たくとろ
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ワンライ「ハロウィン」

2h30min
バカ話なんですが、なんか妙に長くなっちゃった

それは、とある日の授業でのこと。黒板にチョークで文字とカボチャの形をしたポケモンを書いた先生は、生徒たちの方を向いた。

「みんなはハロウィンという技を知っているかな?正直、あまり見かけることのない技だが、知っておいて損はない」

そう言った先生は黒板のカボチャポケモンを指差した。

「ハロウィンはバケッチャとパンプジンだけが覚えるゴーストタイプの技で、相手をハロウィンに誘うことで相手のタイプにゴーストタイプを追加してしまうんだ。ゴーストタイプが追加されるとゴーストとあくが弱点になるし、逆にノーマルやかくとうの技は効かなくなるから、この技を使う場合も使われてしまった場合も注意が必要だな。だが、上手く使えば有利にバトルを進められる面白い技だ」

リコは先生の話をしっかりとノートにまとめた。その後、先生は技の詳しい解説を続ける。ゴーストタイプにするのではなく、あくまで追加であること、それにより三つのタイプのポケモンが生まれることなど、有効的な使い方も含めて話していき、しばらくしてチャイムが鳴ってその日の授業は終わった。
そんな学校での出来事を思い出したのは、街がハロウィンに染まっているからだ。ロイと買い出しに出かけたところ、街はカボチャの飾りつけに、ゴーストタイプやあくタイプのポケモンの仮装をした人たち、どこかからやってきたバケッチャをはじめとしたポケモンたちで溢れている。

「人もポケモンも多いね」
「ほんとあ、ぐるみんの仮装してる子がいる!かわいい!」

目を輝かせるリコの隣でロイは優しく微笑んだ。それからしばらくして、なんとか人混みを抜けて目当ての店に辿り着いた二人はクッキーの材料を買った。何かの話から発展してチョコチップクッキーが食べたくなった二人はマードックに相談した。材料があれば作れるし、やり方も教えてくれるとのことで現在に至る。無事に材料を買えて安心というところだ。しかし店を出た二人は少々困っている。

「さっきよりずいぶん人が増えてるね」
「どの道も混んでるし、帰るのに時間かかっちゃうね」
「どうする?タイカイデンで往復すればリコも僕もすぐに帰れるかも」
「でも、空にはゴーストタイプのポケモンがいっぱいいるし、ここじゃ狭くてタイカイデンも飛びづらいんじゃないかな」
「言われてみればうーん」

どうしても帰るのに時間がかかってしまう。それならせめてどこかで時間を潰したいと考えていると、ロイが何かを見つけて指差した。リコもそれを見て頷き、早速ロイとそこに向かった。彼らが入ったのは個室がたくさんあるネットカフェだ。ここでなら落ち着いて時間を過ごせるだろう。

「現在、ペアシートしか空きがありませんが、よろしいですか?」
「僕はいいよ」
「私も大丈夫」
「では、この番号のお部屋にどうぞ」

ロイが鍵を受け取り、二人は部屋に入った。二人で座るには少し距離が近くなるが十分なスペースだ。マードックに連絡を入れ、二人は腰を下ろした。少し肩が触れそうな距離感で、リコの心臓はほんの少し早くなった。

「街中はほんとスゴかったね〜リコは学校でハロウィンのイベントとかあった?」
「うーん、友達どうしでお菓子パーティはあったけど、おっきいイベントは無かったかな。あ、でもハロウィンといえば、さっき思い出したんだけどね」

リコは授業で習ったハロウィンの技について話し始めた。ロイの口から出る新鮮な反応と面白い使い方で、授業の時以上に楽しくハロウィンの技を学べた気がする。しばらくして話し終えた二人は、歩き疲れたこともあって眠りに落ちた。



リコが目を開けると、そこは飛行船の部屋のようだ。いつの間に帰ったんだろうと思いながらリコは立ち上がった。そして、ふと下を見ると、自分の足が深い緑色だったことに気づいた。しかし見慣れた色と形だ。おそるおそる手を見ると、白っぽい緑色で、かわいらしい肉球。リコは急いで鏡を探した。ついに鏡を見つけて自分の顔を見て、リコは確信に至った。

「マスカーニャになってる

いつかロイがアチゲータと入れ替わっていた時にニャローテと入れ替わりたいとは思ったけれど喜びより困惑が勝る状況だ。ロイの時と同じかもしれないけれど、近くにリコの体はない。それにヘアピンが髪についているし、マスカーニャの仮面で分かりづらいけど、目の色はリコそのものだ。自分自身がマスカーニャになってしまったのかもと、色々考えながらひとまず誰かに相談しようと決め、リコは扉を開けた。廊下には誰もいないらしい。そしてやけに静かだ。リコは試しに走ってみた。いつもと感覚は違うけれど、段々馴染んできて気持ちいい。マスカーニャの体験ができるのはやっぱり楽しいかもしれない。なんて考えながら進んで、リコは甲板に出た。すると、そこにはアチゲータがいた。リコはもしかしたらと声をかける。

ロイ?」
「あ、リコ!どうしたの?」

振り返ったアチゲータの目はやっぱりロイのもので、顔の上の方にはあの不思議なピンクの髪が生えている。ロイも同じ境遇なのかもしれないと少し安堵しながら、リコはロイの方に向かった。

「ねえロイ、私起きたらマスカーニャになってて
「?リコってばなに言ってるの?君は元々マスカーニャでしょ?」
「へ?」
「あ、いや、元々はニャオハ?」
「違うよ!私は元々人間!!」
「人間?なにそれ?」

どうやらロイは人間を知らないらしい。一体何がどうなっているんだろう。リコがさらに混乱していると、なにやら空の色が赤く黒く染まっていく。空中をヤミカラスたちが飛び去っていくと、甲板の下からパンプジンがすり抜けてきて現れた。すると、ロイの方を向いて白い球体を放った。

「うわあ!?」

ロイの周りには何やら白い幽霊のようなものがくるくると回っている。

「ロイ大丈夫?」
ウィン」
「え?」
「ハロウィン!!ハロウィン!!」
「え、え、ロイ?」
「リコ!ハロウィンだよ!!」

わけがわからないでいると、パンプジンが今度はリコの手を縛った。そしてロイの方に近づけ、手をロイの横腹で擦り始めた。

「あはは!あはは!くすぐったい!!」
「ご、ごめんロイ
「いいけど!あはははは!」
もしかしてさっきのハロウィンでゴーストタイプになって、私のいたずらがこうかバツグン!?」

合っているのかはわからないけど、きっとそうだろう。いたずらなんて技は無いし、くすぐるはノーマルタイプのわざだけどきっとそうだ。しかしパンプジンは中々手を離してくれない。なのでロイゲータを永遠くすぐる状態だ。申し訳なく思いつつも、正直少し楽しい。くすぐられたロイの顔を見ると、ちょっと快感もある。リコは少し指を動かしてみた。いつもと違う三本指でも、なんとなく動く。くすぐりの精度が増してロイはさっき以上に笑っている。かわいい。気づいたらパンプジンの手は離れていて、リコは自分自身の手でロイをずっとくすぐっていた。

「あはは!リコ!そろそろっ!やめっ!はは!」
「もうちょっとだけ
「だめ!あはっ!ははは!ストップ!!」

しばらくしたところで、ロイが小さな手でリコの手、もとい肉球を掴んだ。リコが少しどきりとしていると、ロイは少し目を細めている。

「リコ、やりすぎ」
「ごめん楽しくてつい
「リコばっか楽しんでずるいよ。僕、歌いたいから聞いてくれる?」
「うん」

リコが頷くと、ロイは笑顔で歌い始めた。旅の中で何度も聞いた心地いい歌を期待して、リコも耳を済ませた。しかし、耳に入ってきた音はリコの頭を激しく痛めた。

「なにこれ

ロイの歌は決して酷くない。そう、問題はそこではなかった。目を開けたリコはやっと何が起きているか気づいた。ロイの歌はチャームボイスとなって響いていたのだ。フェアリータイプの技はあくタイプのマスカーニャであるリコにとってこうかバツグンだ。これはかなり効く。

「ロ、ロイ、待ってストップ

リコの言葉は気持ちよく歌うロイには届かなかった。しかしこのままでは身が持たない。リコは大きな声で言った。

「やめて!!」

するとロイは歌うのをやめた。リコは頭を抱えながらぜえぜえと息を吐いて顔を上げた。すると、ロイの目には雫が浮かんでいる。

「リコ僕の歌嫌い?」
「え?ち、違うよ!今のは!」
「無理に聞かせてごめんごめんね」
「ま、待ってロイ!違うの!ロイ!!」

リコの叫びも虚しく、ロイはどこかへと走り去って消えた。そしてリコの視界は歪んでいき、再び真っ暗となった。



!ロイ」

はっと目覚めたリコは右肩に力がかかっているのを感じて顔を向けた。すると、人の姿をしたロイと、鼻がひっついた。目を瞑っていて、寝息を立てている。その状況を理解するのにしばらくかかり、気づいた瞬間、リコの心臓は異常な速さで動いた。混乱したリコは硬直し動けない。しばらくそんな状態が続いて、やっとロイが目を開けた。リコとの距離感に気づかないまま顔が離れて、あくびをしながらロイは腕を伸ばした。

「んー!寝ちゃってたやおはようリコ。リコも寝てた?」
「あうん寝てた」
「そっかああ、けっこう時間経ってるね。そろそろ人も少なくなってるだろうし帰ろっか」
「うん
「どうしたのリコ。顔赤いよ?」
「なんでもない

半分放心状態でリコは答えた。ネカフェを出ると、人混みはかなり少なくなっていた。帰り道、やっと心が帰ってきたリコは思い出したようにロイに言った。

「ロイ、私大好きだよ!!ロイの歌!!」
「え?あ、ありがとう」

突然のことに驚きつつもロイは素直にお礼を言った。どうして今歌の話?と思いつつも、リコはそういうとこあるしと自己完結して追求はやめた。