shizuku0797
2025-10-18 20:00:00
9901文字
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地下牢脱出大作戦

ルフィ・ゾロ・サンジ

OPノンカプWebオンリー「新次海2025」展示作品

海軍に捕まってしまったルフィをゾロとサンジが助け出す話。
ウソップとブルックも頑張ります。
ドタバタ脱出劇になりました。明るいバトル系です。
両翼のそれぞれ自分の強みを生かしてピンチを突破するの好きなんですよね。
そして船長はそんな二人に全幅の信頼を寄せているっていう関係性が大好物です。
身動きがとれないルフィを投げ合いながらそれぞれの仕事をするゾロとサンジというシチュエーションが見たかったんです。




両手両足に海楼石の鎖を巻きつけられ、天井から吊るされたルフィは身動きが取れないでいた。
度重なる拷問で体中傷だらけになり、血が滴り落ち、荒く息を吐きながら俯いている。
首から下げていた麦わら帽子は紐が切れてしまい、ルフィを見上げるように足下に転がっている。すぐにでも拾いたいのに体がいうことを効かないのがもどかしくて、ルフィは鎖を解こうと懸命に体を捻るのだが、ジャララと金属音が虚しく響くだけだ。

「ハァハァくそっ

思わずルフィの口から苛立ちの声が漏れる。
するとギィと軋む鉄格子の音ともに、わらわらと海兵たちが牢に流れ込んできた。先頭にはルフィを捕まえた張本人である少将がいて、笑みを浮かべながらルフィを見下ろす。

「あの麦わらも、こうなってしまえばなんてことないな。私に会ったのが運の尽きだったようだ」

「うっせェ、ばーか」

ルフィはそれでも瞳の光は消えることなく、顔を上げると目の前の少将に向けて大きく舌を伸ばす。
ピキッと音がするくらいに青筋を浮かべた少将は、再び棘付きのメリケンを拳につけると勢いよくルフィの頬を殴った。

「ぐあッ!」

ぽたりと頬から血が滴る。

「この状況をまだ理解してないようだ。お前は今から海軍本部に引き渡されるんだ、もう終わりだよ」

「終わらせてたまるか!」

「この迷宮の地下牢にはお前の仲間が来れるわけがないんだ。諦めろ」

「諦めるか!おれの仲間は絶対来る!」

ルフィは目を大きく見開き少将をギリリと睨みつけた。
なぜこの男はこの絶望的な状況下でまだこうして闘志を燃やし続けるのか、なぜ絶望しないのか。どれだけ痛めつけても顔を上げ続けるのか。圧倒的にこちらが勝利を確信している側なのに、なぜか焦燥感が拭えず、苛立ちが募る。
こんなやつは早々に視界から消すしかあるまい。

「貴様の根拠のない自信は聞き飽きた!おい、麦わらを連れ出せ!」

「はっ!」

海兵たちは数人がかりでルフィを掴み、無理矢理体を床に押し付ける。

「こ、の!離せ!」

ルフィは必死に振りは払おうと体を捩らせるが、海楼石が邪魔をして思うように動かない。
大声で叫びたいのに力が入らない。
ギリッとルフィは悔しをさ滲ませて奥歯を噛み締める。

「おれはこんなところ、で!!」

海兵達も今だと言わんばかりに床に擦れるくらいルフィを押しつけて、動きを完全に封じた。
海兵の一人が天井につながっている鎖を外そうと手をかけた――その時。

キンッ

金属音が鳴り響き、鎖は海兵の頭上で斬れた。
そんなつもりはなかったので何事かと目を見開く。しかし、次の瞬間にはルフィを押さえていた海兵たちが何者かに蹴り飛ばされて、ぶわっと爆風と共に四方八方に散らばった。

「な、何事だ!!?」

爆風をかき分けて少将は慌ててその正体を探る。
ルフィはもうすでに胸を撫で下ろしながら嬉しそうに顔を上げた。

そう。姿を現したのは――

「ゾロ!サンジ!!」

麦わらの一味の海賊狩りと黒足。
二人はルフィを守るようにして海兵達の前に立ち、ギロリとにらみを利かせた。

「ウチの船長が世話ンなったみてェだな」

「悪ィが付き合うのはここまでだ」

「な、なぜここに辿り着いた!?」

少将はゾロとサンジを交互に見比べて驚きの声を上げる。
ここは近隣の海軍基地の中でも鉄壁を誇る迷宮の地下牢。地下牢へ辿り着くには、入り組んだ迷路道を通らなければならない。だからここへ辿り着くためには、海兵が厳重に管理しているエレベーターを使う他、確実なルートがない。自力で辿り着くことはほぼ不可能だ。監視カメラもあちらこちらにあるか迷路に迷う不審者はすぐに伝達が入る。
―――そのはずなのに。
なぜ監視の目を逃れてここまで来れたのか?それに何より、単独で行動していた麦わらを捕らえてからまだそれほど時間は経っておらず、任務も極秘だったので、麦わらの一味は捕まったことすらまだ知らないはずだ。

「この迷子ハラマキに聞いてくれ」

「着いたんだから迷子じゃねェだろ」

サンジは疑問符を浮かべまくっている少将の問いの一つに答えるように、くいっと親指をゾロに向けた。

一方でルフィは海楼石の鎖は相変わらずついたままで動けずに横たわったっているのだが、もうサニー号にいるかのように安心しきっていて満面の笑みを浮かべて二人を見る。

「助かったー!よくおれが捕まったってわかったな!」

「そりゃこっちの台詞だ。なんで海軍に捕まってんだよ」

「だってよ、落ちてた美味そうな肉があったら食うだろ?」

「食うなよ!それで眠らされでもしたか」

謎が解けた言わんばりにサンジは大きくため息を吐きながら、そのまま動けないルフィをひょいと持ち上げて右肩に担いだ。
ゾロも「ったく、世話の焼ける船長だ」とため息交じりに吐きながら、ルフィのすぐ近くで転がっていた麦わら帽子を拾うと数回埃を叩き、彼の頭に深く被せた。
ルフィは反省の色を見せる様子はもちろんないが、「ありがとう!」と元気よく二人に礼を言う。

そうこうしている間に騒ぎを聞きつけた海兵たちが次々に牢の中へと入ってきて、3人をぐるりと包囲した。

「へェ、総力戦ってか?」

「くっ、ははははっ!だが好都合だ!ここでお前らも捕らえれば麦わらの一味は一網打尽だ!」

「けっ。誰が誰に捕まるって?」

ゾロは好戦的な炎を瞳に宿しゆらりと2本目を抜くのだが、サンジはルフィを勢いよく振り回しながらゾロの方を向いて待ったをかける。

「バカマリモ!ナミさんが言ってただろ!適当にあしらってとっと逃げるぞ!」

「ンだよ、4位が偉そうに指図すんな」

「ああ?今それ関係ねェ!」

「かかれ!!」

ゾロとサンジが視線は海兵を睨みつけたまま、声はお互いにいがみ合っているのを他所にして、海兵達は少将の号令で一斉に襲いかかってきた。
ゾロとサンジは待ってましたと言わんばかりに、その大群に突っ込んでいく。目指すは正面突破。

「邪魔だァ!」
「どけェ!!」

ゾロは二刀を振り回し、サンジは蹴技を次々に繰り出し、二人は同時に今目の前にいる海兵と、その他もついでに巻き込んで次々に吹き飛ばしていく。そして海兵が囲っていた地下牢を容易く抜け出して、そのまま全速力で通路を駆け抜けていった。

「ちっ。追え!追えェ!」

少将はこちらへ吹き飛ばされてくる海兵たちを叩き落としながら声を荒げる。
一瞬ゾロとサンジの勢いに怯んでいた海兵達も、少将の号令とあればと、なんとか己を奮い立たせて後を追う。ゾロ達が逃げた方角を見ながら少将はまだ余裕がありそうな笑みを浮かべた。

「バカめ。いくらここまで辿り着けても、帰りもそう易々と戻れるわけないだろう」


一方、迷路通路を走り続けているゾロとサンジ。
ルフィを担いだまま先頭を走るサンジは、走りながら子電伝虫に声をかけた。

「おいウソップ、こっちで合ってるか!?」

「大丈夫だ!そのまままっすぐ行って次を右だ!」

「了解!」

「ウソップ!みんなは?」

「今ナミ達が入口で海楼石の鍵を奪ってるはずだ!追手が増える前にお前らちゃんと上がって来いよ!」

「おう!任せとけ!」

「お前が言うな!」

「いいですかゾロさん。右というのは私が今いる方で、私についてきてくださいね」

「うるっせェ!それくらいわかる!」

「あ!ゾロさん違います逆、逆っ!」

サンジの後ろを走っていくゾロは、魂状態のブルックに付き添われながら誘導されていく。

ルフィを救出したと同じタイミングで、この海軍要塞の監視室を制圧したウソップとブルック。ウソップはモニターを見ながらサンジに指示を出し、迷路なんてお構いなしのブルックは難なく魂の状態でサンジ達と合流し、彼らの……否、ゾロの迷子防止サポートに入っていた。

「おいマリモ!はぐれたら置いてくからな!」

「そりゃこっちのセリフだ!」

ムキになったゾロは、そう言うとまるで徒競走をするかのようにサンジの前に走り出る。

「待て待て、お前が先頭走るな!!」

「いたぞ!海賊狩りと黒足だ!!」

もちろん海兵たちの猛追も止まらない。
おまけにエレベーターから続々と援軍が駆けつけてきているようで、その数は増すばかり。
挟み撃ちされるのも時間の問題だ。

「やべェ!ゾロ、サンジ!前からも海兵が大勢来るぞ!」

「そんなもん蹴散らせばいい」

「違ェねェ!」

しかしサンジとゾロは止まらない。
ひたすらに走り続ける二人は、「いたぞー!」と正面から激突してくる海兵たちを次々と蹴り飛ばし、斬り飛ばし、前へ前へと突き進んだ。

「少将!やつら止まりません!」

「止まらないからなんだ!多勢に無勢だ!数で押し切れ!」

後ろから聞こえてくる海兵の泣き言と少将の怒鳴り声。
そんな電伝虫でのやりとりがサンジの耳が掠めた。

「ちっ。まだ増えるのか。厄介だな」

「いっそこの要塞ごと壊しちまえばいいんだよ」

サンジと並んで走るゾロがぼそっと呟く。
そんな簡単に――と思ったのだが、サンジは何やら思いついたらしく、子電伝虫に声をかけた。

「おいウソップ!そっちでエレベーターは制御できねェんだよな?」

「残念だが、こっちには監視モニターしかねえんだ」

「だったら

それからサンジは後ろからついてくる魂状態のブルックに声を投げた。

「おい、ブルック!エレベーターの場所わかるか!?」

「え、サンジさん!?私たちが向かっているのはさっき開けた脱出口では?」

「いいから、案内しろ!」

ウソップとブルックが言う通り、エレベーターは海軍の制御下にあった。
本来であればこの地下牢に来る術はそのエレベーター一カ所しかない。ルフィを救出するにあたり、エレベーターを制圧する案もあったが、時間がかかるし、援軍を呼ばれたら厄介だ。だからゾロ達は別ルートを行こうと、チョッパーとフランキーの力を借りて高速で穴を掘って脱出口を作ったのだ。帰りもその穴を通って帰るが、最善策ではあるのだが……
こういう時のサンジには何か策があることを知っているブルックは、声を上げるサンジにこれ以上異論は唱えず、「こっちです!」と少し後ろへ戻って曲がり角を左に曲がった。

「ちょっとお前、ルフィ持ってろ」

「うお!」

サンジはポイとゾロに向かってルフィを投げた。
あまりにも急な出来事だったのでゾロも慌てて閻魔を納めて、片手でルフィをキャッチして小脇に抱える。

「だ!てめェ!いきなり投げんな!」

「3分稼げ、すぐ戻る」

「ああ?てめェ帰って来れんのか!」

「お前じゃないんだ、当たり前だろ」

そう言うよりも早く、サンジは急いでブルックを追いかけようと再び走り出す。

「頼んだサンジ!ここはゾロに任せとけ!な!ゾロ!」

「あのなあ

ルフィはゾロに抱えられたままサンジに声をかけた。
サンジは振り返らないまま右手をひらひらと軽く振ると、彼も曲がり角を曲がって姿を消した。

入れ代わるようにして、ゾロとルフィの後ろから大勢の海兵が姿を現した。どうやら先陣を走って3人を追いかけていた海兵たちもやっと追いついたようだ。
ゾロは不敵な笑みを浮かべながら一刀を構えなおす。
ルフィはゾロに抱えられたまま彼を見上げた。

「ゾロ、おれ置いて戦ってもいいんだぞ?」

冗談交じりにルフィは声をかける。
それがゾロの闘争心をさらに煽るということをわかっているのでタチが悪い。

「ばーか。これくらいハンデでもなんでもねェよ」

「お前は大人しく抱えられてろ」ゾロはさらに付け足す。
もしも仮にルフィを置いて戦ったとして、その隙に無力化されているルフィが再び捕まってしまった方が厄介だ。であれば、自分の手の届く範囲にいた方がまだ対処もしやすい。
もちろんそんなことを考えずとも、ハナからゾロに置いて戦う選択肢はないのだが。

「3分もしねェうちに終わらせてやるよ!」

「覚悟しろ!ロロノアッ!」

ゾロは一斉にサーベルを振り上げる海兵たちに向かって一刀を振り上げ、力を籠めた。

「一刀流 三百六十煩悩鳳ッ!」

ビュンッと飛ぶ斬撃が一直線に海兵たちを貫いた。
鋭い刃を宿しながら突風が巻き起こり、海兵たちは「ぐあっ!」と一斉に吹き飛んだ。
それでも攻撃をギリギリ逃れた幾人かの海兵は、そのままゾロに向かって突撃してくる。
ガキィンと振り上げられたサーベルを三代鬼徹で受け止めて、相手を弾き返し上段から袈裟斬りを食らわせる。
ゾロの背後にまわって襲いかかってきた相手に対しては、ルフィをぐるんと振り回した。

「ふん!」「うりゃッ!」

振り回されたとなれば、ルフィも負けじと海兵に頭突きを食らわせ、縛られた両脚に力を籠めて蹴飛ばした。

「うはは!楽しいなこれ!」

「喋ってると舌噛む、ぞッ!」

ゾロは三代鬼徹とルフィをそれぞれ振るい次々に海兵をなぎ倒していく。二人ともその表情はとても楽しそうだ。

「少将!あいつらまったく怯みません!」

「慌てるな。ならば作戦Rだ。急げ」

「ハッ!」

ゾロとルフィに怖気づいた海兵がそんなやりとりを子電伝虫で交わす。
その命令はすぐに全海兵に伝達された。
すると、どういうわけか幾ばくかの海兵たちが「ヒィ!もう勘弁してくれ!」と泣き言をわめきながら撤退していく。

「なんだ?泣いて逃げてやんの」

……だと、いいがな」

ゾロは退散してく海兵を怪訝な表情で睨んだのだが、そんな隙は与えさせまいといわんばかりにまた次々に海兵が畳みかけるようにして襲ってきたので、すぐに戦闘を再開した。

*

――ここだな」

ところ変わってサンジは、ブルックに案内されてエレベーター前にたどり着いた。

同時にチンとエレベーターから音が鳴ると、扉が開きぞろぞろと5,6人そこそこの海兵が出てきた。
彼らは予期していなかったといわんばかりに、サンジの姿を捉えて一瞬狼狽える。

「なっ!黒足!?」

「標的発見!直ちに取り押さえろ!」

「悪ィが雑魚に構ってる時間はねェんだ!」

サンジは海兵たちが襲い掛かるよりも早く、敵陣へと全速力で突っ込み、炎を脚に纏わせた。

「悪魔風脚 腹肉シュート!」
「ヴッ!」

正面で激突した一人の腹部を狙い、その後ろにいた何人かも巻き込んで、彼らはそのままエレベーターの扉に叩きつけられた。
さらにタンッとサンジは逆立ちの体勢をとると、両脚を広げて大きく回転し残りの海兵も一気に蹴散らした。

「うわああああ!」

――うっし、こんなもんか」

「さすがサンジさん!」

「あとはこいつをっ!!」

それからサンジは設置されていたエレベーターのスイッチを思いっきり蹴って破壊した。
ボカンッ!と音を立てるとともに、ギギィガコン、と何かが止まる音がする。

「これで援軍はしばらくこねェだろ」

いくら倒してもキリがないと悟ったサンジは、ならば海兵たちがここへ来るための唯一の手段だと豪語していたエレベーターを破壊してしまえばいいと考えた。
恐らく自分たちの騒動でエレベーターの警備は手薄だろうし、鉢合わせるのはせいぜいエレベーターに乗り込んだ海兵くらいだろう。
はたしてその予想は見事に的中。
これでたとえ他に自分たちが知らないゲートがあったとしても、少しは海兵の数も抑えられるだろう。

しかし、なぜかサンジはこの現状に違和感を覚えた。

――にしても、もっとエレベーターから来ると思ったんだがな

チラッと見えたエレベーターの箱の中は決して狭くはない。むしろかなり広かった。
唯一の移動手段というのは伊達ではなく、その気になれば20人以上は乗れるだろう。
それなのに今出てきたのはせいぜい5人程度。
それに、ブルックに案内されてここへ来るまでサンジは海兵に遭遇しなかった。さっきまで挟み撃ちする勢いであんなに人がいたのに、だ。
まるであえて人を減らしているような

「サンジ!大変だ!」

と、そこまでサンジが考えたところ、今度は子電伝虫からウソップの悲鳴が聞こえてきた。

「どうした!?」

「なんでか海軍たちが撤退していく!」

「なんでかって、なんでだよ!?」

「わかんねェ!でもモニターに全然人が映らねえんだ。とにかく早く脱出口まで行ってくれ!」

まさか今さら怖気づいたとでもいうのだろうか?あんなに大勢いたのに?
何か嫌な予感がしたサンジは、とにかくゾロとルフィと合流した方がよさそうだと考え、「わかった」とだけウソップに伝えると再び全速力で来た道を戻るのだった。

*

「あァ?」

ゾロとルフィもまた、違和感に気がついた。
先ほどまであんなに追い払っていた海兵が、今はもう誰もいない。
次から次へと泣き言を喚いては逃走をしていったのだが、ついには人っ子一人いなくなってしまった。

「どうなってんだ?」

「弱ェなーあいつら」

「おい!マリモ!ルフィ!」

すると、そこへ全速力で戻ってきたサンジが合流した。

「てめェが遅いから全員片付けてやった」

「ンなわけあるか!たぶんこれ罠だ。急いで脱出するぞ」

ビー ビー ビー

合流したのも束の間。甲高い警報音が通路に鳴り響く。
何事かと前後をそれぞれ見渡せば、ガシャンガシャンと次々にシャッターが閉まる音が聞こえた。

「なにっ!?」

慌てて進もうとするゾロとサンジだが、時すでに遅く、前後の通路をガシャンと塞がれてしまう。

「おれがやる!」

「うわっと!」

ゾロは素早くルフィをサンジに投げ返した。
サンジは咄嗟にルフィを担ぐようにしてキャッチをする。

「おい!急に投げんじゃねェよ!!」

しかしゾロはサンジ苦情など聞く気はまったくなく、それよりもシャッターを壊そうと三本の刀を構えた。

「煉獄鬼斬りッ!!」

ガイン!しかし、ゾロの技は鈍い音を立ててシャッターに当たるだけでびくともしない。いや、まるでその衝撃を吸収しているかのようだ。
破壊できない苛立ちでゾロは大きく舌打ちをする。

「残念だったな、麦わらの一味」

すると、通路にあの少将の声が響き渡る。

「てめェ!出てこい!」

「敵わない相手にはそれなりの追い詰め方というものがある。私たちが君たちに強さで敵わないのは百も承知だ。――だから、一足先に撤退させてもらったよ。なあに、後でちゃんと迎えにいくさ。その時は監視室にいるお仲間たちにも会わせてやろう」

するとプシューと音を立てて、壁と床の隙間から白い煙が噴き出してきた。

「ん?なんだか眠くふわぁ~、ぐがー」

少し吸っただけで呑気にルフィは大きな欠伸をしたかと思ったら、あっという間に豪快にいびきをかき始めた。催眠ガスだ。
ゾロとサンジは慌てて腕で鼻と口を塞ぐ。吸い続ければ自分たちも眠りに落ちてしまう。

「まずいな、ここにいちゃおれたちも危ねェ」

「やばいのはおれたちだけじゃねェだろ」

「私、ウソップさんと合流してきます!」

先ほど少将は「監視室にいるお仲間たちも」と言っていた。となれば、ルフィ達を閉じ込めた今となっては次に標的にされるのはウソップだ。
ブルックは仲間のピンチに駆けつけるため猛スピードで天井をすり抜けて、上へと昇って行った。
それを見て、ゾロはふと思う。

――要するに、上へ行きゃァいいんだろ?」

要領を得ないゾロの呟きに「あァ?」とサンジは唸るのだが、ゾロが天井を見ているのを見て、「ああ」と察した。
それからゾロと少し距離を取る。

「時間がねェんだ、とっととやれ」

「おれに命令すんな」

「おいウソップ、ちょっとそこから離れてろ」

「え、サンジ、おれ今それどこじゃ

サンジはウソップのSOSを聞かずして通話を切った。
それからゾロは、天井を見上げながら和道一文字を口に咥えなおす。

「三刀流 黒縄・大龍巻ィ!!」

ズババン!!と巨大な竜巻は強烈な勢いで天井を斬り裂いた。
そしてついには地下牢の天井が壊れ、さらに上階の、そのまたさらに上階の天井すらもものすごい勢いで斬り裂いていく。
「なんだ!?」「わあああ!」と遠くではあるが上の方で声が聞こえるが、竜巻の勢いは止まらない。
何層にもなっているこの地下要塞は、天井の板はそこまで厚くなかったようで、あっという間に地上の階まで大きな穴があいた。
しかし、それだけでは終わらない。

ゾロはそのままサンジに向かって走り出す。

「コック!」

「わかってるよ!」

サンジはルフィを放り投げた。「ぶへっ!」とルフィが床に突っ伏して呻き声をあげたのだが、それには気にも留めず、サンジはゾロの方へと走って行き、右脚を上げた。ゾロも跳躍してその足に乗る。

「空車、パワーシュート!!」

サンジはゾロを上階へと続く穴に向かって勢いよく飛ばした。
飛んで行ったゾロが出た先は、ちょうど彼らが閉じ込められた場所の真上にあった監視室。
ゾロが姿を現した時、ウソップとブルックが少将たちと対峙している最中だった。
しかし半数以上の海兵は上から突如上がってきた竜巻に直撃したようで、気を失って倒れている。

「な!まさか!!」

ようやく勝利を確信したはずの少将は、予期せぬゾロの介入に目を見開いた。
しかしそんなこと、ゾロには関係ない。

「千八十煩悩鳳ッ!!」

飛ぶ斬撃が監視室に炸裂する。
攻撃が放たれる瞬間、ウソップとブルックは攻撃の被害に合わないよう急いで伏せた。

「ぎゃああああ!!」

海兵たちは叫び声を上げながら攻撃を喰らい、方々に飛んだ。
もちろん、少将は直撃である。

「くそ……私の、ロック、作戦

声を振り絞って呟いたのも最後に、バタッと少将はそのまま気を失って倒れてしまった。

ゾロはその間にスタっと監視室に着地をし、キンッと三本の刀を納めた。

「数多ければいいってもんじゃねェな」

「お見事」

「ゾロォ~!!ったく、無茶しすぎだ!!」

「仕方ねェだろ、こうするのが一番早かったんだ」

涙目になりながらウソップが訴えていると、ルフィを抱えたサンジが空中歩行で監視室まで上がってきた。

「ちっ、もう終わっちまったのか」

「なんだてめェ、遅かったな」

「ああ!?誰のおかげで飛べたと思ってんだゴラァ!」

「ふわぁ~、ん?終わったか?」

サンジがゾロに食って掛かろうとしたその寸前で、呑気な声が聞こえてきた。
サンジに抱えられたルフィが大きな欠伸をして起きたようだ。

「お前は、寝てたんかい!」

「ん?なんかガス吸ったら眠くなっちまってよく寝たぞ!」

「威張るな!」

「だってお前らが来たら何にも心配いらねェだろ?」

ツッコミを入れまくるウソップに対してルフィは当たり前だと言わんばかりにそういえば、ウソップはそれ以上反論できずに「うっ」と言葉を詰まらせる。それから鼻の下をこすりながら「ま、ま、まあ!全部おれの作戦通りだけどな!」と声高々に宣言して胸を張る。
「うそつけ」と声を揃えていうゾロとサンジもまた、一件落着といわんばかりにひとつ息を吐いた。
そんな若人たちを見て、ブルックはひとつ笑う。

「だが、簡単に捕まんなよ船長。拾い食いなんてもってのほかだ」

「おう!気を付ける!」

と、サンジの忠告に対して元気よく返事をしたが、果たしていうことを聞いてくれるかどうかはだいぶ怪しい。

「とにかくここを出よう。ナミ達と合流するぞ」

なんてゾロがあらためて号令を出して、くるりと踵を返せば「そっちは逆!」とルフィ以外の全員がツッコミをいれるのももはやお約束で。
ルフィは、そんな仲間たちのやり取りを見ながらずっと安堵の表情を浮かべて嬉しそうに笑った。

「よーしじゃあサニー号に帰るぞ!」

「了解!」

サンジに抱えながら号令を出す船長の姿は恰好つかないが、それでもルフィの元気な声に仲間たちは声を揃えて返事をして、海楼石の錠の鍵を奪取したナミ達と合流するのだった。



Fin.