かのまる
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伊剣ワンドロワンライ「装い新たに」「遊び足りない」

1.5時間ほどです。
セイバーは性別不詳!
一夜限りの踊り子の幻覚を文字に起こしました。

 伊織は祝祭への参加にあたり、他のサーヴァントと同じ様に衣装を新調する事になった。
 裏地まで豪華な意匠を凝らした外套に、フォーマルなスーツ。さらに胸や腰に革のハーネスベルトを巻きつけられ、身体のラインが強調されあ新しい衣装。
 伊織は最初気恥ずかしさを覚えたのだが、すぐこの「すうつ」なるものが機動性や伸縮性に優れた戦闘服だという事に気が付いた。特に足捌きがとても楽だ。帯が無いのは気になるが、「べると」とやらも謂わば皮の帯だ。いかに素早く抜刀が可能か、戦闘に備えられるかが詰まるところ伊織の関心事の全てだった。

「ふう」
 二日間に渡る祝祭は無事に終わり、伊織もやっと肩の荷が降りた気分だった。
 各々晴れ着姿に身を包んだサーヴァントが煌びやかな会場に花を添えた。
 伊織も枯れ木も山の賑わいと思い参加したつもりだったが、想像以上に己は目立っていたらしく少々困惑した。
 だが、いつも隣にいる相棒の姿が見えない事に一抹の寂しさを覚えたのも事実だった。

 さすがに疲労感を覚えた伊織は打ち上げを丁重に辞退し、長屋を模したマイルームに戻る。
「おかえり、イオリ!!」
 いつでも元気に迎えてくれるセイバーの装いが、今夜は違った。
 軽やかなエメラルドグリーンの布地を何本ものきらきらとしたチェーンが彩る。
 上半身は胸元に大きな紅い宝石が首飾りのように垂れて、耳元にも金色の装飾をあしらった耳飾りが光る。お気に入りの腕輪も今日は何連にも連なる繊細なデザインだ。
 シンプルで短い上衣からは薄いへそがのぞいていた。
 腰に刺繍を施した布を巻きつけ、これもまた翡翠色の涼やかなふわりとしたパンツスタイルだが、膝下がうっすらと透けている。
 額に小さな宝玉のついたヴェールを被り、いつもの三つ編みもゆったりと編み込まれ、小さな鈴のついたリボンで留めていた。
「セイバー……その格好は?」
 呆気に取られた伊織に対して、セイバーは得意げに胸を張った。
「ふふん! きみをびっくりさせてやろうと私も衣を変えてみたのだ。踊り子の衣装だぞ」
 確かに中東の踊り子の様にも見える格好ではある。
「しかし、一体どこで調達してきたのだ? ……あとやけに肌が透けているな」
 セイバーはぶぅと頬を膨らませて、伊織をジト目で見上げた。
「この華麗な衣への感想はそれしか無いのだな! ……これは、試作品をこっそり借りてきたのだ。きっときみが喜ぶだろうと、ミスクレーンやハベトロットが……
 セイバーの言葉にだんだんと言葉尻に元気がなくなっていく。相対して頬に赤みが刺してじわじわと薔薇色に染まる
「やっぱり似合わぬか? こんな格好は初めてだから、きみからはおかしく見えたかな?」
 伊織はセイバーの顔にかかったヴェールを優しく払うと、熱を持った頬に手を添える。
「いや、よく似合いだ。おまえの美しさに気を取られ、気の効いた事が云えず済まないな」
「イオリ……
 伊織の骨ばった大きな手の甲に柔らかい手の平を当てる。
 伊織がかがみ、セイバーは少しだけ背伸びをした。二人の唇が触れ合い、すぐに離れた。
「イオリ、折角だから私の舞を見ると良い! きみだけのステージだ!!」
 セイバーは畳に立つと、すうと息を吸った。
 セイバーの舞は、まるで演舞や奉納の舞の様でありながら、アマノウズメを思わせる原初の踊りの様な激しさを持つ。動くたびしゃらしゃらと装飾品が鳴り、三つ編みは鞭の様にしなり、鈴の音がちりんちりんと鳴る。
 型などは関係ない、心の赴くままに踊るセイバーを伊織は佳い顔をすると微笑ましく思った。
 踊り終えたセイバーが、汗ばんだ額の汗を拭う。
「どうだ、私の踊りは?」
「ああ、とても良かった。次はぜひ界剣も出現させて踊ってくれ」
「き、きみ……それは冗談、だよな?」
 やや引き気味のセイバーに、伊織は鷹揚に頷く。
「冗談だよ。こんな舞が踊れるなんて驚いたよ」
「全〜部アドリブなのだ!! 私に型など無い!!」
 にこっと屈託なく笑ったセイバーを伊織は思わず抱き寄せる。マントの中にすっぽりとセイバーは収まってしまった。
「あわわ、イ、イオリ……!?」
「おまえと『ふぇす』に参加するのは叶わなかったが、俺のためだけに着飾ってくれた上に舞まで……ありがとう」
 このまま伊織のマントに隠されてしまいそうだったが、それも構わないとセイバーは思う。
「このまま、良いだろうか?」
「うぅ、私は嫌と云わぬが……。借り物の衣装だから、汚したりシワにしないと約束したらな」
 分厚いマントに包まれたまま、優しく畳に寝かされる。
「イオリ……布団は……??」
「すまぬ、もう我慢が効かぬ様だ。先ほどの舞も正直妖艶にも見えて、つい昂ってしまった」
 セイバーの口を塞ぐ様に、伊織は舌を口腔内に侵入、蹂躙するかの如く激しい口吸いを繰り返す。
 ようやく唇を離されたセイバーの瞳はとろりと蜂蜜みたいに蕩けていた。
「しょうがないな、イオリは私が側にいなければ」
「ああ、いつでも隣にいてくれ、どうか側に」
 二人の秘めやかな後夜祭は、明け方まで続いた様だ。