隣を歩く松本から、珍しく鼻歌がもれてくる。本人は決して口にしないけれど、松本は図体の割に声が高いことを気にしているのを、俺は知っていた。松本は顔も中身も昭和の男なのである。
歌いつけていないのが丸わかりの調子っぱずれな鼻歌に笑いそうになるのをこらえて、俺は淡々と歩き続けた。久しぶりのワンオンワンで汗をかいたから、ふたりとも上着を脱いで、季節外れの半袖姿だ。広々とした公園をぐるりと囲む遊歩道にはジョギングをする人や犬の散歩をする人、自転車の練習をする子ども、色々な人がそれぞれ自分のことに目一杯で、俺たちの格好に気をとめる人はいない。
だから、男二人が手を繋いでいたって、誰も気にしない。
突然手を握った俺に、松本が目を丸くした。
「おい」
「誰も気にしてないって」
もうこれ以上開きそうにない目をさらにまん丸くして、松本があたりを見回した。高級住宅街の中にある広々とした公園では、誰もかれも幸せそうな顔をして歩いている。たまに苦しげな顔をしているのは、ジョギングで大汗をかいている人ばかりだ。
「ここのコート、能代みたいで良かったな。東京にもタダで使えるストリートコートなんてあるんだなぁ」
俺がなんてことない調子でそう言うと、松本はようやく俺の手を握り返した。
「……そうだな。また来よう」
しばらく歩いているうちに、松本の鼻歌は再開した。さっきよりも半音高くなっている。
落ち葉を踏むカサカサという音でリズムをとりながら、ふたり、長く伸びた影を並べて歩いた。
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