三毛田
2025-10-24 22:16:36
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55 055. わたしの手をとって

55日目
お前を抱きしめたいから

 ああ。ここは何処で、俺は誰なのだ?
 何処だかは分からない。でも、誰かの声が必死に俺の名前らしきものを呼んでいるのだけは、なんとなくわかって。
 そのおかげで、俺は俺なんだと。開拓者で銀河打者だと思い出す。
 何かに包まれ、朧気だった意識が浮上していって。
 手を強く引かれ、急に辺りが眩しくなり。
 目の前には、見慣れた、でも、ちょっと見慣れない顔。
 胸の中が温かくなって、抱きしめたいし、抱きしめられたい。そんな感情が浮かんできて。
 俺を引っ張る手が離れた瞬間、彼に抱きついた。
 地面に足がついたのを確認し、頬を両手で包んでからキス。
 好きだ。
 そんな感情に、胸のうちも脳内も支配されていく。
「こら、穹」
「久しぶりだな、丹恒」
 キスを終え、その後もう一回――さっきよりも強めに――抱きしめ。
「ああ、そうだな」
 まるで壊れ物に触れるかのように、そっと俺を抱きしめてくれた。
 俺はそんなにやわじゃないのに。
 文句を言おうとして、こちらを見下ろしている丹恒の瞳に地合いと一緒に今にも泣きそうなのを堪えているようにも見えて。
 どれくらい。どれくらい、俺は彼と離れていたのだろう。
 体感的には、そんなに時間は経っていないと思っている。でも、丹恒の表情を見るに、そうじゃないということを突きつけられ。
「心配、したよな」
「心配よりも、お前を、喪うかもしれない。そちらの方が、辛かった」
……うん」
「無事に会えて、よかった」
 絞り出すような声。
 もう一度、今度はちょっと強めに抱きしめる。
 互いの温もりを、存在を確かめるように。
「丹恒、大好き」
「俺も、お前が好きだ」
 頭を撫でるついでに、額の上から生えている角に触れれば。
「穹。角に触れる時は、一言欲しい」
「嫌か?」
「嫌というよりは、その……少々、そわそわしてしまう」
 その言葉と同時に、ゆらゆら足共で揺れる影。
「っ」
 腰回りに手を回して見ると、初めて触れる感触。
 後ろに回ると、尾てい骨の辺りに尻尾。
「丹恒」
「な、なんだ?」
「尻尾、舐めていいか?」
「は?」
 わけがわからない。そんな表情を浮かべて。数秒固まったのち、真っ赤になって俺の頭に手刀。
 籠手をしている右手ではなく、素手の左手でやったので愛されてるなぁって。
「ずっと外気にさらされていたものだ。舐めたら汚い。それ以前に、尻尾は舐めるものではない」
「肉厚でぷりぷりで、美味しそうだって思ったんだけど」
「だから」
「飲月の尻尾も美味そうだよな」
「尻尾は食べ物じゃない」