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望月 鏡翠
2025-10-23 00:35:36
946文字
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日課
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#1882 交渉の真似事
#毎日最低800文字のSSを書く
狩人は、矢を番えたままだった。
雛は袖の中で唸り声を上げて、人間の男を威嚇している。
互いに言いたいことがあるなら、直接言ってくれないだろうか。年長者という自覚があるから口には出さなかったが、侘助は呆れながら両者の頑なな態度を見ていた。
言葉が通じるのは人間の男の方だけだから、そちらと会話をするしかない。
人にすれば長い時間であり、長く生きるものにとってはわずかな時間、彼は沈黙した。眉間に皺を寄せ、なんとか言葉を絞り出した。
「俺ぁ、無事に帰りたい。それだけだ」
歪んだ口元にどんな感情が乗っているのか理解できなかったが、彼からようやくまともな言葉が返ってきたのは、喜ばしいことだった。
「なら、互いの目的は同じだ。このまま穏便に済ますことはできないのか?」
「穏便に済ませたいなら、その雛を寄越せ」
「できればしたくない」
「なぜだ」
「殺してしまうだろう」
「
……
そもそもお前、この龍どもなんだ」
それは返答に困る質問だった。
「正直なところ、何でもない。お前と同じくらいの知り合いだ。森を歩いていたら、会った。それから一緒にいる」
男と雛で扱いを変えた理由は一つだけ。彼は切り掛かってきて、侘助を殺そうとした。しかし雛は傷ついて弱っており、捕まえて抑え込める程度の力しか持っていなかったからだ。
その後に懐かれ拒む理由がなかったので、連れて歩くことになった。
「それだけなのに、なぜ助けた」
「かわいそうだろう。怪我をしていた」
聞かれても困るのだ。それほど深い理由などない。
男のことも怪我をしていれば、大丈夫かと一声かけたかもしれないが、きっと矢をいかけてきただろうし、刀で切り掛かってきたことだろう。せめて彼が子供だったら、押さえつけて手当てしたから助けられたかもしれない。
しかしそうではなかったから、侘助は彼の前から逃げた。雛は、助けられたから助けた。それだけの違いだ。
「なら、俺のことも助けてたっていいだろ。困ってるんだよ」
「お前は殺そうとしてくるから、助けようと思えなかった。一応、この子に変わって話ぐらいは聞くが
……
」
どうだろう、と袖を叩くと中で肘を噛まれた。
雛は嫌らしい。
少し我慢してくれと、服の上から優しく撫でた。
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