三毛田
2025-10-18 22:49:32
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49 049. 涙の味がする

49日目
君の頬

 触れた頬はしょっぱい。なんで? と思っていると、驚きに開かれた瞳と視線が絡み合う。
「きゅ、う?」
「ん? 駄目だった?」
「いや。何故、舐めた?」
 俺が首を傾げると丹恒は、はあ。と、大きくため息をついて。
「穹。涙は舐めるものではない」
「でも、丹恒の涙は美味しそうだったから」
「せめて一言断ってくれ」
「断りを入れたら、舐めてもいいのか?」
「駄目だ」
 結局駄目じゃんか。それなら、勝手に舐めた方がいいじゃん。
「綺麗とは言い難いのだから、下手に舐めて感染症にかかったらどうする」
「なら、風呂上がりならいいのか?」
「そういう問題じゃない」
「いてっ」
 デコピンされた。
「何でもかんでも口に入れたがる赤子みたいだな、お前は」
「口には入れてないじゃん。舐めただけ」
「それでも、問題しかない」
 話は平行線。
 何で丹恒の頬を舐めたくなったのか、自分でもわかっていない。
 あくびをして出た涙だったけど、とても美味しそうに見えたのだ。
「うーん……
「今、ろくでもないことを考えているだろう」
「涙を舐めるのが駄目なら、唇を舐めるのは? 痛い痛い痛い痛い!」
 顔を掴まれ、そのまま力を入れられる。
 俺が悲鳴を上げても、丹恒はなかなか放してくれず。
 ようやく彼のひんやりした手が離れたのは、数分後だった。
「誰彼構わず、そういうことを言っているわけではないよな?」
「違うって。丹恒相手だけだ」
「それもそれで問題だが」
 はあ。と、また深い――だけど、さっきよりも重い――ため息。
 それもそれで失礼じゃない?
「恋人や好いた相手と口づけを交わすのならばまだしも、俺たちはただの友人だ。さらに言えば、口づけでするわけではなく、唇を舐めるなど非常識でしかない」
「恋人になれば、キスし放題ってことですか」
「し放題というわけでもない。時と場合によっては、周囲にも迷惑が……穹」
 丹恒の肩を掴むと、咎めるように名前を呼ばれ。
「丹恒先生。人工呼吸の続きをしてください」
「意識はしっかりしているし、心臓の鼓動も正常だ。する必要は……唇を突き出しながら、顔を近づけるな」
 俺が顔を近づけると、グイっと手で押し返されて。
「キスしたい」
「俺はしたくない」
「恋人になってください」
「キスしたいからか?」
「ううん。お前のことが好きだから」
……そう言うことは、先に言うべきだろう。涙を舐める前に」
「ごもっとも」
 正論で返され、ぐうと唸る。と、笑われた。
「丹恒が好き」
「そうか」
「恋人になって欲しい」