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望月 鏡翠
2025-10-22 02:17:29
905文字
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日課
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#1880 一射
#毎日最低800文字のSSを書く
手の内を見せない相手が、最も恐ろしい。
角のある男
――
性別はわからないが、便宜上男と呼ぶしかない
――
は、萬木に対してなにもしていなかった。
狩りは観察から始まる。
雛の痕跡と足跡を見つけたあと、程なく一人と一匹を見つけていた。そこから遠巻きに追いかけていたが、どこに向かうのかも何を目的としているのかわからないままだった。
食事をして、夜は眠り、そして夜が明けたらまた出発をする。
その繰り返しだ。
たまに酒のようなものを飲んでいた。
羨ましいと思った。街が恋しくなる。
いつだって狩りから戻って最初の酒を口にするときは、その一杯の旨さのために仕事をしているような気分になる。
彼は雛の餌を手にいれるだけで、食事はとっていなかった。頭の角には、花が咲き雛がそれを齧っているのが見えた。
あの生き物は雑食だったのかと、意外に思った。
ただの旅人のようにゆっくりと森の中を進んでいる。人間でない姿をしているが、彼ができることは人間と変わらないようにみえた。
途中で食事をする必要がある分、萬木の方が不利だった。少し目を離した隙にたびたび遅れをとったが、男の蹄の後は深く幸いにも見失うことはなさそうだった。
龍の死骸から離れると、獣の姿を再び見かけるようになり、食料を得るには困らない。しかし鱗は以前として消えずに顔に張り付いたままだった。鏡を見るたびに、もしかしてと期待し、もしかするとと恐怖する。
どちらにも変化をしていないのを見て、やはりあの雛や男との対決は避けられないのだと思い知る。
そうして萬木は覚悟を決めた。
矢を番える。当てるつもりで放った一射だ。それは意図した通りに、男の足に真っ直ぐに吸い込まれて行った。男は衝撃でよろめき、その場に膝をついた。
頭上の雛が拍子に滑り落ち、柔らかい地面に頭から落ちるのも見えた。
「よし」
小さく声を上げた。
次の矢を構えながら、ゆっくりと近づく。
男は顔をあげ、目が合うとため息をついて、その場に腰を下ろした。
まるで少し休憩しようとでもいうかのようで、足に刺さる矢のことなどまるで頓着していないように見えた。
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