ニイナ
2025-10-26 00:00:00
8257文字
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とある楽園の宝石

若様受けwebオンリー『フラフラしないでそばにいて!』の展示作品でした。
ファンタジーのロドフ。人外若様と成り行きでとある船の船医になっていたローの話。
捏造しかないです。
たぶんもっとちゃんと練るべきなんですがとりあえず間に合わせたかったので書きました!その内手直ししそう!

 異形、というのはひどく美しいもの、あるいは酷く醜いもの、におおまかに分類される。と、ローは思っていた。どこかしらが変わっているというだけでは、異形には当てはまらないというような気がしていたのだ。そしてローは前者に出会ったことが、今までなかった。
 ローの記憶は船が嵐に呑まれたところで途切れている。成り行きで船医として乗ることになって慣れていた頃に、ローは海が荒れに荒れて船から放り出されていた。他の船員がどうなったかは不明であり、乗っていた船の行方も定かではなかった。そんな中でローはひとり、見知らぬ天井を見上げていた。
 高い天井には落ち着いたダスマスク柄のようなクロスが貼られ、こぶりのシャンデリアが吊り下げられている。暗いクロスにシャンデリアのひかりが映えていて、きらきらと眩さを降らせていた。ふかふかの高級そうなベッドも、手触りの良すぎるシーツも、やわらかく漂う甘やかなにおいも、全くもって覚えがなく、ここはどこなのかを確かめようとローは視線を動かした。
 そうして、ローはそのまま視線を固定することになってしまった。ローの目に映ったのは丁寧に手入れのされた骨董品にも等しい家具と、そのひとつの椅子に座る、ひとりの男だった。けれども性別はすこしばかり曖昧で、おそらく男だろう、とローは判断する。美丈夫という言葉があまりに似合う男は、短く切りそろえた金色の髪に空を模した眸を持っていた。高い鼻は彫りの深さを表していて、薄く形の良い唇はしずかに閉じられている。正しく整った配置でパーツを収めた顔はちいさく、その顔を支える首は長くすらりとしており、全てのバランスが調和された体躯は引き締まっていた。それに何より、目を惹いたのは、腰からぞろりと覗いて床を這う、尾にも似た骨だった。
 イルカやクジラの尾のような太い一本の骨に、ちいさな骨が左右対称にいくつも生えている。その骨はただの白骨という見た目ではなく、よりつるりとしていてどこか硬質にも見えた。言うなれば真珠やオパールに近い材質で造られていて、光沢もある。腰にある骨の根元は隠れてしまっているので見えないため、骨が身体に癒着しているのか、はたまた露出しているのかはわからなかった。けれどもその骨が身体を支えているわけではないのは二本の足があることから確かで、ローは驚きを隠せなかった。これはまさしく、異形と呼ばれるものの類だろう。だけどもこんなにも美しい、人ではないものを、ローは初めて目にした。不気味に思えて当然の骨の尾が、まるで男を飾る装飾品のひとつのようだった。それを含めて完成する、男という芸術ですらある気がした。
 呆然と視線だけで男を見つめていれば、ゆるりと男が視線を動かした。ぼんやりと窓の向こうを見ていたのだろうその目が、ローを確かに捉えた。かち合う眸の透き通る青さにまた目を奪われ、ローは瞬きすら困難になる。ローと目が合った男は目を丸めたあと、やわらかく笑みをこぼした。その瞬間に、ローの心臓はおおきく騒ぎ出す。
「フフフッ、目が覚めたのか。あの嵐で助かるとは幸運だったな」
「アンタが、助けて、くれたのか……?」
「いや、俺じゃない。お前をここに運んだのは……
「ドフラミンゴ、その人起きたかな!?」
 やわらかい低音が耳に馴染む声で言葉を紡ぎ、ローはのろのろと身体を起こしながら問いかけた。それに意外そうにかるく目を見開いた男が首を振ったところで、部屋のドアが大きな音を立てて開いた。そして現れた者に、ローはぽかんと口を開けることになる。
「クマ!?」
「あっ、はい、すみません……
「こいつミンク族のベポ。お前を助けたのもベポだ」
 ドアの向こうから姿を見せたのは、どう見ても白い熊だった。二足歩行で歩く、白い熊。加えてそれが人語を発するというのは、驚愕以外のなにものでもなく、ローは状況がますます理解できなくなる。そして男――ドフラミンゴ――に返された言葉に何度目かもわからない驚きに呑まれた。
「は?ミンク族?そんなの百年も前に存在が確認されなくなったはずじゃ……
「まァ、この島は時が止まってるからな」
「オレたちは絶滅なんてしてないよ。ここで、生きてるんだ。すこしだけど」
 ドフラミンゴの口から出てきたミンク族というのは、動物にかなり近い見た目をしているものの動物ではなく獣人で、その身体を純毛で覆われている。人間よりもかなり高い身体能力をもっている種族なのだが、もはや今となってはおとぎ話の類のものだった。そんな種族がいた、らしい、という文献が残っているだけなのだ。白い熊――ベポ――が寂しそうに呟くのを聞いて、ローはおおきく息を吐く。この広大な海には数え切れないほど島がある。そのひとつが、世界から取り残されていても不思議ではなかった。
「それなら、アンタは?まさかアンタもミンク族の生き残りなんて言わねェよな?」
「俺か?俺は……半分魚で、これはその名残だ。たぶんな」
「ドフラミンゴはドフラミンゴだよ」
 頭に理解が追いつかないまま疑問が口をついて出てしまう。それにドフラミンゴがすこしだけ思案して答えを返し、ベポがドフラミンゴを庇うようにきっぱりと言い切った。何かの種族に分類する必要などない、と強い意志のこもる声に、ローはそれもそうだと納得してしまった。
「まァ、アンタがなんでもいいか」
「フッフッフッ!変わったやつだ。だがまァ、本当にお前は運が良い。この島は本来、人が辿り着かない秘境。世界に忘れ去られた楽園、アヴァロンへようこそ」
 ローの返答にドフラミンゴが肩を揺らして笑い、しずかに椅子から立ち上がる。そして優雅にローの傍らまで語りながら歩いてきた。ドフラミンゴが歩く度に骨の尾は床を這って敷かれたカーペットへ痕を残した。ローを歓迎する言葉とともにドフラミンゴが品のある所作で腰を折り、その後ろでベポもかすかに頭を下げた。
「アヴァロン…………
「ここに来るものは大抵、呼ばれてるのさ。あァ、お前の名前は?」
「トラファルガー・ロー」
「ローか。覚えやすくて良いな」
 フフ、と笑うドフラミンゴには妖艶さがにじんでいて、ローはすこし落ち着かなくなってくる。ドフラミンゴという男に甘ったるく見つめられるだけで、心臓がざわざと騒がしくてうるさくなった。この異形であるドフラミンゴの美しさにひとは惑わされるのだろうと頭の端で思ってシーツを握りしめた。
「気持ち悪いとこない?」
「大丈夫だ」
「ここに着たってことは嵐に遭ったの?船に乗ってた?」
「あァ、成り行きで船医をやってた」
「そっか!じゃあキャプテンだね!」
 ベポから矢継ぎ早に質問をされ、ローは端的に言葉を返していく。船に乗っていたという事実にベポがパッと顔を輝かせた。まんまるな眸をらんらんと光らせてローへと身を乗り出すベポが言うのに、ローはゆるく首を振った。
「いや船長はやってねェ。おれはただの医者で……
「よろしくね、キャプテン!」
「フフフッ!ベポは航海ってもんに憧れがある。呼び方は許してやってくれ」
「あーー、まァ、なんでもいい……
 キラキラと輝く顔でベポに言われて手を取られ、ローはもはや返す言葉を無くしてしまう。そんな様子に笑みを浮かべたドフラミンゴがやわらかくローに進言する。それを受け止め、ローは訂正するのも何かを考えるのも放棄した。呼び方など、その対象がわかればいいだけのことだった。おそらく諦めだろうローのそれに、ドフラミンゴがまた笑みを深めたので、ローはもう何も気にしないことにした。
 その後、ローはドフラミンゴに連れられて部屋から出ることになった。なんでも会わせたい者がいるらしい。ドフラミンゴが住むこの屋敷は広々としていていくつも部屋があるというのに、実際に暮らしているのはドフラミンゴだけだという。
「ベポには家族があるし、他のやつも同じだ」
「けど、別にここに住んでても問題ないんじゃねェか?」
「縄張りははっきりしておいた方がいいからな」
……まァ、たしかに」
 この島にはミンク族の他に、野生の動物が多くいるものの、ほとんど人に近い者はドフラミンゴ以外いないようだった。そのせいか、縄張りという意識は強いらしく、面倒なことにならないためにもドフラミンゴはこの無駄に広い屋敷でひとりなのだろう。それは、ひどく寂しいことに思えた。
「こっちだ」
「わかった」
 屋敷を出て道を右に曲がり、蛇行するあまり舗装もされていないところを歩く。舗装はされてないとはいえ、獣道よりは道になっているので歩きづらいということはなかった。そのまま道なりに行けば、ひとつのログハウスのようなものが見えてくる。そう大きくはないログハウスには誰かがいる気配がして、ドフラミンゴの目的地もここなのだろうとローは判断した。
 ドフラミンゴがドアをノックしてみると、中から高めの声で、入ってくれ!と明るく返事があった。子供なのか、と思って身構えていたローを待ち受けていたのは、おそらく、ちいさなトナカイの獣人だった。四足歩行ではなく、ベポと同じように二足歩行のちいさなトナカイは、ピンクの帽子をかぶって角を出していた。
「ドフラミンゴ!あっ、そいつ起きたんだな!よかった!」
「おそらく問題ないだろうが……一応診てやってくれ」
「わかった!三日も覚まさなかったんだ、ちょっと心配だ」
「三日!?」
 ちいさなトナカイの愛嬌のある顔が明るくなってドフラミンゴを見たかと思えば、ローに視線を投げて驚きと安堵を見せる。そしてドフラミンゴに押し出されたローへとちいさなトナカイはおおきく頷いて近くの椅子を引いた。話の流れからしてこのトナカイが医者なのだろうと納得してしいたローは、目を覚まさなかった日数に驚愕する。
「そうだぞ。ベポが大急ぎで知らせにきて、異常はなかったけど中々目を覚まさなかったんだ」
「そう、なのか……
「まァ、ひとまずは起きたんだ。問題ないだろう」
「そうだな……でも一応、診させてくれ」
「わかった」
 ローも同じ医者ではあるものの、自身の感覚と他の者の感覚は違うだろうと頷いてローは椅子に腰を下ろした。航海していると他の医者に出会うこともそう多くないため、好奇心があるのは否めないなと思いつつローはちいさなトナカイの医師に任せることにした。
「おれはトニートニー・チョッパーだ。よろしくな」
……ローだ」
 よろしく、と差し出された手を握り、ローはちいさなトナカイ――チョッパー――の診察を見守った。そして気付いたのだが、チョッパーが扱う医療器具というのは、ずいぶん年季が入っていて、古めかしいものだった。片耳だけで心音を聞く聴診器は今となっては見かけない。それが不思議というより不可解で、ローはじっとチョッパーの手元を見てしまった。
「なんだ?」
「いや……ずいぶん古い型を使ってるんだな」
「これ古いのか!?」
「そう、だな……おれはほとんど見たことがねェ」
 不思議そうに首を傾げて問いかけてくるチョッパーに、ローは余計なことかも知れないと思いつつ言わずにはいられなかった。医者というのは拘りが強い者も多いし、古くからの物を使いたがる者も多い。そのこと自体を否定するつもりはないものの、医学というものは常に新しく変わっていくものなのだ。そんなことを思っていたローに、チョッパーが声を上げ、ローはそちらにこそ驚いてしまった。
「この島は時間が止まっているに等しいからな。そういう器具なんかが新しくならねェんだ」
「他の島には、おれたちじゃ行けないし……
…………
 驚きに呑まれるローとチョッパーに、ドフラミンゴが落ち着いた声で語りかける。その言葉にも、続いて聞こえたチョッパーの言葉にも、ローはまた納得するしかなかった。ミンク族が滅んだと認識されている今、獣人が歩いていたらどんな扱いを受けるかわからない。人間というのは未知のものに恐怖を覚えるものなので、この島から出るのは得策とは言い難いだろう。
「俺がいちばん人に近いんだがな……
「ドフラミンゴはだめだ。近いだけに余計、変なやつらに目を付けられかねない」
「だったら、おれが外に出てやる」
「ロー?」
「おれなら怪しまれねェし、問題ないだろ」
 考えるよりも先に、言葉が口から飛び出していた。確かにドフラミンゴは獣人ではなく、人に近いとはいえ異形であることに変わりはない。そのせいで頭のおかしな誰かに目を付けられたら、と考えるだけでローの腸は煮えていた。込み上げる苛立ちに舌を打ちそうになりつつドフラミンゴを見つめれば、空色の眸がぱちりと瞬いてからやわらかくなった。楽しげにローを見つめるドフラミンゴのその顔に、目を奪われて逸らせない。
「フフフッ、確かにそうだな」
「必要なもんがあれば、おれが調達してくる」
「でも、おれたちに代わりに渡せるものなんてないぞ……?」
「いらねェよ。その代わり、おれはアンタについて知りたい、ドフラミンゴ」
「ずいぶんな変わり者もいたもんだ」
 困惑を浮かべるチョッパーを他所に、ローはドフラミンゴへ言い募って許しを得た。おかしそうに弧を描く唇が、やけに艶めかしく見えたのは気の所為ではなかった。それはきっと、ローの中に劣情が生まれていたからだった。

 それからというもの、ローはアヴァロンと言う島に居着くことになっていた。ローが島を出る時はベポとチョッパーが同行してくれ、買い物を済ませるようになった。といってもちいさな船から陸に降りるのはローだけで、ベポもチョッパーも他の島へローを届ける役目をただ全うしていた。そもそも獣人を目撃されるわけにはいかないので、ローがひとりで行動するのが最適解だった。
 航海には、確実にアヴァロンへ戻れるコンパスのようなものを手渡されていて、それを頼りにローたちは海へと繰り出していた。その都度、ローはドフラミンゴからひとつ、男のことを知る手筈になっている。好きなもの、ロブスター。苦手なもの、BBQ。そういったちいなものを、ひとつずつローは積み重ねていっていた。
 アヴァロンでは自給自足が基本で、食事も衣服もそうだった。毛や糸の材料はミンク族から得られることも多く、それが編まれて服になっている。色は草木で染められているのが一般的だった。ローの着る服もここで作られて染められたものに変わっていっている。その中で、ドフラミンゴの服だけはいつだって一級品だった。手触りの良いシルクやそれに近い繊維のシャツやガウンは、いついかなる時もドフラミンゴのためだけに作られている。それはおそらくこの島の王であるドフラミンゴへの貢物なのだとローは解釈していた。
 誰かにそうだと言われたわけではないものの、この島に棲む誰もが、ドフラミンゴを特別にしているのだ。そのことを思えば、ドフラミンゴという男がこの島を統べる存在なのは疑うべきもない。完全なる美しさでもって、ドフラミンゴはこの島に降臨しているのだと、思わずにはいられないのだ。そうしてローはそんなドフラミンゴに惹かれ続けていた。航海するごと、ドフラミンゴをひとつずつ知っていくのが、ローはひどく楽しかった。
 寝食をともにして同じ屋敷で暮らしていくと、ドフラミンゴの無防備さにも時折出くわし、頭を抱えることも多かった。ローの部屋のソファで勝手にうたた寝をしたり、寝付きが悪いからとベッドに入ってきたり、ということがあり、ローはいちいち煩悶していた。ベポに言わせると、こんなふうにドフラミンゴが人を警戒しないのは珍しいそうなのだが、それもまたローの胸を掻き乱した。そしてこの日もまた、ローはドフラミンゴによって感情をめちゃくちゃにされている。
 屋敷には大きな風呂場があり、ドフラミンゴとローが主にそこを使っていて、入る順は日によって違っていた。この日は先にドフラミンゴが入浴していたので、ローを呼びに来たのだが、その格好が良くなかった。
「ロー、冷めないうちに入れよ」
「っ、声かけるならちゃんと服を着ろ!」
 ノックをされたので至ってふつうに応じようとしたローは、ドフラミンゴが上半身を露わにしたままドアを開いたことに声を上げた。下はちゃんと寝間着用のパンツを穿いているのに、上はシャツもガウンも羽織らずにいて、肌が丸見えになっていて目のやり場に困る。風呂上がりでほんのり熱を帯びて紅潮するようなドフラミンゴの肌や胸元を冷静に見ていられなかった。
「今日はつい長湯になったんだよ。それに、背中に違和感があって服を着たくねェ」
「骨か肌に異常があるのか?」
「さァな」
 落ち着かなくなって動揺していたローを引き戻したのは、ドフラミンゴが口にした違和感という言葉だった。背中という場所なだけに、見えないからわからない、と捨て置くドフラミンゴをローは無視できなかった。
「ちょっと見せろ」
「特に何もないだろう」
 どうせ、とまたどうでも良さそうに言うドフラミンゴを強く引き留めるために見上げて見せれば、ドフラミンゴが息を吐いた。億劫そうにローの部屋に入ってソファに座るドフラミンゴの背中を、ローはこの時初めてまじまじと見ることになった。背中も腰と同様に骨が癒着しているのか浮き出ているのか判然としない状態だった。肌に骨が埋まっていて、それが半分ほど露出しているようにも見える背中は、どこかで見たコルセットピアスを思い起こさせた。ある種の芸術としてこの男の身体に骨が埋め込まれていると言われても、ローには信じられる。あまりに至高の芸術品じみたドフラミンゴの身体に、劣情よりも感嘆が勝って、ローはうっとりと目を細めて骨へと指を這わせた。
 硬質な骨は、けれどもつるりとしていて思ったよりもやわらかく出来ている。肌の境目にあたる部分は硬さが増しているらしく、ゴツゴツとした感触があった。きめ細やかさのある肌の弾力と差のある骨の硬さが、ぞわりとローの背筋を震えさせる。
「っ、ロー、もう触らなくて、いい」
「まだだめだ」
「おかしなところなんて無い、だろう」
「あァ、そうかもな」
 ドフラミンゴのかすかな抵抗を無視して、ローは骨をなぞって形を確かめた。骨のひとつひとつの繋がりが、その境目が、あまりにも指に馴染んで恍惚感さえ感じる。ソファに座るドフラミンゴの身体をすこし倒すように押さえて、ローの指は欲に忠実になっていく。細やかな骨の形を指の腹で撫でつけ、隠されることもない肌に手を這わせた。
「なら、もう、やめっ、ぁッ!?」
 そうして気付いた時には、肌も骨も、ローの舌の下だった。どこか生ぬるい骨と、まだ熱を帯びる肌の温度差が、やけに心地良い。せっけんの爽やかなにおいは、けれどもドフラミンゴの体臭と混じってか甘くなっていた。骨と肌のすき間を探るように舌を這わせて感触を楽しめば、ローの欲はますます増していく。捕食者の心理とはこれなのかも知れない、と頭の隅で思ってローはドフラミンゴの背骨へ吸い付いた。
「ひゃんッ!……ゃ、ぁ……ロー!」
「ドフラミンゴ、もっと、アンタを知りたい」
「ばかか、いい加減に、離れ、んァ!」
 予想よりもはるかに高い感度で啼くドフラミンゴに、もっと、という衝動が溢れてくる。離れろ、という言葉を聞く前に背骨を甘く噛んでみると、ドフラミンゴが喘いでローは笑みをこぼした。この男にどこまで許されるのか、どれだけ暴けるのか、確かめたくてたまらない。
「アンタが好きだ。アンタが欲しい」
……告白ならもっとムードくらい大事にしろ」
「必要ねェ」
「フフ、フッフッフッ!仕方のねェやつだ」
 欲に流されているとわかっていても、身体の奥から湧く劣情は、ドフラミンゴへの思いの丈そのものだった。好きだから何もかも見たいし欲しい。ドフラミンゴという男を、余すことなく堪能して溺れたかった。弾けるように笑ったドフラミンゴが、ローを振り仰ぎ、空色の眸に色を孕ませる。とろりとこぼれ落ちる淫らな気配に喉を鳴らして、ローはドフラミンゴの唇へと喰らいついた。弾力のあるやわらかな唇を味わうごと、熱が上がっていく。下がりそうにない熱さと鎮まることを知らない欲を抱えて、ローはドフラミンゴを暴き続けた。