三毛田
2025-10-17 22:08:53
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48 048. ぎゅっと心臓を掴まれた

48日目
掴まれ、恋に落ちる

 かけなくてはいけない、かけたい言葉を上手く見つけられず。
 丹恒からの問いかけに、俺は何も答えられなかった。
 それなのに、彼はとても大切なものを見つけたかのように一瞬だけ瞳を輝かせ。
 将軍に頼まれるまま、その身に宿る力を奮い海を割った。
 神々しい姿に、俺はぎゅっと心臓を掴まれたような感覚に陥る。
 その時は、鱗淵境の探索を始め、色々なことが控えていたので気のせいだと思うことにした。
 でも。
 全て解決して、羅浮から列車に帰っても心臓がドキドキして、ぎゅっと掴まれている感覚は消えず。
 理由が分からず、しばらく頭を抱えた。
「恋じゃない?」
「恋?」
 首をひねって、なのを見返す。
「うん。恋」
 他人事だからと、適当なことを言ってるんじゃ? って思ったけど、彼女は真剣そのもで。
「恋ってね、気づいたら落ちているものなんだって。だから、アンタは丹恒に恋したんだよ、きっと。だから、きゅって心臓が締め付けられたんじゃないかな?」
 サクッと彼女の口に入ったクッキーが、割れる。
 俺も一つ手にして、口へ。
 うん、美味しい。流石パム。
「星核の動きが変とか、病気の前兆とかじゃないのか……
「星核の動きが変だったら、ヨウおじちゃんがすっ飛んでくるはずでしょ?」
「あー……それもそうか」
 もう一つ食べつつ、紅茶を飲む。味の違いは判らないけど、これも美味しい。
「うんうん! 進展したら、教えてね」
「なんでだよ」
「恋バナなんて、列車じゃ滅多に出来ないからね!」
「男同士だぞ」
「関係ないよ。恋は、誰でもする権利があるんだから」
 真ん中に穴が開いたクッキーを目元に持っていき、その穴でこちらを覗き込む。
「ウチは、アンタの恋を応援するよ。まあ、丹恒の気持ちはわからないけど」
「そういうことは言わない約束!」
 なんて笑い合った数日後。
「丹恒、具合はどうだ?」
「穹か。ああ、だいぶ良くなってきている。食事もとれるようになってきた」
「え。今まで食べてなかったのか?」
「重湯から始めて、しばらくはお粥などを食べていた。今日から、ようやく固形物を出してもらえたんだ」
「そっか。食べるのが大変だったら、俺が食べさせるけど?」
……頼んでも、いいだろうか」
「ぇ」
 まさかそんな返事が来るとは思っておらず、まじまじと見てしまう。
「丹恒、お前本当に丹恒か?」
「俺は俺だ」
「なんか、可愛いな……
 思ったことを口にしたら、顔を真っ赤にして。
 駄目だ。
 彼のことが好きだと自覚してしまった。これが恋。