匣舟
2025-10-26 22:28:20
3204文字
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ずっと前から言えなかった内緒

ショートショートになりきれなかった食満乱で学パロです。
同学年幼馴染のふたりで、体育祭の話を書かせて頂きました。

 額に落ちる汗を拭いながら自分のクラスのテントで休んでいるのは、先ほどまで目まぐるしい活躍を繰り広げていた猪名寺乱太郎である。燦燦と太陽が照り付ける中、乱太郎の通う高校では体育祭が開催されており、学年関係なくどのクラスもが学校のトップである総合優勝の座を手に入れようと必死である。
 先ほどまで決戦場であるグラウンドでは男子の四×百メートルリレーの決勝が行われており、今はのほほんと自分のクラスのテントで休んでいた乱太郎も自クラスのリレー走者で尚且つアンカーを任された人物であった。
 自分の出番が終わってホッとしている今の乱太郎からは考えられない闘志が溢れていた目をしながら、アンカーである乱太郎にバトンが渡った時点で最下位だったはずなのに、あっという間にひとり、ひとりと目の前にいる走者を抜かしていき最終的には僅差でずっと先頭を走っていたクラスの走者を抜かしてゴールしたものだから、乱太郎のクラスメイトだけでなく学校全体が歓声に沸いたのも記憶に新しい。
 乱太郎のクラスは今総合優勝争いの中に入っており、乱太郎がリレーの優勝を掴み取ったことで最後の競技である借り物競争を残してぶっちぎり総合優勝路線を走行している所である。
「つかれたあ~。」
 足が速いことをクラスメイトに知られている乱太郎は、ほぼ走りが必要な種目に勝手にエントリーされたのでへとへとなのである。幼少期から幼馴染の影響で外で遊ぶことが多かった乱太郎は小学校の時、その幼馴染と一緒に陸上のクラブチームへと入り、全国へ行くほどの実力を持っていたのだが、走ることも好きだったけれど、それよりも絵を描くことも好きだった乱太郎は中学校時代で陸上競技をやめ、高校では晴れて美術部に所属してのほほんとした生活を送っていたのだ。
 別に足が速いことを隠してはいなかったけれどこのことを知られてしまえば陸上部から勧誘されるかもしれないという理由で体力テストもそれなりに走って手を抜いていたのだけど、いつの間にか乱太郎が手を抜いていることを知った他クラスの幼馴染が怒りながら乱太郎のクラスに侵入してきたことを今、思い出して乱太郎はひとりでぷっと笑った。
 乱太郎の幼馴染は勝負好きで尚且つ負けず嫌いだから手を抜いていたことが気に食わなかったらしく、クラスにきて乱太郎の前に立ったかと思えばいきなり胸倉をつかんできたものだから軽く騒動になったなあ。と今必死に借り物競争をしてなにかを必死に探している幼馴染に目を向ける。
 そのプチ騒動があってから勝負事には手を抜かないことを約束させられ、早二年、今年高校最後の節にようやくなのか中学一年生ぶりに幼馴染とクラスが一緒になり、負けず嫌いの彼によってあれよこれよと種目登録されへとへとになって自分のクラスの誰もいないテントへと休みに行っているのだが。
ふふ、がんばってる、がんばってる。」
 一番最後の種目である借り物競走に出場している乱太郎の幼馴染である食満留三郎は、トラックを走ってようやく借り物競走の醍醐味である紙を漁ってひとつを選んでその紙に書かれているお題を見たところだ。
 乱太郎以外のクラスメイトたちは、外に出て最後の競技である借り物競走を見ようと陸上トラックの外から応援しているところである。紙に書かれたお題を開いた途端、一生懸命周りをキョロキョロして探している留三郎が可笑しくて少し笑っていた時、その彼とバチッと目が合ったかと思えば一目散にこっちに走って大声で自分の名前を呼んでいるではないか。
乱太郎ッ!こっちに来いっ!!!」
はぇ……?」
っ、早く!」
 休んでいた乱太郎の手を引っ張って即急に立たせた留三郎は、そのまま乱太郎の手を強引に引っ張って突き進んでいく。急すぎて全く自分の状況を理解していない乱太郎は、ただひたすら留三郎に着いていくためだけに足を動かしていた。
「一番最初にゴールしたのは食満先輩だ〜っ!」
 留三郎がゴールテープを切ると、待ってました!と言わんばかりにマイクを持っていた放送委員が近づいて、お題と留三郎が持ってきた乱太郎を照らし合わせている。
ふむ、OKです!一着、食満先輩!」
 留三郎が一着であるということ確定すると、トラック外で応援していたクラスメイトたちの歓声が上がった。これで総合優勝は確定だろう。司会の放送委員がニヤニヤしながら留三郎を見つめてお題公表してもいいですか?と言っているのを見つめている乱太郎。
 なぜそんなにニヤニヤする必要があるんだろう?と二人の様子を見つめていると留三郎は頭を掻きながら内緒、ということにしといてくれないか。と放送委員へと言っていた。
内緒ってどういうこと?」
お前には関係ない。」
「なんで〜?疲れた私を引っ張り出しといて内緒はないでしょ〜?」
 ねえ、留三郎?とニコニコしながら笑っている彼に詰められている留三郎を見て笑っている放送委員に、笑ってないでなんか言え!と助けを求める留三郎。結局、借り物競走のお題の内容を問い詰めたが、その時はあとで、二人になったら話すから!とはぐらかされて終わったのだった。
誰かさんのせいで疲れたよ、今日は。」
悪かったって。でも総合優勝できたから良いじゃねーの。」
 最終の乱太郎や留三郎の頑張りもあり、他クラスを突き放してぶっちぎりの総合優勝を収めたふたりのクラスはホームルームにプチ祝勝会をしてまた後日ちゃんとした祝勝会をしようということで下校になった。家までの帰路をいつものように一緒に歩いている乱太郎と留三郎の顔は体育祭を頑張ったせいか少し疲れている。
で、結局なんだったの、」
 借り物競走のお題。疲れている乱太郎がジト目をしながら留三郎を見つめると、忘れてなかったのかよ。と留三郎が頬を掻きながら笑った。忘れてるわけないでしょ。とまた睨むと留三郎がボソッと何かを口にした。
幼馴染という枠で居られたらどれほど良かっただろうな。」
何?聞こえない。」
なんも無い。んで、借り物競走のお題だったな。」
 借り物競走のお題の内容を聞くだけなのにこんなにはぐらされるのも、留三郎がいつになく真剣な瞳でこちらを見つめてくるのも分からない乱太郎はただそんな彼を見つめることしか出来ない。緊張した面持ちで口を開いた留三郎を乱太郎は瞬きをせずに見つめた。
すきなひと、だったよ、お題の内容。」
すきなひと?」
 留三郎の口から出た言葉が予想外すぎて思わず聞き返した乱太郎。なんだすきなひとって。と思った途端、いきなり脳がそれを理解し始めて瞬く間に乱太郎の顔が赤く染まる。
なんだ、お前、いつも一緒に居すぎて意識されてないって思ってたのに。」
 その感じだと俺も期待していいのかもな。といつの間にか乱太郎の手を絡めとって手の甲にキスを落とした留三郎に乱太郎の体はフルフルと震え出して、堪らず彼は大声を上げた。
「と、とめさぶろ〜のばか〜っ!!」
 急にそんなことをするな〜っ!と顔を真っ赤にさせながら留三郎に絡め取られていた手を叩き落として韋駄天の走りを駆使して走り去っていった乱太郎を見て、留三郎はははっ!と笑いながら遠くなっていく彼の背中に追いつこうと軽く伸びをして走り出していく。
 結局その後疲れているからか体力が無く留三郎に家に入る直前で追いつかれてしまった乱太郎は、そのまま家に押し掛けられ自分の部屋で留三郎に抱きつかれてしまい
すきだ、ずうっと前から、乱太郎、おまえがすきだ。」
耳元で囁くなっ!」
 彼の負けず嫌いが発動した押せ押せな愛の告白を耳でずうっと囁かれた結果でろでろに溶けてしまい、わかった、わかったからぁ。と涙目になりながら恋人になることを了承したそうである。