お芋さん太郎
2025-10-17 20:20:46
1671文字
Public ONEPIECE
 

愛すべきハゲ




思わぬラッキーが舞い降りた。フランキーは期待に胸を躍らせる。

ゾウで麦わらの一味は二手に分かれた。
サンジを迎えに行く組と、ワノ国に先行して潜入する組だ。

仲間の様子は気がかりだが、離れ離れは初めてではないし、ルフィのことだからサンジのことは、なんとかするだろうという信頼がある。
だからこそフランキーは、ワノ国先行組として普段は立ち入れない『潜水艦』をゆっくりと観察できるというワケだ。

途中で補給のために立ち寄った島では、同時に船のメンテナンスもするらしい。
フランキーは笑顔をペカペカさせて、その手伝いを買って出た。

「ふざけるな。いずれ敵になるお前に誰が頼む」
「いいじゃねェかよ、トラ男~! おれたち同盟だろ?」
「チッ。麦わら屋といい、お前といい……いい加減にしろ」
「わかった、そこまで言うなら、代わりにこのおれ様のスーパーなボディの秘密をあますことなく教えてやるからよ」
「断る」
「連れねェな、兄ちゃん」

間髪いれずに断るローに、フランキーはやれやれと肩をすくめる。
そこに傍から見ていたロビンが助け舟を出した。

「でも……あなたのクルーたちは興味津々みたいだけど」

彼女の指さす先には、キラキラとした瞳でフランキーを見つめるハートのクルーたち。
少年心をくすぐられた者や、オモシロ機械に目がない整備士たちである。

彼らはチラチラとローを見やり、すり寄り、肩を揉んだりしながら精一杯ゴマをすって、その結果ローが折れた。

ローが「今回だけだぞ!」と捨て台詞を吐くかたわら、フランキーたちはハイタッチしたのだった。



潜水艦のつくりは、木の船とまったく違う。
特性と用途に従い、最適化されていて美しい。
これぞロマンというものだ。

もちろん案内されたのは船の限られた部分だけだったが、それでもその素晴らしさは察せられる。
なんたってフランキーはスゴ腕の船大工なので。

「はるばる北の海から。十年以上……か。いやあ、まいった。すげェな」
「だろ? 潜水艦なんて一般的じゃないから、故障のたびに大変でさ」

思わずつぶやくと、整備士たちが口を開く。
満更でもなさそうに、照れながら、それでいて誇りに満ちた表情をのぞかせて。

「そうそう。パーツから手作りしたりもするんだ」
「キャプテンの友達にもらった船らしいからな。大切に乗ってやりてェんだよ」
「そりゃあ、大したもんだ」

同じ技術者にしか分からない喜びや苦労というものがあるものだ。
フランキーは正直に、彼らに敬意を示した。

しかし一点だけ気になっていることがある。

「ところで艦の頭ンとこ、マストの裏あたりか……塗装が剥げてただろ。塗り直すの、手伝うぜ」
「アー、あそこはアレでいいんだ」

やたら丁寧に整備しているくせに、不思議と綺麗に塗装が剥げている部分があったのだ。

フランキーの指摘に、整備士たちは言葉を濁す。
彼らは一様にソワソワしながら「やるか?」「提案だけはしてみるか」「ちょうど夏島だし……」なんてコソコソ話し合っている。

そして首をかしげるフランキーにこう言った。

「実際やった方が早いからな。ちょっと昼飯の提案をしてくる」



で、始まったのが焼肉パーティーである。

カンカン照りの太陽の真下、黄色い潜水艦の上。
マストの裏の綺麗なハゲを鉄板代わりに、脂の乗った肉を焼く。
あんなに船を大切にしてるくせにちょっと雑にも扱うところが、アホくさくて、おもしろい。

ハートのクルーたちは賑やかに肉を囲みながら、麦わらのクルーや侍たちと和気あいあいと語らう。
ローも早々に機嫌を直し、肉だけではなくおにぎりまで焼き始める始末。
かなり自由で、アットホームで、とぼけた雰囲気のできあがりだ。

その風景はサニー号での日常とよく似ている。
肉の並んだ鉄板を前に張り切るサンジと、それを取り囲む仲間たちの姿が目に浮かぶのだ。

想像して、ちょっと笑って、真剣に考える。
サニー号にも鋼鉄のハゲを付けてみようか、と。