三毛田
2025-10-21 21:38:57
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52 052. 胸がふるえる

52日目
歓喜に震える

 触れ合った唇は、想像よりも柔らかく。
 歓喜に胸が震えて。
 自分の唇に指先でなぞりながら、照れたように俯く姿には別の意味で胸が震える。
「丹恒。もう一回、いいか?」
「お前は、恥ずかしくないのか」
「全然! 何回だって、丹恒とキスがしたい」
……物好きだな」
 少し強気でいけば、仕方ないというように目をつぶって受け入れる態勢に。
 丹恒、ちょっとちょろすぎない?
 俺、心配になるよ。
 まあ、でも。
 こうして無防備に、おねだりを聞いてくれるのは俺が相手だからだと思う。そう信じたい。
 さっきよりも長く、唇をこすり合わせるようにキスをすれば。
「っ」
 突き飛ばされた。
 なんとか踏ん張って様子を確認すれば、真っ赤になって顔を手で覆って。
「丹恒? イテッ」
 声をかけたら、腕をたたかれた。相当恥ずかしかったようだ。
 もしくは、違う感情に支配されて動けなくなっているのかもしれない。
「なんだ、これは……
 指の隙間から、灰緑の瞳がこちらを睨んでくる。
「なにって、キスだよ。キス」
「キス、なのか?」
「キスにも色々種類があるんだってさ。嫌だった?」
 問いかけると、少し考えるように視線があちこちに動き。
「嫌……では、ない」
「そっか」
 今はその返答だけで嬉しい。
 顔を近づけると、肩を震わせ距離を取る。
「もう一回、キスされるって思った?」
「お、前はっ趣味が悪いっ」
 ちょっと赤みが引いたと思ったのだけど、また真っ赤になって。
「丹恒が相手だから、ちょっと意地悪したくなっちゃうだけ」
 頬にキス。
 二の腕を掴まれた。しかも、かなり強い力で。
「お前が落ち着いたら、いっぱいキスしてやるか……ふがっ」
 今度は、鼻を強くつままれた。酷い。
「ふっ」
 嬉しそうに笑ってくれた。ので、また胸が震えた。
 俺、心臓が止まっちゃうのか?
 その前に、星核が暴れ出しそう。でも、暴れちゃったら、列車のみんなに迷惑がかかる。
 我慢しろ、俺!
「丹恒、ギュッとしてもいいか?」
「優しく、してくれ」
「もちろん!」
 そっと彼の背中に腕を回し、抱きしめる。
「ああ……お前の温もりは、心地いいな」
 と、俺の背中に腕を回し。
 押し倒して、気絶するくらいキスしたい。ああ、でも。
 そういえば丹恒って、水中で長時間呼吸を止められるんだったっけ。
 呼吸止め勝負になったら、俺が負けちゃう。
「好き」
……俺も、だ」
「ありがとう」
 たどたどしいけど、丹恒からの好意が伝わってくる。
 ギュッとちょっと強めに抱き着いてきて、肩に額を擦り付けてきた。