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望月 鏡翠
2025-10-18 19:33:53
885文字
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日課
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#1873 生き残りの雛
#毎日最低800文字のSSを書く
萬木は、社会正義の人でもなければ、自己犠牲の人でもない。自分が龍を退治して、この世の誰が助かり、萬木という優秀な狩人の名前が世間に知らしめられたとしても、その世に自分が生きていられなけば意味はない。
勝利とは、生存とその後の生活が保たれることを前提としたものだ。
強い酒を飲み、思考をぼやかし、現実を一旦目の前から消したかった。
しかし、ここに酒はない。
小刀に映る血に塗れた己の顔の半分を見つめる。それで喉をついて、楽になろうという気にはどうしてもなれなかった。
呪われていても、まだ生きている。呪われた人間であることが露見し、他の狩人に殺されるまでは死んでいない。
呪いに打たれたのだと理解したら、周囲に獣がいない理由も理解できた。圧倒的に強い生き物の呪いに満ちた場所だ。草食獣は愚か、肉食獣も血の臭いに惹かれてくることはなかっただろう。
狩りの直後、弱っていた萬木にとって、それは幸いなことだったが、この場所に留まれない理由を強めていた。
食料を探すためにも、呪いをこれ以上悪化させないためにも、ここからは離れた方がいい。一番近い人里の場所を地図で確かめ、出発を決意し、必要な荷物をまとめた。
その中には、龍の体の一部も混ざっていた。どんなに忌まわしくとも、後ろ盾がないものは何をするにも金がいる。それを見ていて、ふと思った。
あの雛はどうなった。
雛が飛んで逃げようとした。矢を射かけて落ちたはずだ。そのあと生死を確かめていない。気を失ったからだ。
萬木の体が呪いにかけられたのは、あの瞬間からのはずだ。
龍に呪いをかけられて、死後もその呪いが解けていない。絶望の正体はそれだ。しかし、雛が呪いをかけていたら、どうだろう。雛を倒せば呪いが解けるという可能性はまだ残っているのではないか。
生死を確かめるため、萬木は龍の骸がある場所へと急いだ。倒れていた場所は雨で泥がならされてわからない。
命を落とした親龍と、確実に命をとった雛達はそのまま泥に塗れて転がっている。
矢を放った場所を探った。
もう手は震えていなかった。
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