2025-10-18 16:33:09
1697文字
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きっといつまでも

こんな感じ。
出来上がってるライシュロ+カブです。おこトリはいつも仲良し。


「全く、もう」
 彼は机の近くに立って、友人が忙しなく仕事をしているのを見ていた。手を止める事はしないが、口が動いている。多くは、主君であり友人でもある男の愚痴である。頼まれた資料を置いてそのまま出て行っても良かったのが、何となくそれも出来ずにただそこに立っていた。いたたまれずに何か手伝う事は、と言うと、じゃあこれをそこに番号通り並べて置いてくれと言われたので今はそうしている。
 話の内容は、以前にも聞いたような事だ。食中毒の危険がありそうなものを、興味本位で確認もせずに食べたとか。あの男のやりそうな事だ。そういう事はやめて欲しいと、再三に渡って言っているのだろうが、今でも時折そんな事があるらしい。勝手に城を抜け出す、というのも以前はあったらしいが、最近は黙って執務室から消え中庭でうたた寝する程度だと聞いた。それでも周囲に気を揉ませる事は間違いない。
「まぁ、あれのやる事だから……
 と、彼はつい相槌を入れた。反省していない訳でもないのだろうし、あまり真剣に捉える事なく終わらせた方がと思ったのだが、そのせいか矛先がこちらを向いてしまう。
「大体あなたも、ライオスを甘やかしすぎでは?」
「は……?」
 何を言い出すのかと彼は宰相補佐官の机に向き直った。あの男を無暗に甘やかした記憶は毛頭ないし、欲求もない。一体彼の何処がそう見えたと言うのだろうか。
「俺がいつあいつを甘やかした」
「いつ? 近々ならそうですね、前回こちらに来た時です。もう少し居て欲しいって我儘言われて、帰国を一日伸ばしたでしょう」
「あ、あれは……
 確かに、せがまれてついそんな事もしたが、たった一日の事だ。こちらに来られる機会はそう多くないのだし、一日くらい、正確にはもう一晩程度ならと仕方なく伸ばしたのだった。
「そのくらいの事で……
「まだ全然ありますよ。その時の二日目だったか三日目だったか」
「?」
 彼が今度こそ何の話か分からず目を細めると、友人は冷めた視線を投げ返す。
「本人から聞きましたけど、人目がないのを良い事に執務室でイチャイチャしてましたね?」
……何の話だ」
「とぼけても無駄です! 休憩はともかく膝枕までしてやる必要ないでしょう!!」
「いっ……
 まさかそれを、自慢げに吹聴した訳ではあるまいなと、彼が耳まで真っ赤になる。
「自分から喋りはしませんでしたが、あの後妙~に幸せそうな顔をしてたのでちょっとつついたら。まぁ簡単に口を滑らせてくれましたよ。まさかとは思いますけど、それ以上淫らな事に及んだりしてないでしょうね、真昼間から」
「するか! 大体ライオスも五分でいいからとか言っ……いや……しかし……
「やっぱり」
 盛大な溜息と共に肩を竦める青年を見て、彼も長い溜息を吐いた。事実は事実だがしかし、甘やかすという点では自覚がなかったのも確かだ。何だかんだ言っても、王の責務がその肩に重く圧し掛かっている事は解っている。自分はたまにしかここを訪れる事は出来ないのだし、ほんの小さな願い事くらいなら聞き届けてやっても、と思っていた。ただそれだけだ。
「だからと言って甘やかしてる訳では……
……まぁこっちの話と違って、ダメだからやめろとか言うつもりもありませんけど。結局なんていうか、そういう人なんですよあの人」
 仕方のない人、と有能な右腕はしみじみ呟く。
 あの金色の目の奥に、本人なりの真剣さや根の善良さが宿っていると解っていれば、腹は立っても何故だか許して受け入れてしまいたくなる。次も力を貸してやっていいと、思ってしまう。王は自分など玉座に座る器ではないと言った事もあるが、それこそが、為政者に向いている所以と言ってもいいだろう。宰相補佐官はそう思っている。
「一生振り回されるかもしれませんね。……ね、あなたも」
……っ」
 きっと死ぬまで縁は切れないだろうと言われたようで、彼は頭を抱えた。
 ちなみに膝枕の話は五分どころではなかったし、彼が抵抗しなくば本当にあと一歩で淫らな所まで及びそうになったが、その話は口が裂けても言うまい。