ぽふむん
2025-10-25 22:55:52
1246文字
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戀の迷宮

#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負

しのぶちゃん鬼化if
「ランタン」「裏庭」

既刊「爪痕を消さないで」の設定を使ってます。
極楽教の裏庭の露天風呂でほっこりしていたら、無惨様のイケズな暇つぶしの被害に会うどしのです

ああ、いい湯だった。
湯船に浮かべた秋バラが良い香りだった。
しのぶの為に集めたバラを、湯船いっぱいに浮かべてあったのにはさすがに面食らった。
この岩風呂だって、結構な広さがあるというのに。
(酒風呂だっていいのですがね)
しのぶはもう人ならざるもの。
風呂に入れられた酒で酔ったり、皮膚が赤くなったりする心配は無いはずだ。
なのに過保護なあの上官であり、保護者である鬼は、心配して絶対に酒風呂にはしない。
(貴方のお気に入りという酒風呂。私も試してみたいものですがねぇ)
そう思いながらも、しのぶは湯上りのほんのり上気した肌に薄化粧を施す。
もはや、人の温かい血潮は流れていない。
あっという間に青白い顔になる。

それでも、せめて

ほんのり薄紅色の頬にしようと、薄化粧だ。
(人だった時はもう少し厚化粧だったのですが)

そう思いながら、鏡に映る化粧の終わった顔を眺め洗い髪に椿油を塗り櫛でとかした。

(誰のためにこんな事してるんでしょうかね)

自嘲げに笑ったその時

───べん───
琵琶の音がどこからともなく聞こえた。
気がついたら、ランタンの立ち並ぶ異空間へと飛ばされていた。

(こ……こは無限城?…………どこ?)

しのぶは極楽教の裏庭に面した座敷で化粧をしていたはず。
お呼びがかかったにしては、無惨どころか、他の鬼の気配もない。

「鳴女さま。ここはどこなのでしょう?私を元いた所にお返しくださいませ」
あの琵琶の音の主は察しがつく。
しのぶは、その上位の鬼に呼びかけた。
───そうしたいのは山々ですが、無惨様の命令ですので───

申し訳なさそうな鳴女の声が脳に響く。

「これ、いわゆる出られない部……
────出られます。ただし……迷宮なだけ────

(はい?)
しのぶは無惨の意図が分からず首を傾げた。

その時、こんな事を命じた張本人。無惨の声がした。

───娘……そこから自力で童磨の元へ戻るが良い───

「あのぉ……それは一体どういうことでしょう」
しのぶは戸惑いながら聞いてみた。

───暇つぶしだ。童磨の困った顔が見たいだけだ───

単なるお遊び

無惨の応えにしのぶは思わずがっくりと膝をついた。
それと同時に、童磨の慌てふためいたような抗議の声が脳に響く。

───無惨様!!おたわむれにも程があります。しのぶちゃんはどこでございますか。無限城は広すぎます。迷子になります───
───ならばお前が迎えに行ってやれ。いつぞやのように───
無惨の含み笑いも聞こえた。

いつぞや?

ああ、あの時だ。

無惨には、鬼となったしのぶの思考、記憶は丸見えだ。
それをダシに遊ばれているんだ。

あの当時は、大して興味がなかったから忘れてしまった……と言うより、あの時の子どもがしのぶだったとはきづいていないのは童磨だけ。
───いつぞや……いつぞや……そんな事より。今行くからねー───

童磨の大音声が脳に響き渡った。