shizuku0797
2025-10-18 20:00:00
9813文字
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クリーチャーレース

フランキー・ブルック

OPノンカプWebオンリー「新次海」展示作品


金欠の麦わらの一味のために、フランキーはブルックと一緒に勝てば賞金がもらえる無法地帯のレースに参加することに。
SWでも大活躍したザーリーダビットソンも登場。
ウソップとジンベエもちょっと出ます。
年長者かつ大人の余裕と茶目っ気がある二人ってとても最強だと思うんです。
鬼ヶ島で一緒にドライブしたり、マムを引いたりした時とかね。
その勢いで書いたらギャグになりました、勢いで書いています。
GOLDの亀レースみたいなテンションでお届けします。



「さー!皆様お待ちかね!本日のレース!まもなくスタートです!」

大歓声に包まれるレース場。
次々にスタートラインに立つ選手は皆、馬や豹、中にはバッタなど、思い思いの生きものに跨ってあるいはマシンに組み込んだ状態で運転席に座って登場した。
その中でもひと際目立つのは最後に登場した真っ赤なバイクいや、ザリガニ。乗っているのは真っ黒なライダースーツを羽織り、サングラスをきらりと輝かせる大男と長身の男――フランキーとブルックだ。

「なんだあいつら!ザリガニだとー!?」

「ぷはー!よくそんなやつで出場しようと思ったな!あいつらに賭ければ大穴狙えるか?」

「やめとけやめとけ、わざわざ金をドブにいや、池に捨てることねェよ、ザリガニだけに!」

「ちげェねー!」

観客席からはそんな野次が聞こえてくるのだが、フランキーとブルックはさすがの年長者といったところか、そんな言葉で動揺するはずもなく。

「おーおー、ブルック、外野がなんか騒いでるぜ」

「ええ、そういう輩は私達の実力を見せつけてやるのが一番ですよ」

「へっ、わかってるじゃねェか」

フランキーはニヤリと笑うとグリップに手をかけて雄叫びのようにぶるるんとエンジン音を高鳴らせ、ブルックもまた後部座席でズレ落ちそうだったサングラスをクイっと上げた。ザリガニの目つきも鋭く光る。


時は半日ほど前に遡る。


いつもの船長の底なしの胃袋に食糧がついに限界を迎え始めたサニー号。
サンジの食糧のやりくりと幾度のつまみ食い犯撃退のおかげで、ギリギリのところで島へと上陸。
しかし、ここ最近航海が長かったものの、敵船との遭遇はほとんどなかったので、お金もナミのへそくり以外は底をつきかけていた。

「いい?この島でなんとかお金を稼いできなさい」とナミから指令が下った男性陣。
しかし、そんなすぐにお金を稼げたら世の中苦労はしないもので。
とりあえず手分けして方法を考えようと町で散り散りになったルフィ達。

そんな中フランキーも一人、何かすぐに銭を稼げる方法はないかと目ぼしいものを探しに町を散策していた。
ルフィとゾロはこういう稼ぎにはまず向いていない。同業者が上陸していれば別だが。サンジはここ最近の食糧状況もあって軍資金を稼ぐよりはまず食糧調達をしてほしい。
チョッパーも薬草がそろそろ切れそうだといっていたので物資調達組に回るだろう。

――となると、この状況でお金を稼ぐために動けそうなのは自分と、ウソップ、ブルック、ジンベエの4人くらい
「ここはスーパーなアニキの出番か」と、気を引締めたところで、路地裏で壁のポスターをじっと見ているブルックを見つけた。
ブルックに何を見ているのか尋ねれば、その視線の先には『出場者大募集!DEAD OR ALIVEクリーチャーレース!優勝金100万ベリー!出場希望者は店内へ』のポスターが。
怪しさ抜群ではあったものの、フランキーはブルックと共に店内へ入り詳しい話を聞くことに。すると、この島には無法地帯とされている区域があり、海賊たちが好き勝手に賭博をしている場所があるのだそう。中でも半年に一度繰り広げられる無法地帯全域を駆け巡るレースが一番盛り上がるとのことで、その開催が今日だという。

「参加するも賭けるも自由!今回の参加条件はマシンに生きものを使うこと。それ以外は改造しても妨害してもなんでもOKさ。どうだ兄ちゃん、お前らも海賊なら自分の運を試してみたくねェか?」

そう店主が煽ってくるものだから、もちろんそれに乗らねば男が廃ると言ったのは果たしてフランキーだったか、ブルックだったか。
勢いのままにレースにエントリーしたフランキーとブルックは、そのままウソップとジンベエを呼び出してさっそく作戦会議とマシンの調整に入ったのだった。


――そして、今に至る。

「大丈夫かァ、二人とも!」

「やるだけのことはやった。あとはわしらは見守るだけじゃ」

客席では祈るように手を組むウソップと、どっしりと構えるジンベエが二人のスタートを今か今かと待っていた。

あいにくレースまで時間がなくサニー号へは戻らずに準備を進めていたので、仲間たちに事情を説明できていない。そのため二人の行く末を見守るのはウソップとジンベエだけだ。電伝虫で知らせようかとウソップがフランキーに相談したが、

「そんな野暮なことしなくてもいいだろ。伝えるのは『優勝』の二文字で十分だ」

と親指を立てて、スタート会場へと去って行ったのはついさきほどのこと。


どんな生きものでもOKということで、フランキーが選んだのはいつぞやも大活躍したザリガニ。
フランキーいわくザリガニがジョイントされたバイクのことを「ザーリーダビットソン」と呼ぶらしい。
ジンベエの協力もあってより粋のいいザリガニと交渉をし、レースに出場を快諾してくれたザリガニは両手両足をフル回転させながらタイヤを回していた。
出場者は乗車経験があるフランキーとブルックだ。

「ブルック!ビビっちゃいねェよな!」

「もちろんです!私たちのハートビートなソウル、見せつけてやりましょう!!」

フランキーはザーリーダビットソンのハンドル部分にあるグリップをぶるんぶるんと勢いよく回す。
グリップを回す度に聞こえてくるエンジン音はフランキーの遊び心だろう。ザーリーダビットソンの真っ赤なボディには、ザリガニなのに牛の頭をヘッドにつけていてワイルド感も忘れない。運転席の背もたれにはたくましい牛の骨がついているのもポイントが高い。「私とお揃いですね」とブルックが気に入っていただけのことはある。
スタート前ではあるがザリガニも何やら意気込んでいるらしく、ギロリと目を鋭く光らせてこの先の一点を見つめていた。

「おいおい、なんだよザリガニかよ!」

「そんなちんけな甲殻類で勝てると思ってるのか」

そんな二人を見下ろすように間を挟むのは、巨大なカエルの背に乗る二人組の男と、豹に自分達を載せたカゴを引かせている男たち。いずれも優勝候補と言われている選手らしい。

彼らはフランキーたちを見下ろしながら下品の笑いを浮かべて煽るのだが、あいにくそんな野次を聞き入れるほど二人は若くはないので、

「おいブルック、なんか言ったか?」

「いいえ、ガイコツの私には耳がないので、何も聞こえません!」

まったく聞く耳をもたない。
これで戦意が喪失されればといいのにと狙っていた彼らも、期待外れだと「けっ」と悪態をついた。

「さーさースタートまで10秒前!」

と、レースの実況者が会場内に声を轟かせる。
スタート地点に設置された信号機が、いよいよ赤く点灯し始めた。

「3!」

「アウ!!ブルックしっかり掴まっとけよ!!」

「2!」

「ええ、よろしくお願いします!」

「1!」

ブルックは牛の骨の背もたれをギュッと握った。フランキーはもう一度グリップをぐるんと回す。ザーリーダビットソンはそれに合わせて、前足後ろ足を勢いよく滑らせた。

「スタートォ!!」

合図とともに信号が青く点滅する。
選手たちが一斉に走り始めた。

「行くぜェ!!」

フランキーの雄叫びがエンジン音と共に轟いた。

「いけー!フランキー!ブルック!」

観客席で興奮気味のウソップは声を上げる。
しかし、隣で観戦しているジンベエは「むむ」と小さく唸った。

「ちとまずそうじゃのう

「なにが」と、ウソップが聞く前に「あーーーっと!」とスタート早々実況者の叫び声がスピーカーから響き渡る。

慌ててコース場に視線を戻せば、スタート地点が真っ黒い海と化していた。

「なんだ!?」「くっそー!どうなってるんだ!」「止まらねェ!!」

そんな悲鳴があちらこちらから聞こえてきて、選手が次々にキュルキュルと音を立ててスピンしている。

「どうなってんだ!?」

一体スタートの瞬間に何があったのか?ウソップが先行で走っている選手陣をよくよく見ると、その最後尾でカエルに乗っていた男の一人が後ろで何かを持っていた。大きなドラム缶だ。

「船長!こんなもんですか!」

「ああ上出来だ!こんだけオイル撒いときゃ、後ろのやつらは追ってこれねェだろ!」

これも作戦のうちとニヤニヤと笑う男たちはそのままドラム缶も投げ捨てて、カエルはものすごい勢いでぴょんぴょん、ドシンドシンと地面を揺らしながら走って行く。

「あいつら!」

「さすが無法地帯のレース。なんでもありって話じゃな」

「フランキーたちは!?」

ウソップとジンベエは急いでザーリーダビットソンを探す。
先ほどの先頭を走る選手陣にもいなければ、黒いオイルの海で慌てふためく選手の中にもいない。

なんと、真っ赤なバイクはまだ、一歩も動かずスタート地点にいた。

――ンなことだろうと思ったぜ。いくぞブルック、しっかり捕まってろ!」

「はい!!」

スタート地点で確実に誰かが何かを仕掛けてくる。
そう睨んだフランキーは、スタートするその瞬間、アクセルを踏まなかった。なんなら今でもグリップを回してザリガニのやる気と共に、バイクを吹かし続けているが、それはあくまでもフェイク。選手たちが前のめりでいる状況でフランキーも「やってやるぜェ!」とまわりを煽りつつ、冷静に作戦を練っていた。そうして状況分析ができたところで、フランキーは改めてアクセルを踏む。

目の前に広がるのはオイルの海。

しかし、彼らにとってそんなものは大した問題ではない。

「フルパワーで行くぜェ!!」

ブオン!とスピードが一気に加速した。
息をするのも忘れてしまいそうになるほどのフルスピードに、興奮と驚きでブルックは「ヨホーーーーー!!」と笑い声とも叫び声ともとれる声を響かせる。
オイルの海に飛び込む寸前。フランキーはグッとハンドルを手前に寄せるとザーリーダビットソンのフロントタイヤが勢いよく浮き、ウィリー走行の体勢となった。そして、手前でオイルまみれで横転しているヒッコシクラブほどある大きなカニの甲羅を踏み台にして、華麗に飛んだ。

そう、それはまるで獲れたてのエビのごとく、勢いよく――ザリガニが、飛んだ。

「な!?」

あまりにも華麗なジャンプに、観客も、横転してしまった選手も、息を呑む。
その勢いは凄まじく、コースをショートカットしてカエルに乗っていた選手すらも飛び越える。

だからブルックが一瞬抜刀したのにも彼らは気づかない。

ドシン!

ザーリーダビットソンはカエルの前方に着地した。

「ニイちゃん達!おれたちに見惚れてるとこ悪ィが気をつけな!」

「へ?」

「あ、そこ凍ってますよ」

そう言われて二人が視線を落とせば、いつの間にかツルツルな氷が一面に張られていた。
もちろんスタッドレスタイヤでもなければ、華麗なウィリーをする技術もない彼らは――いや、カエルは簡単にツルツルと滑り出してしまう。いくら体がヌメヌメしていても、氷のツルツルにはカエルも敵わないようで。

「わ!うわああああ!!」

ドオン!!と男達が乗っていたカエルはあらぬ方向に進んでしまい、遠くでものすごい勢いと共にカエルが壁に激突。乗っていた彼らはその衝撃でカエルから弾き飛ばされて、会場の遥か下にある池にぽちゃんと落ちた。

「あと何組くらいですかね」

「さあな。だがこいつァやればできるやつだ!スーパーにぶっちぎってやるぜ!!」

「ヨホホ!ザリガニちゃん頼もしいですねー!」

「だからザーリーダビットソンだって前から言ってるだろ!」

「そうでした!じゃあ私が骨の髄まで元気になる一曲を歌いますね」

「アウ!景気づけに頼むぜ!」

そうしてザーリーダビットソンはスタート地点の会場から抜け出した。

「頼むぞー、フランキー!ブルック!」

ウソップはハラハラとしながら祈るように手を組んで、彼らの行方を映像電伝虫が映し出すモニターから見守る。
ジンベエはウソップとは反対に、変わらず腕を組みながらどっしりと構えていた。

「大丈夫じゃ。あの二人ならすぐに戻ってくるじゃろうて」

*

さて、スタート地点を出たザーリーダビットソンは、他の選手にすぐに追いつき一進一退のデッドヒートを繰り広げ続けていた。それでもコース自体はそれほど長くないので、一瞬の隙が命取りになる。

「くそっ!ザリガニのくせになんであんなスピード出るんだよ!」

いくら馬の手綱を取ろうが、何頭もの牛を引いていようが、かつてないほどのザリガニのやる気と、フランキーの改造技術には敵わない。
さらに、ブルックが奏でるギターの演奏は選手たちを夢現の世界へと誘い、惑わせていった。

そうしてコースの中間くらいに差し掛かった頃。彼らはS字が続く崖のコースへと突入した。
目の前にはスタート時に煽ってきた豹に乗った男たちの姿が見えた。

「お頭!あいつらこんなところまで来ましたぜ!」

「何ィ!?なかなかやるじゃねェか!もっとスピード上げろ!」

「へい!」

バシンと男は豹を鞭で叩く、「ガァウゥ!」と豹は唸り声を上げながらその足をさらに速めた。
若干豹の息が荒くなっているのに彼は気がつかない。

「フランキーさん!」

「任せろ!こいつのスピードに振り落とされるなよ!」

一方のザーリーダビットソンも、さらにフルパワーと言わんばかりにグリップをブルンブルンと回す。
ザリガニも鼻息を荒くしながら、炎が出るんじゃないかと思うほどのフルスピードでひたすら足を回した。

「私がアシストします!」

ジャーン!と弾くブルックの魂の籠った音楽は、ザリガニのハートビートをさらに速めていく。
そしてついに豹とザリガニが、並んだ。奇跡的な瞬間だ。

「よくおれたちにたどり着いたな!褒めてやるぜ」

「お前らなんざ通過点なんだよ!!」

「ふん!そんなこと言ってられるのも今のうちだぜ、前を見な!」

「な!」

コースの先を見れば、徐々に迫りくる90度に綺麗に曲がった直角カーブ。
このスピードのまま果たして曲がり切れるのか

「ちっ!」

フランキーは舌打ちをすると、グッとブレーキレバー引いてハンドルをぎゅるんと曲げ、ドリフトさせる。ザリガニはぎゅと倒れ、地面と平行になるギリギリのところで体勢をキープした。
あまりにも地面との距離が近くなるフランキーのハンドル技術にブルックは喜んだ。

「ヨホー!すごいですねフランキーさん!」

「ブルックちょっと黙ってろ!気ィ散る!」

フランキーは必死にギリギリまで体を倒す。しかし、なかなかボディは90度に曲がり切らない。このままではぶつかってしまう。

一方の豹に乗っている男たちはというと、

「おら!曲がれ!」

何度も何度も豹に鞭を打ち、力づくでカーブを曲がろうとしている。

「ガウァゥ!」

豹も鞭で打たれすぎて疲弊が募っているのか、段々とスピードが落ちてきて、曲がろうにも曲がるほどの脚力が今はないようだ。

「くそ、あいつら

そんな豹の姿がチラリと視界に入ったフランキーは何かを閃く。
それからドリフトを止めて、ボディをぐわんと起き上がらせた。

「ブルック!ちょっと前代われ!」

「え!私がですか!?」

「そのまま曲がり切らなくてもいいから走れ!崖に激突しても構わねェ!!」

「えええー!?」

「時間がねェんだ!」

そういうよりも早く、フランキーはブルックを掴んで自分と前後を入れ替える。
ブルックも代わってしまったからには「ザリガニさん、ちょっと失礼しますね」と、ぐいんとフランキーのようにハンドルを切った。

しかし、もちろんこのままではカーブが曲がりきれるはずもない。

それでもブルックはフランキーの言葉を信じて、懸命にハンドルを曲げ続けた。フランキーは再度サングラスをガチャリと上げ直すと左手を掲げる。
曲がり切れないのであれば、無理矢理曲げればいい。

「風来砲!!」
ズドォォン!!

風圧が一気に弾かれて爆風が巻き起こる。
再びザリガニが、宙を舞った。曲がり切れない分の角度を補うようにして飛んだおかげで崖に激突することなく、角度を見事90度に変えて直角に曲がった。

「何ィ!?」

そして、その風圧は豹に乗っていた男達にももちろん影響した。
体勢が低かった豹の上を通り越して、立ち上がりながら鞭を打ち続けていた男達に弾かれた風圧は直撃する。彼らにそんな風圧に耐えきれる術はもちろん持ち合わせておらず、男達はぶおんとそのままどこか遠くへ飛んでいってしまった。
残ったのは息切れをしている豹だけで、豹は息を整えながら飛んで行った男たちの方を少し見た後、フランキーをチラッと見た。
フランキーは黙ったままグーサインを豹に送る。

「ガウッ!」

これに心打たれた豹もまた、満面の笑みを溢しながら元気にひとつ吠えるのだった。

*

さて、爆風に乗ったザーリーダビットソンは、そのままS字コースすらもショートカットすることができ、最終コースへと突入した。
飛んでいる間にフランキーは「ナイスハンドル捌きだったぜ!」とブルックを称えながら素早く席を交代する。

最終コースはもう何の障害もない一直線のトンネル。
トンネルの向こうからわずかに見える光が、恐らくスタート地点でもあった会場だ。

そして、最後にザーリーダビットソンの前に立ちはだかったのは、同じようにバイクとして超高速回転で足を動かしている、バッタだ。
シンプルなそのボディは無駄がなく、シンプルスピードを追い求めた美しさがあった。その完成度はフランキーのザーリーダビットソンに引けを取らない。

「君たちが私のライバルというわけだな」

最後にバッタとザリガニが、並んだ。

バッタに乗るのはフランキーたちと同じように革で出来た真っ黒なライダースーツを纏い、全身を覆うヘルメットをかぶった一人の男。
ヘルメットの頭部にはバッタのような触角が生えていて、マスクの部分もバッタのようなデザインを施しているのは、きっと彼の遊び心だろう。

「オウオウ兄ちゃん、イカしたライダー姿じゃねェの!」

「ははっ、君たちもだよ。この直線レース。シンプルにスピード対決といこうじゃないか」

「乗った!しっかり捕まってろよブルックー!!」

「ええ!男と男の勝負、見届けさせていただきます!」

並走しながらバッタの男は静かに言う。
ここからは小細工もギミックも一切ない、シンプルな己の技術と、バイクの性能を最大限にまで引き出したテクニック勝負。
勝つか、負けるかの一騎打ち。
フランキーのグリップを握る手も次第に強くなる。
その強さは、燃え上がる魂は、ザリガニにもしかと伝わった。

ここで力尽きるわけにはいかない。ザリガニは先ほどの幾度かのショートカットで温存できた体力を最後の最後にフルスロットルで解放した。
一方のバッタも、ここまで先頭を走り続けていた意地を見せて最後の追い込みをかける。
赤と緑の生きものたちが流星のごとくトンネルを走り抜ける。

「いっけェェェザーリーダビットソン!!!」
「貫け!バッタークルーザー!!!」

二人の男達もまた、魂の叫びがぶつかり合った。
その高揚感に充てられたブルックは堪らず「ヨホ」と小さく笑った。なんて素敵な戦いを間近で見せてもらえているのだろうかという感謝も込めて。

そして二匹は同時にトンネルを抜ける。
目の前に広がるのはスタート地点の会場。
スタッフの迅速な対応のおかげでスタート地点にオイルはもうない。

あるのはゴールテープのみ。

「ジンベエ!フランキーとブルックが帰ってきた!!」

「うむ、なにやら熱い戦いじゃのう!」

「うおー!デッドヒートだ!!」

「いけー!バッタもザリガニも負けんな!!」

「そのま刺せー!!!」

もう会場ではスタート時のような野次は飛んでいなかった。
リタイアした選手もゴール地点のサイドにて、声を上げて声援を送っている。
モニター越しで見ていた彼らのハンドル捌き、ピンチをチャンスに変える切り返し方に観客は次々と胸を打たれ、いつしか会場は誰もが息を呑み、手に汗握るレースに釘付けになっていた。


ゴールはもう、目の前だ。


「うおおおおおおお!!!」


二人の男達と二匹の生きものたちの魂が激しくぶつかる。


そして、彼らはゴールテープを切った、ほぼ同時に。



はたして結果は―――――



「な、なんと!優勝はザーリーダビットソンだあああああ!!」



ゴールする瞬間の静寂から一変。ワアッと歓声が一気に沸き上がる。

バッタとザリガニのゴールはほぼ同時だった。
ただ、ザーリーダビットソンのワイルドな牛の角が、わずかに先にゴールテープを切ったのだ。

会場からははち切れんばかりの歓声と拍手に溢れた。
紙吹雪が盛大に舞い上がる。

「よっしゃー!!フランキー!ブルックー!!ザーリーダビットソンー!!お前ら最高だぜ!!」

「わっはっはっは!まったくいいレースじゃった!」

観客席にいたウソップとジンベエも大きく手を叩いて二人と一匹を称えた。

キキィと強くブレーキを引いて90度に旋回させながらフランキーはザーリーダビットソンを止めた。

「やりましたね!フランキーさん!」

「おうよ!!お前ェのおかげだ!!」

それからフランキーはザーリーダビットソンから下りて、今回のMVPでもあるザリガニを称え、優しく掌で頭を撫でた。
感動のあまり目を潤ませていたザリガニもついに我慢できなくなったのか、ドバっと大量の涙を流しながらそのハサミでフランキーにしがみついた。
「おい、やめろって痛ェだろ!」と笑いながら言うフランキーの声色はとても優しい。

そんなフランキーたちにゆっくり近づいてきたのは、最後にデッドヒートを繰り広げたバッタと、バッタに乗っていたライダースーツの男。
彼はヘルメットをつけたまま熱い拍手を送り、フランキーと向かい合った。

「こんなに心臓が高鳴ったレースは久しぶりだったよ、ありがとう。とてもいい走りだった」

「へへ、お前ェ達もなかなかにイカした走りだったぜ」

「ええ!私最後ずっと心臓が高鳴ってました!ガイコツだから心臓ないんですけど」

そして3人は固い握手をその場で交わす。
それを見て、多くの観客と選手たちは感動のあまり大粒の涙を流していたそうだ。



「優勝賞金100万ベリーの贈呈です!」

ほどなくして開かれた表彰式で、見事フランキーとブルックは賞金の100万ベリーを手にした。
表彰式後、選手たちが次々と「おめでとう!」「ザリガニの根性すごかったぜ!」「いいもん見た、本当にいいもん見た」とフランキーとブルックを称えに駆け寄ってきた。

興奮はいまだ醒めることはない。

こうしてライバルたちと熱い戦いを繰り広げたことで、感極まったフランキーの目はとてつもなく潤んだのだが、涙は見せまいとサングラスを少し上げてグッと涙を拭う。
そして声高々に叫んだ。

「よっしゃー!今日はお前ェらと朝まで飲み明かそうぜ!!」

「え!?いいのか!?」

「あたり前ェよ!この賞金はお前ェらとの戦いの勲章だ!!」

「うおー!!アニキー!!!」

「演奏なら私にお任せください!」

「うおー!ソウルキングー!!」

「おー!いいぞー!二人ともー!!」

ん?それでええのか?」

なんて大興奮してそのまま選手たちとウソップ、ジンベエ、一部の熱狂的な観客たちを巻き込んで、その日の夜は街で盛大にお疲れパーティーが開かれた。
その資金は太っ腹にも優勝賞金の100万ベリーで賄われ「宵越しの金は持たねェんだ!」とフランキーは潔く最後まで使い切ったものだから、翌朝になって4人はナミにとんでもなく怒られたのは言うまでもない。



Fin.