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沙里
2025-10-20 23:48:33
1272文字
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むかしむかしのはなし
アルと2主が新人時代の幻覚の話
自警団に入団したばかりの頃。新人たちで基礎訓練を行っていた。
所属部隊は決まっておらず、どこがいいだのと雑談混じりに話す。それくらいには仲も深まっていた。
(
……
またいないな、あいつ)
そんな中、どうにも影が薄い
……
というか、意図的に気配を消している節があるやつがいる。目を凝らすようにして訓練場を見回すと、少し離れた場所に座り込んでいる姿を見つけた。
それなりに付き合いも出来てきたと思うが、時折気が付くとああして距離を取っている。
別にこっちが気を遣ってやる理由はないし、本人がそうしたいならそれは自由だ。先輩や隊長たちに叱られたとしても、それはあいつの所為だ。
……
と、いうのはわかっているんだが。
(なーんか、気になるんだよな)
気付けば、その姿を探している。
「もうバテたのか?」
座り込んでるそいつに近づいて、俯いている頭にそう問いかける。
「んー
……
そういうわけじゃないけど」
ゆっくりと顔を上げたそいつは、へら、と笑った。
「回復は大事だから」
まだ訓練は続くし。そう言って手足を伸ばして深呼吸をしている。意識は高いらしい。
「アルベルトは余裕そうだな?」
「まーな。これくらいは余裕だろ」
「うーん、俺はそこまでの余裕はないかな
……
」
羨ましいなぁなんて言う顔は、どこか子どもに似ている。正直な話、変なやつだ、といつも思う。
でも、悪いやつじゃない。それに、一緒にいて気楽だというのは、ある。
「そういやお前、第三部隊希望なんだって?」
同じ部隊なら、いいコンビになれるんじゃないかって思ってはいたのだが、風の噂でそんなことを聞いて、らしくもなくガッカリしたものだ。こいつはこうしてへばってはいるが、戦闘技術は高い。てっきり花形部署の第一部隊を希望しているのだと思っていたのだが
……
。
「ああ。面接の時もそう言ってあるから、希望は通るんじゃないかなと思ってるけど」
「そもそも第三部隊自体が人手不足って話じゃなかったか?」
「らしい。やっぱりみんな花形の第一に希望出すみたいだし」
そりゃあそうだろ、と肩を竦める。
正直、勿体ないなと俺は思う。打ち込み練や試合形式での訓練も一緒にやったことはあるが、同期の中でもかなりの実力者だと感じている。リカルド隊長が目を付けているという話を先輩から聞かされたこともあった。本当かどうかは知らないが。
「なんで第三部隊なんだ?」
言ってしまえば地味なところだ。街の依頼も含め、自警団内の雑用を一手に引き受ける部署。そりゃあ大事なことだろうけど、いまいちピンとこないのも、わかってくれるだろうか。
「俺が第三部隊に助けてもらったから、かな」
恩返しってやつだ、と照れたように頬を掻いた。
「アルベルトと一緒なら、楽しそうだとは思うけどさ」
お互い頑張ろうな、と爽やかに言われたなら、そうだなと返すしかないわけで。
こいつにそういう志があるように、俺だって第一部隊を希望する理由がある。
だから、差し出された拳に拳を当てるくらいしかできなかった。
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