moto
2025-10-20 23:52:12
1003文字
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愛がすぎる男(たち)

さまささワンドロワンライお題「秋刀魚」


本日の晩御飯は、秋刀魚の塩焼きをメインに、レンコンのはさみ焼き、しめじとごぼうの炊き込みご飯、かぼちゃの味噌汁というラインナップであった。テーブルを見渡した簓は「秋やねえ」と嬉しさを隠しきれない声を上げた。
「レンコンに何挟まっとるん?」
「鶏のつくねだ。たれは、めんつゆとみりん」
「秋刀魚もあるのにごちそうやなぁ。うまそお〜」
「フン」
 満更でも無い顔で、左馬刻は炊き込みご飯を勢い余って山盛りにしていた。
「いただきまあす!」
 さらに左馬刻は、真ん中に置かれた大皿からレンコンのはさみ焼きを小皿に取り分けてくれる。かぼちゃの味噌汁は甘くて思わずにっこりしてしまう。さて、と秋刀魚に挑もうとしたら、目の前の皿が左馬刻に取り上げられた。
「ん?」
「ちょっと待ってろ」
 そう言って、左馬刻は簓の秋刀魚をほぐし始めた。
 秋刀魚の中心に箸を差し込んで頭から尾に向かって切込みを入れる。上側の身をほぐして骨からはがし、下側も同じようにする。
「えっと、左馬刻?」
 戸惑いながら簓が声をかけると、左馬刻は、秋刀魚の頭側の中骨を箸でつまみ、尾に向かって骨をはずしながら、「お前、昔、魚食うの下手だから、ほぐしてくれたら食うって騒いでただろ」
 だから、今、俺様がほぐしてやる。
 頭と尾だけが残った骨と身が見事に分離した。やり遂げたように、ニヤリと笑う左馬刻を、簓は口を開けて眺める。
 そんなこと、言うた?言うたな?それを覚えてて?ほんまにやってくれるん?魚を俺のためにほぐしてくれるん?
 簓はなんとも言えない胸に広がる甘さを堪能する。これはかぼちゃの味噌汁以上に甘い。これは、この気持ちは、絶対に、なんとしても、伝えなければならない。
左馬刻は、仕上げに小骨も丁寧に取り除いた。ほら、と渡された皿に横たわる骨だけになった秋刀魚とその身は、愛のかたまりである。
「左馬刻、ちょっと立って」
「おう」
 二人立ち上がり、簓は左手を出した。左馬刻はその手を取り握手をする。力強い握手はしばらく続いた。全然足りない。
「そんで、こっち」
 テーブルの横で向かい合い、左馬刻に正面から抱きつく。
「ありがとお。だいすきや」
……おう」
「まだ全然足りひん!俺にはこれしかできひん!」
「これだけじゃねえだろ」
「梨、剥いたる!うさぎにする!」
 宣言する簓に左馬刻は笑って、いっそう強く抱き締めた。