つぐころね
2401文字
Public √Eden
 

旧き良きモノも移りゆき変化する


 
 ――服はただの記号。表層に浮き出た『目に見える自我』。
 そう言われ、なるほどなぁ⋯と素直に思ったことを思い出していたら、引き摺られるように、神秘のままで在りたいから服装を変えないと言った彼を思い出して、ふと思った。

 今のボク藍花という姿形は、名もなく姿形も定まらなかった『糸切鋏の付喪神』に名をくれたアノ子の模写をしたのが始まりで。その後、天寿を全うし三途川を渡ってしまったアノ子を忘れたくないが故に模写し続けたものが定着したようなもので。でも今のボクとしては、これで良いと思うし、これが良いと思うのだけれど。そもそもの――付喪神としてのボクとは、どんな姿貌かたちだったのだろう⋯?

 そんな今更すぎる事を考えながら、本体である糸切鋏を大きくし夜夜中よるよなかの月灯りを浴びながら空中散歩をするには、秋の夜は肌寒い気がした。だけれど思考を巡らせすぎて、火照ってきそうな頭には丁度良い気もして。

 (付喪神としての、ボクかぁ⋯)

 見えも触れもしない月明かりを掬いあげ、ひとり思考を揺らす。
 今の好んで着ている和装と洋装を合わせた服は、ボク糸切鋏を使い続けてくれた子らが呉服屋だったことからと⋯そこに大正や明治を生きたアノ子が身につけていたものの名残。それらは、すべからく誰かに繋がる縁故えにしゆえのもので。
 だからいってそれに固執しているわけでもなく、今を生きるボク故に誰かに影響され移ろいゆく好みに日々左右されているわけで。

 それならば顕現しているこの肉体はどうなのだろう?
 ヒトに成りたくて、ヒトで在りたいと願うボクだからこそ、今の姿は、きっと自覚する以上にヒト寄りなのだろう⋯と、思う。だとすれば――付喪神という妖としてのボクならば⋯何かが変わったりするかな?

 ヒトの寝静まる丑三つ時。起きている気配はあるけれど、今の時分はボクら妖ものの領分である深い宵闇。それならばと、目を瞑り、肺いっぱいに指先にまで行き届くように冷え冷えとした月灯りを取り込み――術を使う時のように、体の中に秘すナニカ神秘を満たすように循環させ、それが十二分に行き渡ったと思えた頃。

 にゃあ、といつの間にか顕現していた珠花が何かを知らせるように鳴いて、それにつられて視界を開けば。いつもは集中しないと見えない、ダレかやナニかと繋がる縁の糸が視えていて。いつもよりも、ヒトとしての感覚が希薄な気がする。そう例えば古妖と対峙し、彼方アチラ側に引っ張られているような、そんな気分で。

 もう一度、甘えるように短く鳴いて。肩に足をつき額を擦り寄せてくる珠花のふかふかの頬へと指を伸ばす、と。いつもよりも爪が尖るように伸びているのに気付き。擦り寄る珠花に触れる耳の感触に感じた違和感を確かめる為、彼女がいる方とは逆の耳に触れれば……こう、なんか爪と同じく尖るような形になっている気もして。(なるほど?)と首がこてりと横に傾き、珠花の首元にもふりと埋まる感触を感じながら。形が妖寄りになるというのならば、身に着けているこれも変わるのでは?と思い至る。

 見た目は変わる。服は記号で表層に現れた、目に見える自我ボク自身――のボク、成りたい容頭を過ったのは、積み重ねた記憶に連なる睡蓮の花と、見慣れた竜胆色が身につけている黒と白。(嗚呼、これなら)と、イメージを掴めた気がして、もう一度、目を閉じて、両手を伸ばす。彼がいう神秘、それこそが妖としてのボクならば。目の前に実物がないとしても、着替えなくともカタチは変わる気がする。だって妖は、ソウイウモノだから。

 そうしていれば、ふわりと風ではないナニカで髪が無秩序に浮いたのが、肌で理解わかる。自分の周りを肌を伝い廻る不思議不可思議な力。それを抵抗することなく受け入れていれば、ソレが具現化していくのが分かって――浮いていた髪が重力のままに落ちたのを感じてから瞼を上げれば。そこにあるのは、今までと少し違うカタチをしたボクで。


Illust (C)蓬平・藍花/神崎様/トミーウォーカー

 空気を読み少し離れた場所から見守っていてくれた翼猫が戻ってきた気配に気付き、「似合う?」と珠花に聞いてみれば。機嫌良さげに尻尾を揺らし彼女は「なぁん」と一鳴きして、鼻の頭に接吻と祝福をくれて。一人と一匹で目をあわせ、夜夜中の空の下、月に見守られながら笑いあう。

 ヒトが変化をしながら生きるように、ボクら人外生きていれば良くも悪くも移りゆくのならば――たまには、こういうこともあるのかもなぁ、と思う。まぁ、色々と自分が珍しい分類ではありそうだけれど。それでもこれはこれで悪くない、とそう思った。


~終?~
独り言 頼んでいた全身図記念小噺で御座います。お耳がみょーんと伸びていたので、設定を追加で生やした記念でもありますね! ヒト寄り、妖し寄りは精神的な方でも区別してある部分だったので、それが表面化しただけと思えば、全然ありな気がしたし。可愛いのでOKOKと思った次第。そのうち見た目サイズも変えられるようになるんでないかしら、藍花さんと思わなくもないw

 で、お衣装!
 元々別PBWで活動していた時なアノ子紡さんの覚醒図が陰陽師xスチパンだったので、それを基本に。頼んでみたかった神崎さんで双子くんがお揃いの大正軍服をやっているのをみて、「仲間に入れて~(/ω・\)チラッ」とした結果、こうなりましたw 完成品が届いたら、思ったよりもお揃いいっぱいでテンションだだあがったのはナイショ。 メイちゃん発案の袴の裾は歩く度にお花が零れ落ちる、とかもキチンと描写されていて、もうね!もうね!お忙しいのに有難う御座いました!というしかなくて。神崎さん&お揃い許可くれた双子くん、ありがとうですよーっ



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√Eden 藍花 / 藍苺堂