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ぽふむん
2025-10-18 22:45:00
1748文字
Public
ワンドロ
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柘植の櫛
#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
「櫛」
氷柱ifのつもり
昔のトラウマをフラッシュバックした童磨さんです。
安楽死を仄めかしてますので閲覧注意。
今更ですが新規さんの為改めて
ろくさんというのは、童磨推し界隈で有名な通称ハ〇信者の捏造名。神山六五郎さんです。
神山という山の麓の5男だったか六男だったか•́ω•̀)?……という辺りで生まれ育ちはお察し。そりゃ入信もするかもなぁ……という感じのネーミングです
優しい月明かりの照らす座敷に、ふわりと飛仙が舞い降りた。
いや、飛仙ではない。
「ん?あれぇ、来たの?やぁ、いい夜だねぇ。月夜に可愛い蝶がやってきた」
一人の青年が、こちらをぐりんと振り返って言った。
白々しいと、蝶と例えられた少女は思う。
「用向きは伝えてあったはずですが?」
少女───しのぶは静かに応えた。
「ああ、ははは。例のものならろくさんに用意させて置いたよ」
そう応えると、童磨はまた正面に向き直り、元の作業を再開した。
月明かりの下、市松人形の髪を
柘植
つげ
の櫛で梳っていたのだ。
いくら美男子とは言え、六尺を優に超える男がお人形遊びとは。
なんと気色悪い光景なんだろう。
童磨は小唄を口ずさみ出した。
昨今流行っていると言う小唄だ
「ええぃ!言いたいことがあるならはっきりいいなさい」
しのぶは思わず怒鳴ってしまう。
これは単なる鼻歌では無い。
遠回しにしのぶをなじっていると察したからだ。
本当に単なる鼻歌で、しのぶの思いすごしかもしれない。
でも、この位の嫌味なことをする男だ 。
そんな妙な自信、確信がある。
「
……
んー、言いたいことかぁ。長くてくだらない昔話なんだけどなぁ」
「許します。言いなさい」
しのぶの許可を得て童磨は珍しく重い口を開いた。
「むかぁしむかし、とっても可愛らしい男の子がいました
……
」
────────────
母親はその子をたいそう慈しんでいたという。
今童磨が人形に対してしているように、その子のかなり癖の強い髪を毎朝
梳った
くしけずった
。
今童磨が使っている柘植の櫛で。
もちろん父親も少年のことを大事に思っていた。
でも、夫婦の関係は冷えていた。
とある信者の介抱に腐心する父。
それを尊いことだと理解しつつも、その信者が若い女であることに、
忸怩
じくじ
たる思いを抱く母。
その二人の間の板挟みで、どうしていいか分からない男の子がいた。
その時その子はわずか三つ。
幼いとはいえ馬鹿では無かった。
経験が足りず、語彙が少ないだけ。
その思いを上手く言葉にできないだけだった。
父親は、命に別状はない。心臓は動いている。生きてはいるがただそれだけ。当世の医学ではどうすることも出来ない女の介抱に腐心していた。
そんな父親の姿を、男の子の母は複雑な心情でみていた。
年頃の女であるだけではない。
ただ単なる延命措置を続けることが本当に正しいのだろうか。
本人を無駄に苦しめるだけではないのだろうか。
だからと言って、自然に命が終わるのなら良いが、作為的に止めてしまうことは殺人だ。
救済ではないのだろう。
その思いの狭間で苦しむ夫を見ているのが辛かった。
無意識に幼い息子にその感情を向けたと言う。
可愛いねぇ
可愛いね
といいながら、髪を梳るふりをして引っ張る時があった。
男の子が痛がると、大袈裟ねぇと母親は笑った。
父親はそれを
見咎
みとが
めて母親を非難した。
言い過ぎなくらいに。
幼児に当たるなと言う当然の非難なのだが言い方が悪かった。
お互い感情がきしんでいた。
狂い始めていた。
男の子はどうしていいのか分からなかった。
「絶望的ににぶかったなぁ」
ただ、二人仲良く笑っていて欲しかった。
それを言えるほど男の子の語彙は成長していなかった。
───────────────
「馬鹿だなぁって思っていた。やめてしまえば良かったのに。母親のあの時の思いが今頃わかったよ」
童磨はぐりんと再び振り返った。
その目は暗く濁っていた。
しのぶは思わず息を飲んだ。
しのぶが今していることは、その昔童磨の父親がしていたことと同じこと。
ただ命がある
生きてはいるが、心臓が動いているだけ。
そんな男の隊士の介抱だ。
回復する見込みはない。
違うのは、しのぶは見切りをつけたことだろう。
その男の尊厳を守って命を
……
「しのぶちゃん
……
それは俺がやるよ。あの男は鬼では無い。
……
これは
救済は
俺の役目だ
……
」
息が詰まる。しのぶは思わず後ずさった。
童磨はいつもの朗らかな笑みに戻ると快活な声で宣った。
「よく頑張ったね。しのぶちゃん」
しのぶは言葉が出なかった。
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