syanpon
2025-10-27 03:58:09
2318文字
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後悔:体育

オトスバサンド
現パロ

「スバルさん」
「ん、なにおっとー」

 スバルが漫画雑誌をパラパラとめくっているとおっとーが声をかけてくる。それに顔を上げて答えるとソファに足を広げて座り込みぽんぽんと膝を叩いて呼び寄せる姿が目に入った。ぱちりと目を瞬かせてその足の間に座り込めば合っていたのだろう、長い腕がスバルの胴にぐるりと巻きつき首筋にぐりぐりと擦りつかれる。

「なに、甘えたいわけ?」
「そうです。甘やかしてください……
「しょうがないなぁ」

 ぽんぽんとつむじのあたりだろうと予想をつけて頭を撫でると大型犬のように擦り寄られる。普段はスバルよりも一歩二歩先回りして(行き過ぎなところもあるが)リードしてくれる恋人がこうして自分を求めてくれることに対して悪い気は起きない。ただ匂いを嗅ぐのだけは恥ずかしいのでやめて欲しいが。

「スバルさん」
「はいよ、スバルさんです」
「スバルさん……
「うひゃ」

 首筋にふっと息がかかったかと思えばべろりと熱い舌が這わされる。そのままちゅ、ちゅと何度もスタンプを押すように首筋に口付けされていく。恥ずかしいしくすぐったいのだがこれが口数の少ない男からの愛情表現であることを知っているし嫌ではない。
「ぎゅって抱きしめられてて逃げられないからね」と自分に言い訳をしながら羞恥に身悶えていれば口付けは歯をたてない程度の甘噛みへと変わっていく。

「あ、ちょ、おっとー」
……
「あー! 馬鹿馬鹿馬鹿!」

 その歯が皮膚に食い込む直前、男の顔がスバルから強制的に引き剥がされる。
 慣れ親しんだその声に振り返るとオットーが男の首根っこを引っ掴み止めている姿が目に入る。

「ナツキさんは学校があるんだから目立つところに痕をつけようとするなって言ってるでしょうが! 隙さえあれば!」
……ちっ」
「は!? こいつ舌打ちした!? え、今からでも叩き出していいですか!?!!? というかあんたもあんたですよナツキさん。こいつに隙を見せるなって言ってるでしょう!」
「そんな鳩に餌やるなみたいに」
「鳩よりタチ悪いですからね! 痕つけられて学校生活困るのナツキさんですよ」
「その間家にいたら解決しますよ」
「馬鹿野郎!」

 スパン! とオットーがおっとーの頭をはたく。おんなじ顔をした男がスバルのことについて言い争う姿はもはや日常茶飯事ではあるのだがやはり慣れない。
 この男が2人ともスバルのことが好きだというのも今でもちょっぴり信じられない。それを言うととんでもないことになるのは5回ほど学習させられているので言わないけれど。

 ……言ってみたい気持ちもあるけど言わない。

 対して痛くもないであろう頭をさすりながらおっとーはお気に入りのぬいぐるみにするようにだらりとしなだれかかる。
 
「と、いうかですよ。スバルさん。僕があなたに痕を残したいと思っているということは“アレ”も少なからずそう思っているってことなんですよ」
「そうなのオットー」
「なんでちょっとニヤニヤしてるんですかあんたは。……はあ」
 
 一つため息をついたオットーに手のひらを掬い上げられて壊れ物に触るかのように指先に口付けられる。
 その恭しい仕草がやけに絵になっているな、なんてほうと見つめていれば爪先を噛まれ、オットーの歯とスバルの爪がカチリと小さな音をたてた。

「ひょ」
「そりゃあ僕だって所有印を残したいですよ。あんたは危なっかしいから。今以上に変なものをつけてきそうで心配ですし」

 今度は爪の先にリップ音をたててキスを落とされる。こうして独占欲を改めて口に出されるのにはどうしても慣れない。気恥ずかしさでこの場から逃げ出したくなって尻を後ろにずらすが上手くいかず、そこでおっとーに囲われているのを思い出す。

「スバルさん顔真っ赤……。美味しそう」
「うひ、ひゃあんっ」
「だから噛むな!!」

 ぱっと振り返ると、とろりと顔を緩ませた男がいてスバルの赤く染まった耳を唇でぱくりとはさんで吸う。耳への突然の刺激に肩を跳ね上げさせるスバルと引き剥がそうとするオットーの叫び声がリビングにこだました。

 ***

 ――1週間後。
 
「じゃじゃん!」
……?」
……??」

 2人の恋人の前でブレザーに身を包んだスバルがぐるりと一回転する。大変可愛らしいが制服を着直してきた意味も分からず男2人はソファに腰掛け揃って同じ方向に首を傾げる。
 
「なんだよお前ら2人ともつれねえな。冬服のスバルくんですけど」
「よく似合っていますね……?」
「制服で誘われても在学中は抱きませんけど……
「ちっがーう!!!」

 すぱん! すぱん! と2人分の頭をスバルがはたく。顔が小さくてムカつく。羞恥ともどかしさで顔があついしここまできたことを若干後悔しつつ、おろしたてのブレザーを脱いで放り投げる。中には夏服のシャツを着込んできたためほんの少しだけ肌寒い。

「ああ、シワになりますよ」
「俺の高校は明日から衣替えで冬服用の長袖とブレザーの着用が必須になります」

 そう言ってスバルは恋人2人の間にどかりと座り込む。大きな青い瞳をぱちぱちとさせた男2人の表情をみてきゅうと縮こまり呟く。

「な、なので、好きなだけ痕をつけていいです、よ……

 そこまで言い切ってスバルに後悔が押し寄せてくる。

 「やっぱなし!」と言おうとした唇がどちらによって塞がれたのかスバルには分からない。
 また怒られちゃうかもしれないと思いつつそれでもいいかと欲深い獣2匹を視界に入れたスバルは笑って瞳を閉じた。