haruon1018
2025-10-17 13:56:09
3189文字
Public 原藤
 

bye-bye sweet my dad

https://x.com/Haruon1018/status/1978790931236335841
を形にした原藤(とヘクマン)
関係を進めたい藤とそれなら自分の気持ちに気づけよの原の話
口調はシナリオ読んだから間違いないはず……
タイトルは某グループのサビから


 原田と藤堂は付き合っているが、甘酸っぱさはない。
 喩えるなら現状、ボイラー室でチョコアイスを頬張りながら少し背伸びして飲んでいる珈琲、「藤堂にはまだ早いじゃない」と斎藤に揶揄われ食堂で有無を言わさず牛乳を足されたがそれが丁度いい案配になった牛乳珈琲。
 それと一緒にチョコアイスを味わえば苦さと甘さ、ミルクのコクが増す。
 時々胸を刺すような原田の視線が気になりながら、あえてそれに触れない藤堂と甘さだけを与えているつもりでいる原田。
 交わることなくただ付き合っているという認識だけが二人を繋いでいる現状だ。
「原田さんは……
「何、」
「原田さんはなんで、ちゅーしてくれないんですか」
 唐突に口を窄めた藤堂の唇を見てそういう所、と口にしようとしたが首を振った。
 しれば迷い しなければ迷わぬ 恋の道、生前副長が詠んだ句を思い出しながら、原田は藤堂を迷わせたいと思ったからだ。
 ここカルデアには古今東西あらゆる英霊たちがいる。
 過ごしていくうちに新撰組、日本という枠を離れ交友関係は広がっていく。
 たまたま偶然カレー好きで口調が似ている陰キャラと名乗る青年と食事をしたことがあったが、なるほど口調が合うからと云って話が合うわけではない。
 お互い自分から話すタイプではないので目の前にあるカレーを平らげることだけ考え口に運ぶと、ひょこっと青年の皿に濃い影ができた。
 その壮年とは同じランサーなので名前も知っているし、周回もしたことがある。
 日本で云えば神話の、向こうでも神話の世界の人間であるが無精髭を生やした壮年はランチについていたデザートを青年に渡すと、食堂を後にした。
……なぁ」
「は、はい、あのこれ……
「それはアンタが貰ったもんでしょ、そういうの貰えると嬉しいモノなのか」
……嬉しいというか、ありがてぇと思うっす、」
「そうか、」
 何だというような表情で見る青年に原田は頭を下げて詫びたが、益々混乱した顔をしていた。
 年下に甘い物を喜ぶのは沖田で知ってはいるが、そうか嬉しいモノなのかと藤堂に売店で買ったチョコアイスを手渡せば、「ありがとう原田さん」とはにかんだ表情を見せた。
 その顔を可愛いと思ったが子どもが親からおやつを貰ったような表情に原田の心は少しだけ陰った。
「動きは良くなった、それよりウチの後輩がどうも、」
「うっす、」
 シミュレータを使っての訓練は英霊には欠かせない。
 特にカルディアに来たばかりのサーヴァントは自分がいた特異点で戦闘慣れしていても、周回と呼ばれる種火集めや宝物庫での戦闘に躯が追いつかない場合がある。
 最初は同じ槍から動きを見て貰った方が良いということで、壮年の男を紹介された原田は一汗掻く程度の稽古を付けて貰った。
……恋の悩むってのはいいね、ロートルには懐かしい、」
「ロートル?そんなに老けては見えないっすけどね、それに恋に悩んだ口でしょ」
「何で分かる?」
「だって食堂で、野暮かもしれねぇけどあの関係は一朝一夕で出来るような関係ではない、」「つまりおたくもそういう関係になりたいって事か」
「っすね、けど相手に父性求められるって辛くないですか」
「オジサンまだ現役ですけど、まぁうん分かる気はする、父性ではなかったけど」
 揶揄うつもりが飛び火に当たった壮年が頬を掻く。
「そっちはどうかは知りませんが、俺に求められているのがそれの内は手を出したくないというか、あいつにとって俺は……
「正解に導いてやるのも年上の勤めでしょ、まっその正解にたどり着けるか、その前にお前さんが待てないかまでは知らないけど、一服していい?」
「どうぞ、正解……しれば迷い しなければ迷わぬ 恋の道」
「誰の歌」
「うちの副長っす、」
「ふーん、」
 壮年は興味がないのか葉巻だけ咥えると原田の顔を見た。
「何すか」
「ウチの後輩と似てるなと思っていたけれど全然似てない、」
「そりゃまどうも惚気ごちそうさまです、今度葉巻でも持ってきますよ」
「いいよ、これ自作だし」
 という流れで原田は恋の道というのを藤堂に用意することにした。

「どういうことですか」
「だから俺に求めているのが何か気づくのが何か分かるまではこれ以上先に進まない」
「据え膳食わぬは男の恥……
「その膳に何にも並んでないうちに云われても……つまるところ、どうしたい?」
 食べ終えたアイスが胃ではなく心臓に届いたと思えるほど藤堂の心臓は一瞬固まった。
 自分はただ接吻を望んだはずなのに、原田は「ふせい」を求められては敵わないと、長い前髪からでも分かる鋭い視線を藤堂に送る。
 不整、浮世、それとも一部の女性サーヴァントが求めている腐性かと考えるが、原田は男色を否定したわけではない。
「ふせいってなんだよ、」
「それに気づかない、それとも求めているから分からないふりしてるのなら先はない、これだけは自分で考えな、」
 ぽんと頭を撫でボイラー室から出ていく原田を藤堂は恨めしそうに大きな瞳に涙を浮かべて睨んだ。

「父性……
 原田が自分が彼に求めているのはコレだろと伝えてきた言葉は簡単に見つかった。
 地下の図書館で辞書を引けば、五分と立たずに見つかった言葉を藤堂は指でなぞる。
 そんなつもりはなかった。原田は自分を受け入れてくれたし、否定的な言葉を投げかけることはあっても拒絶はしない。
 そんな彼が「父性」を求めるなと忠告し、求めるならば拒絶すると云ってきたのだ。
 そもそも自分たちが付き合うのが間違いではなかったのか。
 藤堂はなりゆきで付き合うようになった日々を思い出し、それがいかにぬるま湯で焦れったい関係だったかを思い出す。
 生前惚れた腫れたを見てきた藤堂にとって恋愛は鬼門であった、だけれど原田に恋をし思いを伝えた。
 それを受け入れてくれた原田に藤堂は歓喜し、犬が懐くように懐に入っていたがそれすら付き合いの、イロハのいにもならない。
 七つ八つからいろはを覚え、ハの字を忘れてイロばかり
 どこかの芸者が唄ったか忘れたがそんな都々逸があったのを思い出す。
 色とはすなわち情欲、生前の原田のことを思えばサーヴァントとはいえあるのだろう。
 そんな彼に自分は添い寝を頼み、時に涙を拭って貰った。
 随分とまぁ生殺しも良いところである。
「僕で良いのか……
 今牛若などと呼ばれていたから顔に問題はないが、このカルディアには本人がいるので失礼になるがつまりは小柄ということだ。
 女子であれば小さくとも肌の温もりや使える場所を使って原田を癒やせるが、藤堂の躯はつぎはぎの躯である。
 それにすぐに父性を否定できなかった自分が原田と付き合っていいのかと、ぐるぐると頭を抱えながら、なんとなく原田を避けていればそれは突然訪れた。
「答えは見つかったか、平助」
「っ……原田さん」
 ボイラー室を避け、食事も原田が集会に行くタイミングを狙って摂っていたが、広いようで狭いカルデアでふと会いたくないサーヴァントに会うのはお約束の展開である。
「そこの顔……正解を見つけられずに道でしゃがみ込んでいるってとこか」
「煩い!見つけるから待って、ぇ……や」
 一瞬、宙に浮いたかと思えば藤堂の躯は原田の肩に支えられた。
「ちゃんと正解を見つけたら主導権でも何でも握らせてやるつもりだったけど、その顔じゃ理解できそうにないんで俺が教えてやる」
「はッ離せよ」
「やだね、なぁ平助、狼ってのは自分で餌を採りにいくもんだ」
 だから喰われろと云う顔を見たいと藤堂が言えば、原田は今にも捕食する目を見せ藤堂を誘った。
 その顔を見て理解したなんて言うモノかという藤堂の誓いは、チョコアイスの包紙より軽かった。