かのまる
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伊剣ワンドロワンライ「月白」

事後描写あります。
性別不詳ですが、どちらかと言うと男性寄りの気持ちで書いてます。
いつもよりも短めです。
10/21 加筆修正

「おまえの肌はまるで白磁のようだ」
「急にどうした。ふふ、もう肌が恋しくなったのか。私は構わないぞ」
 乱れた髪を梳っていたセイバーが可笑しそうに微笑む。
 つい先刻までの交わりの名残が気怠くも甘ったるい空気を纏っている。
「それも悪くないが……傷一つない綺麗な背中だと、感心していただけだ」
 頬杖を付いた伊織の爪先が背骨をなぞると、セイバーのきめ細やかな肌がぞわりと泡だち、びくりと身体を震わせた。
 セイバーは伊織に向き直り、抗議するように軽く睨みつける。しかしその顔は耳までほんのり赤く染まっていた。
「目合いの後の言の葉がこれか。なんて無粋な男なんだ。私の背に傷を付けた者はいまだかつて存在しない。……きみならそれくらいは解るだろう?」
 どこか寂しそうに肩を抱くセイバーに、伊織は小さく息を呑む。今際の時まで地に膝をついたことがない彼に尋ねるまでもなかった。
「そうだ、そうだな。無粋な質問だった」

 でも、と続ける代わりに鳥が羽ばたくように大きく腕を広げ、細い身体を力一杯抱き寄せた。
 突然のことに反応が遅れたセイバーの背が竹のようにわずかにしなり、肺から押し出された空気が悩ましい吐息となって漏れ出る。
「では跡を残すことができるのは、俺だけに許された誉れだ」
 伊織は白妙の襟の隙間からわずかに見える鎖骨の下に伊織は口付けた。頭上から小さく悲鳴が上がるのも厭わず、ただ強く吸い上げる。ほんのわずかな時間、薄い皮膚を吸うと満足したように唇を離した。すると、じわじわと血が集まり月白の肌に紅い華を一輪散らした。
……イオリはやっぱり変だ。こんなことに何の意味がある?」
 恥じらいで潤んだ茜色の瞳をじっと見つめると、お詫びと云わんばかりに今度はちゃんと口を擦った。
「なに、少しくらいおまえの肌に俺の色を残してみたかっただけだ。大丈夫、数日で消えるさ」
 セイバーは鬱血した跡にそっと指を這わせると、どこかうっとり目を細めた。
「後にも先にもこの玉体に跡を残すことを許すのはきみだけだぞ。やれやれ、厄介なマスターを持つと苦労する」
「何分、俺は不肖の身でな。寛大なサーヴァントに感謝しかない」

 あっけらかんと云い放ち、伊織が体重をかけるとセイバーの身体は布団に沈んだ。
「む……まだするか」
「気が変わった。それにセイバーも構わないと云っただろう?」
 軽口を叩いたことを思い出したセイバーは、みるみるうちに頬を真っ赤にした。
「云った! 云ったから、きみの好きにしろ!」
 その言の葉に伊織は口元にわずかに笑みを浮かべ、拗ねたようにつんと尖った唇を舐めた。