shiroyakei
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デート/映影

20251018 第10回オロイフワンライ 『デート』
20250614 第1回オロイフワンライ 『映影』

 様々な映影を見てオロルンは学習した。世の中に出ている映影には時間を忘れて物語にひきずりこまれてしまうような良いものもたくさんあるが、中には時間を持て余してしまうような退屈でつまらないものもあるのだと。
 映影から出る反射する光を受けながら、隣で画面を見る恋人。反射する様々な色が、燃素の間接照明しかついていない暗い部屋も相まってきれいに小麦色に乗る。
普段、オロルンとイファがともに見る映影は多種多様にわたる。アクションだって見るし、刑事ものだって見る。イファは強がっては居るがホラーは少し苦手らしいから、数は少ないが数本。もちろん恋愛ものだって何本か。しかしこの恋愛ものは極めてオロルンにとっては退屈だった。
ウォーベンでは一折、書籍では数行の表現で済むはずなのに、主人公たちに恋のライバルが様々に出てきては、絡んだ糸をもっと別の色で絡めるみたいに難解にする映画だった。それに異様に似たような顔をした登場人物が多すぎて混乱してくる。

 退屈を極めたオロルンは横にいる「おうち映影デート中」のイファの顔を眺める。映影を虚無に見つめるより、よっぽど有意義な時間だとオロルンは思ったのだ。

恋人になる前から映影をともに見る時間はあったので、当初この時間がデート、とはオロルンは思ってはいなかった。
しかし相手は花翼の集の詩的でロマンチストな集落に生まれ育った男だ。付き合ってから週に1度は必ずオロルンのところに1人でやってくる。花翼の集の己の診療所にカクークを留守番させて、だ。
どうしてカクークを留守番させてここに来るんだ? と聞けば、これってデートだろ、と少し照れたようにはにかんでイファは答えた。その時オロルンは恋人がいじらしくて抱きしめてしまった。

オロルンが回想にひたっていると、いつの間か画面の中では、恋人たちが言い争っていた。どうも彼氏の方が彼女とのデートをすっぽかして振られてしまったらしい。

『もうしらない! あなたなんて、仕事と結婚すればいいじゃない!』

「うーん。もし俺がこういわれたら困るな」
 苦笑いするイファの横顔に問いかける。
「イファ、先週のことを思いだしているのか」
「あー……うん。ごめんな」

 先週、というのはイファの休日にふたりでこだまの子に向かった時だ。
 オロルンは黒曜石の老婆から御守りの渡される宝石を右手にいつもつけている。グローブに吊り下げていつも携帯しているものだから、たまに野菜たちの世話をしているとチェーンがちぎれて不便するのだ。先日ちぎれてしまったからその修理に行かなくては、というオロルンにイファは声をかけた。
『じゃあ一緒に行こうぜ、ついでに帰りに飯でも一緒に行こう。』
『デートか?』
『最近それよく聞いてくるなデートだよ、1日休みにするからさ』
『わかった、楽しみにしている』

 と、言ったのにイファはこだまの子に着くなり数人から言い寄られ、あれよあれよと臨時の回診状態になってしまった。そう、ナタ1の竜医のもとにはむこうから仕事が舞い込んでくるのだ。1匹答えるとまた1匹、また1匹。イファは解放されたときにはもうとっぷり日は沈んでいたし、オロルンはチェーンの修理を終わらせてしまっていた。ついでに夕飯時はとうに過ぎていて外食に行ける時間でもなかったのだった。


「すまなかったな、あれは」
「別に謝らなくていい。僕だって君の邪魔はしたくない。でも、体調が心配ではあるな。休日にあんなに仕事を受けていたらダメだろう。みんな急を要する感じではなかったぞ」
返す言葉もないな」
「君には仕事と結婚してほしくはないな。だってぼくがいるだろう。」
 ひょうひょうと映影の台詞を模すオロルンに、イファは何かを突っ込もうとしたが、オロルンが言葉をつづけた。
「君がそこにいたのなら、どんな場所でもそれは立派な「デート」だと思う。僕は」
「その言い回し、どこで覚えてきたんだ………?」
「君だ」
「あ、そう
何かを言いかけたイファの口を、オロルンは柔く食んだ。
「こういうことができるなら、それは恋人同士だし、こういうことが出来る時間は全部『デート』だ。君の仕事にはすり替えられないな」
「っは、違いないな」
 そういうとオロルンはソファーにイファを押し倒した。イファは甘えるようにオロルンの首へと腕を回した。映影はいつの間にかエンドロールだ。オロルンはそれを見ないまま、再生のオフボタンを押すべくリモコンへ手を伸ばした。