果てに、再びあの旗の下に集った。置いてきた心残りに、奇跡みたいに再会して、また手を取り合えたのに。またこうやって、何にもできずに終わるのだろうか。最後まで見届けないまま。
「それぁ
……
」
嫌だ、と声に出した。
その時だった。
ずる、と音がした。見間違いかと思った。新八が顔を上げていた。
打ち捨てられた雑巾みたいになった戦友が、心残りが、それでもこちらへと、残った両腕を使って這っている。動けない左之助に向かって、ずる、ずる、と近づいてくる。
怖えよ。まず、左之助はそう思った。お前この前見た映画のゾンビ?っての、あれとおんなじじゃねえか。下半身吹っ飛んでんの分かってねえのか、馬鹿だから。
もちろん内臓が千切れているから、荒い呼吸を繰り返す新八の口元は汚れている。それでも左之助の元へ辿り着くと、その口元はにやりと歪んだ。そのまま左之助の膝にぐいぐいと乗り上げてくる。文句を言おうにも、左之助はもう呆れ返ってしまって、一言も発せなかった。新八はおもむろに、左之助の腰の脇差へと片手を伸ばす。と、どこにそんな力があったのか、それをすらりと勢いよく引き抜いた。
そしてそれを、左之助の腹に当てた。刃を、裂けた衣服の間から覗く傷付いた肌に押し当てた。当然のように、刃に沿って血が滲んだ。
「さの、すけぇ」
そこまでされて、新八の意図が分からない左之助ではなかった。返事替わりに、両腕を伸ばして新八の頭を抱え込み、引き寄せた。刃先が余計に腹に食い込むのも構わず上体を折り曲げる。
魔力の口移しそれ自体は初めてではなかったが、その味は初めてのものだった。線香花火の先を舌に乗せたらきっとこんな味がする。けれど線香花火のようには消えないで、はじけて、燃え続けて広がっていく。舌だけでなく、喉も胃も、血液のように魔力が巡る体中が火傷しそうだった。左之助はそれを、きっちり全部飲み干した。口を拭った手で、新八の手から脇差を奪う。
全身の痛みに構わず立ち上がると、同時に新八の体はどしゃりと地面に落ちた。そんなことは気にも留めていないふうで、新八は左之助にはっきりと言った。
「死に損ねてこい」
「言われなくても」
左之助はもう一度五節の槍を握った。もう片手の脇差を腹に添える。新八から与えられた魔力は、この花道を駆け抜ければ尽きるだろう。今の左之助にはそれで充分だった。
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