のたり
2025-10-17 05:44:33
2174文字
Public hrsz
 

遥BD2025

サイストベースの話。
愛莉だけがふたりが付き合ってること知ってる設定。


モニターの中に雫の姿を見つけて廊下の途中で立ち止まった。
食堂で何してるんだろう。しばらく見ていたら手元に広げられたノートが見えた。勉強してるのかな。気になるけれど行かないほうがいいかもしれない。なぜなら最近、雫は私に隠し事をしているから。
心当たりはひとつ、もうすぐ私の誕生日。愛莉と時々こそこそ話しているし、なにかサプライズを準備してくれているんだろう。
今年はみんなと合宿所で過ごすことになると思うけど、どこかで雫とふたりきりの時間が作れたらいいな。
ふと雫が顔を上げる。誰かに話しかけられたみたいだ。自分が映されていることなんて全然気付いていなかった様子に雫らしいな、なんて思っていたら、携帯が鳴った。届いたのは私の誕生日、予定が空いていたら私とみのりと杏とこはねの4人で出かけようという、杏からの誘いのメッセージだった。
杏やこはねとも久しぶりに遊びたいけど、いつ始まるかわからないLUMINAタイムもあるし正直難しいだろう。でもみのりの名前も入っているから独断で断るわけにもいかないし、1日は無理でも2、3時間ほど遊べたらいいなと思って、次の日の朝、みんなに相談した私に帰ってきたのは、一点の曇りも迷いもない笑顔だった。
「本当!? その日って、まだ予定入れてなかったよね?」
「ええ。特別生配信も、今回は当日じゃなくて前日からカウントダウン方式でやろうってことで進んでるし」
「杏ちゃん達と一緒にお出かけできそうね」
いつもと変わらないどころか、いつもより嬉しそうな雫の笑顔に正直戸惑う。みのりの言うとおり、まだ予定は入っていないし、愛莉の言う通り特別生配信は前日からだけど。
「そうなんだけど……
「遥ちゃん……?」
雫の表情が少し曇る。
……アンタのことだから、どうせLUMINAタイムを気にしてるんでしょ」
苦笑いした愛莉の言葉は正解。でも半分。
……誕生日だからって 自分を優先するのは気が引ける、とか?」
それはちょっと違うかな。でも、愛莉達もなにか準備してくれていたんじゃないの?なんて言えない。
「友達付き合いっていう意味でも、こういう機会は大事にしておきなさい。杏ちゃんは、アンタの大切な親友なんでしょ?」
愛莉の言葉が決め手となって、私はふたりに「ありがとう」と口にした。

***

「楽しかった? 遥ちゃん」
部屋にふたりきりになったとき、雫がそう聞いてきた。もう私の答えはわかっているんだろうけど、ちゃんと言葉にして返す。
「うん。杏とあんなに遊んだの久しぶりだし、音楽カフェもすごく楽しかった。ピアノの連弾なんて初めてだったし、プリンもすごく美味しかった」
ふふっと雫が笑う。お菓子やケーキと一緒に「私のプリンもよかったら食べて?」と差し出してくれた雫に、一歌に勧められてプリン食べてたところ見られてたんだと思った。雫はいつもそんなふうに、見ていないようでちゃんと見ていてくれる。
「雫と愛莉も来てくれて嬉しかったよ」
私がそう言うと、バツが悪そうに雫がほんの少し眉を下げた。
「本当はね、私と愛莉ちゃんも、もっと早く音楽カフェに行って遥ちゃんを驚かせる準備をしようと思っていたんだけど……
「そうだったの?」
「ええ。でも遥ちゃんからLUMINAタイムを任された以上、そうもいかないでしょう?」
「あ、そっか……。ごめん」
「いいのよ、だって遥ちゃんの言う通りだもの。万が一LUMINAタイムがあったら、きっと私達、本気で遥ちゃんの誕生日を楽しめなかったわ」
……うん。ありがとう、雫」
胸の奥から暖かいものが広がる。みんなといるときも楽しいけど、雫とふたりきりのときは、穏やかで優しい気持ちが広がる。ーーやっぱり好きだな、そんなふうに感じていたとき、雫がいつもより得意げにふふっと笑った。
「じゃあここからは私だけにお祝いさせて、遥ちゃん」
「え?」
「遥ちゃんの誕生日が終わるまで、あと3時間あるもの。愛莉ちゃんにお願いしてふたりっきりにしてもらったの」
「あ、そうなんだ」
そっか、と納得した。LUMINA FORUMの合宿所に戻ってきて、愛莉が「一日遊んでて筋トレも何もしていないでしょ」とみのりだけをレッスンに連れていったとき、雫の様子も含めて少し変な感じはしていた。正直あまり気にしていなかったけど。
「愛莉ちゃん、アイドル活動が理由で友達と疎遠になったことがあったから、遥ちゃんには同じ思いをしてほしくないって言っていたわ。だから杏ちゃんから相談されたとき、協力したい、って」
「そっか……
「私も同じ気持ちだったからもちろん協力したいって言ったんだけど、でもふたりっきりの時間もほしいでしょって言ってくれたから、お言葉に甘えて愛莉ちゃんには私にも協力してもらったの」
ふふっと雫がまた笑う。どうやら今年の誕生日はすっかり愛莉にプロデュースされていたみたいだ。
……愛莉に感謝しないと」
「ふふっ、そうね」
「何時くらいまでふたりでいられるの?」
「11時くらいまでかしら」
「じゃあそれまでいっぱい祝ってもらおうかな」
「ええ!」
雫の満面の笑みに私も頬が緩む。本当はもう十分過ぎるくらい雫にも祝ってもらっているけれど、なにをしてくれるつもりなのかな、と心は躍っていた。