望月 鏡翠
2025-10-17 23:18:20
1274文字
Public 日課
 

#1872 末代

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 実際のところ街に戻ったところで、この身に受けた呪いを解決できる証はなかった。萬木の生業は妖怪と近いが、それでも呪いを解決することを生業としたものには出会ったことがない。
 人の精神や肉体に影響を及ぼす妖怪は多い。大抵は、元となる妖怪を殺せば解決する。
 だからそれはむしろ萬木の領分だったのだ。
 では、呪いをかけてきた妖怪を殺しても解決しなかった場合はどうすればいいのか。そうなってしまったものたちの末路は哀れなものだ。
 神や仏に縋って、解決したという話は聞かなかった。当たり前だ。彼らは人の信仰とは別の断りで生きている。
 呪い体や精神をに蝕まれることに耐えきれず、長く生きたという話は聞かなかった。
 萬木の生業では、もっと差し迫った問題があった。
異形の特徴を体に宿したものが、人であることを証明することは難しい。
 人に化ける妖もいる。人でない特徴を見つけ出し、敵となるものを見つけ出す。それが優秀な狩人だ。
 だから仲間たちがこの顔面に生じた君の悪い鱗をどのような見るのかもわかっていた。
 取り憑かれたか、あるいは遺体に乗り移ったか。
 いずれにせよ、それはもう人としては扱われない。討伐すべき異形だ。
 狩人が顔を隠したまま生きていくことができるだろうか。
 無理に決まっている。
 山中にいるときはともかく、とうに怪我も治ったであろう時間を経ても顔を隠していれば怪しまれる。
 見目の悪い怪我があるなど、言い訳にもならない。
 女子供や他の仕事についているのならともかく、狩人という生業でそれはあり得ない。疑われるとわかっているからだ。
 萬木は、組織に所属しているわけではないから、しばらくは人目を避けても、生きて行けるだろう。
 しかし、骸拾いや、研師や、仲買といった狩人がどんな生業なのかを知るものと接するほどに、露見しやすくなる。
 龍を倒してその功績を金に変えて、狩人を止めるとて、彼らの手を一度も借りずにいることなどできるはずがない。それに龍という存在は、きっと人の注目を集めすぎる、
 問題が解決するまで、信用できるものに匿ってもらうか。
 それも無理だ。
 萬木の信用というのはそういうときに、情に流されず正しい答えを出してくれる相手にこそ向けられるものだ。
 信頼できるものに赤したのだとましたら、ひとまずは解決の手段を探してくれるかもしれないが、呪われた者が人里に留まることは許容しない。
しかし萬木であればきっと、下手に言葉を交わして懐柔される前に、相手を殺すだろう。
 だからきっと相手もそうする。
 独力で対処できないことに直面した時点で、一人で生きる狩人は死んだも同じ。
 そうして力のみを頼って生きていたのだから、困り果てたときに受け止めてくれる場所など、用意されているはずもない。
 それはわかっている。わかっているが、認められるはずがなかった。それは龍に敗北することを意味している。
 今回の狩りは相打ちで終わったということだ。
 雨に打たれたときよりも、ずっと体が冷える結論だった。