kazeou01
2025-10-16 20:21:16
8251文字
Public ジャニーズ全般
 

マスコミ報道における、誤情報の構造

旧ジャニーズ事務所が「SMAPの元メンバーを起用しないようにテレビ局に圧力をかけたことにより、独占禁止法に違反した」旨のマスコミ報道における、誤情報の構造
Financial Crimes Enforcement Networkの分析報告書と勧告書について(THE GOLD ONLINE)

旧ジャニーズ事務所が「SMAPの元メンバーを起用しないようにテレビ局に圧力をかけたことにより、独占禁止法に違反した」旨のマスコミ報道における、誤情報の構造
Financial Crimes Enforcement Networkの分析報告書と勧告書について(THE GOLD ONLINE)
https://gentosha-go.com/articles/-/72361
web魚拓
https://megalodon.jp/2025-1016-1950-18/https://gentosha-go.com:443/articles/-/72361

重要と思われる文章を引用していきます。※改行には手を加えております。
しかし長いですが、全文読んでいただければと思います。

引用1
「まず、どこが誤情報かというと、2019年当時、旧ジャニーズ事務所が「テレビ局に圧力をかけた」との嫌疑で公取から調査を受けたことはありましたが、公取の調査の結果では、旧ジャニーズ事務所が「テレビ局に圧力をかけた」という事実は認定されておらず、その疑いが残るともされていません。つまり、公取の調査結果は、そういう圧力をかけたという事実はなく、その疑いもなかった、ということです。そのため、公取も、旧ジャニーズ事務所に独禁法違反やその疑いがあるとは認定していません。ただし、公取は、旧ジャニーズ事務所とテレビ局との相対的な力関係の強弱等を踏まえ、今後、将来において、仮に、例えば旧ジャニーズ事務所がテレビ局に圧力をかけることがあるならば、それは独禁法違反※4に該当することになるから注意せよ、との注意をしました。

※4 例えば、不公正取引(取引妨害など)。」

引用2
「公取が公表していないにもかかわらず本件が公に認識されることになったのは、2019年7月17日夕方ないし夜のNHKの報道とその後のテレビ・新聞の後追い報道のためです。

以下で述べるとおり、このNHKの報道が不正確・ミスリーディングなものであったため、「旧ジャニーズ事務所が『SMAPの元メンバーを起用しないようにテレビ局に圧力をかけたことにより、独占禁止法に違反した(その疑いがある)』」との誤解が生じることになったと考えられます。

2019年7月17日に、NHKのニュースサイトに活字で掲載された記事は、「“元SMAP3人の出演に圧力”公取委がジャニーズ事務所を注意」という見出しの下、「ジャニーズ事務所が民放テレビ局などに対し、事務所から独立した3人を出演させないよう圧力をかけていた疑いがあることが、関係者への取材で分かりました。」「公正取引委員会は、独占禁止法違反につながるおそれがあるとして、きょうまでにジャニーズ事務所を注意しました。」と報じています※13。」
「見出しの「“元SMAP3人の出演に圧力”」を見れば、視聴者・読者は、旧ジャニーズ事務所が圧力をかけた事実があったと誤解すると思います。

また、このNHKの記事の本文中の「ジャニーズ事務所が民放テレビ局などに対し、事務所から独立した3人を出演させないよう圧力をかけていた疑いがあることが、関係者への取材で分かりました。」について、「圧力をかけていた疑いがある」との点も不正確でした。この疑いが公取の調査開始や調査中に存在していたという趣旨であれば誤りとまではいえませんが、この疑いが「ある」等と現在形で表現しながら、公取の調査によって、その疑いが解消されたことを報じていない点で、視聴者・読者を誤解させるものでした※14。」

引用3
「民放・新聞の後追い報道も、朝日新聞を除いて、NHK記事をなぞったような、不正確で視聴者・読者をして誤解させるものになりました※16。
(略)
例えば、NHK報道後である2019年7月17日21時40分付けの日本経済新聞電子版当時では「ジャニーズ事務所を注意 元SMAPメンバーの起用妨害か」との見出しで、「ジャニーズ事務所(東京・港)がテレビ局に対し、同事務所を退所した元SMAPの3人を出演させないよう働きかけた疑いがあるとして、公正取引委員会が同事務所に対し、注意していたことが17日、関係者への取材で分かった」と報じられていました。NHK報道について述べたとおり、「働きかけた疑いがあるとして」は、不正確・ミスリーディングな報道であり、旧ジャニーズが独禁法違反のおそれのある行為を現に行ったのだとの誤解を生む内容でした※17。」

「NHK報道や後追い報道等の問題点は、当時の朝日新聞の記事と対比すると、はっきりします。2019年7月17日21時43分付け朝日新聞電子版※18は「ジャニーズに公取委が注意 元SMAPテレビ出演めぐり」との見出しの下、「アイドルグループ「SMAP」の元メンバーをテレビ番組に出演させないよう圧力をかけた場合は独占禁止法に触れるおそれがあるとして、公正取引委員会が元メンバーが所属していたジャニーズ事務所(東京都)に対して注意していたことがわかった。」「・・・同事務所が圧力をかけているとの情報があり、公取委が聞き取り調査などを実施。その結果、違反行為は認定できなかったという。」と報道しています。朝日新聞は、「圧力をかけた場合は」独占禁止法に触れるおそれがある、「違反行為は認定できなかった」と、NHKや日経新聞等とは異なり、ほぼ正確に報道しています※19。」

引用4
「最近の報道にも同様の問題があると思います。

例えば、当時の公取委員長であった杉本和行氏は、2024年11月28日付け日本経済新聞・夕刊「リーダーは桃太郎であれ私のリーダー論(上)」と題するインタビュー記事で、「在任中に反響が大きかったのが旧ジャニーズ事務所(東京・港)の問題でした。退所したSMAP元メンバー3人の番組起用を妨げるような働きかけがあった場合、独禁法違反につながる恐れがあるとして、19年に公取委が同事務所を注意したと報じられました。」と述べています(下線は筆者による)。この下線部分の記載は、上記の朝日新聞の報道と同様に、正確な記載です。
(略)
ただ、残念ながら、上記発言の直後の杉本氏の発言が「芸能の世界でも、個人のやる気が起きる環境を阻害すれば、排除は当然です」となっています。この発言自体は、一般論としての発言だったのだと想像しますが、紙面上は、一般論であることが明示されず、旧ジャニーズ事務所についての上記発言の後にそのまま続いて記載された発言のため、これらの発言を併せて読むと、排除措置命令などの行政処分の対象となる独禁法違反が現に行われたかのような言い振りになっています。加えて、当時、公取自身が、「番組起用を妨げるような働きかけがあった」とまでは認定していないことに言及していないため、一般の読者に対して、NHK報道などと同様に、旧ジャニーズ事務所が独禁法違反行為ないしその疑いのある行為を現に行ったとの誤った印象を与えかねないものとなっています。」

引用5
「NHKにせよ、NHKと同様の不正確な報道を行った報道機関にせよ、なぜ、このような不正確・ミスリーディングな報道を行ったのでしょうか。

この点、NHKの2019年7月17日付け「“元SMAP3人の出演に圧力”公取委「注意」の経緯(記者解説)」では、後半部分で、芸能人と所属事務所の関係を問題にし、公取の2018年2月15日付け「人材と競争政策に関する検討会報告書」に言及しています。NHKとしては、芸能人と所属事務所との間の公正な取引関係の構築という課題を世論に訴えるために、公取すらも公表していない、旧ジャニーズ事務所に対する注意を、何らかのリーク情報に基づいて報道したのかもしれません。

しかし、その場合であっても、リーク元が公取であれば※20、前述した日経新聞のインタビュー記事における杉本氏の説明のように、公取は正確にNHKに説明したはずだと思います。現に、朝日新聞は、取材源が公取かどうかは分かりませんが、報道内容としては、当時、正確に報道していました。当時、NHKと朝日新聞との間で取材力や公取実務の理解力にそれほど大きな差異があったとは思われません。そうすると、NHKは、記事のインパクトの観点から、「独禁法違反行為やその疑いがあるとされたわけではないが、今後、仮に圧力をかけたら独禁法違反になる」という、正確だが、分かりにくい内容よりも、「圧力をかけて独禁法違反を行った疑いがある」という、誤情報だが、単純で分かりやすい内容にして報道してしまったのではないかと疑われます。」

引用6(前半部分)
4.NHKによるNGリスト報道との類似性
(1)NGリスト問題の事実関係

こうしたNHKの不正確・ミスリーディングな報道は、この公取による注意の件の他、旧ジャニーズ事務所の2023年10月2日の記者会見における、いわゆるNGリスト問題についてのNHK報道でもあったように考えています※21。

※21 私は、この記者会見での登壇者の一人です。また、NGリスト問題に関する報道等の問題点については、拙稿「NGリスト問題を理由とする記者会見の失敗論について」弊事務所・本ニューズレター2024年8月28日号 、拙稿「NGリスト問題と株主総会」同2024年8月30日号参照。

このNGリスト問題の事実関係の概要は、別稿で述べているように次のとおりです。

1.NGリストは、旧ジャニーズ事務所の指示で作成されたものではなく、記者会見を受託していた危機管理広報業者(その業務委託者を含め、以下単に「ベンダー」ということがある)の担当者が独断で、記者会見開始直前に会場で作成して、司会者やベンダーの業務委託先であったイベント運営会社の担当者等だけに共有したものであった。

2.ベンダーの担当者としては、NGリストの作成理由について、司会に特定の記者を指名させないという意図ではなく、この日の会見のテーマに関係する質問から先に受け付ける趣旨で作成・共有したものであって、旧ジャニーズ事務所からの指示に反しているという意識がなく、「氏名NG」(ママ)という文言は安易に本来の意図とは異なって解されてしまう用語を用いたものであると説明している。

3.実際の記者会見においては、録画結果からも明らかなとおり、司会者は、「氏名NG記者」とされている記者にも指名して発言させており、「氏名候補記者」及び「氏名NG記者」のいずれについても、約5割を指名した。不規則発言を伴う質問を含め、「氏名NG記者」からの質問数(合計8問)及び質疑のために対応した時間(合計14.5分)は、「氏名候補記者」とされている記者からの質問数(合計5問)及び質疑への対応時間(合計11.5分)を上回っていた。また、「氏名NG記者」のうち1名による質問に関しては、登壇者(旧ジャニーズ事務所社長と私です)の判断で、司会者に対して2問目の質問にも回答する旨を告げて、旧ジャニーズ事務所において指名して質問に回答している。

(2)NGリスト問題に関するNHK報道

要するに、事実関係は、NGリストなど旧ジャニーズ事務所側は作っておらず、その作成に関与もしておらず、まして、いわんや、記者のNG扱いなどしておらず、記者会見の録画を見ても一目瞭然のとおり、客観的事実として、記者会見の多くの時間をNGとされた記者との質疑に費やしている(登壇者の方でも、NGとされた記者を指名して応答している)、ということです。

NGリスト問題についても最初に報道したのはNHKであり、10月2日(月)の記者会見の2日後である10月4日(水)の午後7時のNHKニュースでした。この放送があった当日の早朝、NHKから質問があり、私も非常に驚いて、問合せをしてきたNHK記者に対し、問題のNGリストについて「見たこともない。もちろん作ったこともない。これは本物なのか。ねつ造ではないのか。ともあれ事実関係を調べてみる。」旨を回答しました。旧ジャニーズ事務所も私の回答とおおむね同旨の回答を行っていると思います。

しかし、NHKは、その当日午後7時頃には、あたかも旧ジャニーズ事務所側がNGリストを作成して、記者会見当日、一部の記者の質問を受け付けないとの「NG扱い」を現に行ったかのような、視聴者に誤った印象を与える報道を行いました※22。

※22 NHKの性急な報道の背景には、旧ジャニーズ事務所を叩くネタを探している中で、「NGリスト」という持ち込まれた題材が面白かったこと、情報提供者が他社にも同じネタを持ち込んでおり、他社より先に報道したかったこと等があったのではないでしょうか。

このNHKの報道は、旧ジャニーズ事務所が否定している中で、旧ジャニーズ事務所自身がNGリストを作成したりその作成に関与した事実があるのかどうか、十分に調べていない上に、NHKに情報を持ち込んだ情報提供者の事実に反する証言を映像で紹介し、上記3の客観的事実(記者会見会場ではNG扱いなど行われていないこと)に言及しないものでした。そのために、旧ジャニーズ事務所がNGリストを作成して、記者会見で実際に一部の記者のNG扱いをしたかのような誤った印象を与える報道になりました※23 ※24。

※23 この場合も、先ほど、景品表示法違反との比較で述べたとおり、NGリストに関する氏名不詳者の供述が強調表示であり、他方、実際の会見会場でNG扱いなどなかったことが打消し表示に相当するところ、この場合のNHK報道も、景品表示法違反と同様に、強調表示を報道しながら、打消し表示を報道しないことで、視聴者を誤解させる誤情報の発信になっています。

※24 独禁法違反報道にせよ、NGリスト報道にせよ、旧ジャニーズ事務所を非難することを主目的とした報道であること等からすると、NHK等が情報提供者の誤情報を十分に検証しないまま、それに引きずられて報道した可能性もあると思われます。

このNHK報道を契機に、主に民放各社による、NHKの誤報を後追いする報道が続き、ワイドショーやSNS等でもNG扱いが現にあったとするかのような取り上げ方が続き、NHK報道の約1週間後、2023年10月10日付けで、旧ジャニーズ事務所が「NGリストの外部流出事案に関する事実調査について」を公表して、NGリスト報道は収束しました。

しかし、NHKにせよ民放各社にせよ(新聞もそうですが)、旧ジャニーズ事務所がNGリスト作成を否定しているという点を報道するにとどまり、当時、テレビ朝日を除いて、上記3の客観的事実(記者会見の多くの時間をNGとされた記者との質疑に費やしており、登壇者の方でも、NGとされた記者を指名して応答していること等)には報道で言及していないことから、NHKや民放各社の報道によって視聴者が抱くことになった誤った印象や認識は十分に是正されていないように思います。むしろ、その後のNHKや民放各社はNGリスト問題や自らの報道内容にはほとんど言及しなくなっていると思います。

5.マスコミ報道によって生み出される誤情報に対する対応
(1)十分な取材と客観的な報道の必要性
報道機関の責務や社会的影響云々の大前提として、報道機関は、十分に取材して、正確に報道するべきです。

独禁法違反報道については、
1.行政処分・警告と注意の区別という、独禁法や公取実務の基本的な事柄の理解が足りず、公取や事件関係者からの取材も不十分だったのではないか、

2.記事のインパクトを高めるために、「圧力をかけて独禁法違反を行った疑いがある」という単純で分かりやすい内容にして報道したのではないか、

NGリスト報道については、
1.旧ジャニーズ事務所側が否定しており、実際の記者会見ではNG扱いはなかったのに、情報提供内容を時間をかけて十分に検証しないまま報道したのではないか、

2.旧ジャニーズ事務所がNGリストを作ったというストーリーに固執して、実際の記者会見でNG扱いがなかったこと等の客観的事実から目をそらして報道したのではないか

等といった問題があったと、私は考えております。

独禁法違反報道とNGリスト報道について、いずれも、景品表示法違反(優良誤認、有利誤認)における、強調表示と打消し表示の関係と同様の構造であることについて、先ほど脚注で簡潔に説明しました。強調表示に相当する情報を発信しながら、打消し表示に相当する情報に沈黙したり過少な扱いとすることで、情報操作が可能になります。社会的責任のある報道機関が、景品表示法違反と同じ構造の情報を発信することの適否については、きちんとした検証を行う必要があると考えます※25。」
(以下略)

引用7
「NHKの信用力も問題です。社会一般は、NHKの報道内容は正確であり、加えて、公正中立だと信じています。私自身も独禁法違反報道の前まではそう信じており、NGリスト報道の前も、まだ多少はNHKの報道に対する信頼が残っていました。

こうしたNHKの信用力があるため、独禁法違反報道にせよ、NGリスト報道にせよ、民放各社や新聞等が、たとえ不正確な報道内容や視聴者・読者を誤解させる報道内容であったとしても、NHKの報道に引きずられて報道した面もあったように思います※26。また、NHKの信用力があるだけに、誤った報道内容の事後的な是正も特に困難になります。こうしたNHKの報道内容の正確性や公正中立性に対する社会の信用がどこから発生するかと考えれば、もちろん個々の記者による過去の適切な報道実績の積み重ねによるものと思いますが、制度的に見て最大の要因は、NHKの公共性の外観や受信料に支えられた安定的な経営体制にあると思われます。」

引用8
「報道には、正確性だけでなく、タイムリーさ、即時性も必要だと思います。また、取材の限界もあります。そのため、どれほど誠実かつ真摯な報道姿勢であったとしても、ときに、不正確な報道やミスリーディングな報道などといった誤報が生じることは、完全には未然防止できないと思います。

誤報発生を完全に未然防止できないことを前提とすれば、報道機関としては、自らの報道内容を事後的にも検証して、追加的に判明した新事情や従前の報道で見落としていた事情に照らして、従前の報道内容を明確に是正・補正していき、誤情報や誤報状態を解消していくことが必要であり、それこそが報道機関の責任であると思います。

いつの間にか、社会や視聴者・読者が知らないうちに、記事を消したり、修正するといった「ステルス修正」や、誤情報で一方的に叩いていながら、その誤情報を是正もしないで沈黙するといった「叩き逃げ」が、現実の報道機関の行動として見られるようでは、報道機関を信頼できません。」

引用9
企業側の危機管理の観点からの対応としては、迅速な事実調査、適時の充実した内容のプレスリリース、記者会見や記者レク、場合によっては仮処分の申立てや不法行為訴訟の提起といった法的措置等によって、誤情報を伝える報道の未然防止や事後的是正を目指していく、というのが、いわば教科書的・技術的な話になります。

しかし、旧ジャニーズ事務所の独禁法違反報道やNGリスト報道でも現実にそうだったのですが、重大事案の場合など、報道機関がネタとして面白いと思って走り出してしまうと、いくらプレスリリースをしたり、記者に個別に時間をかけて丁寧に説明しても、誤情報をまき散らすような報道を未然防止することは困難です。この点は、私の検事や弁護士としての経験上も、旧ジャニーズ事務所の案件に限ったことではありません。

こうした報道機関ないし報道の特性を踏まえれば、企業側としては、事案の内容によっては、バッシング報道や批判・非難を避けることができず、むしろ「いったんは叩かれておかないと先に進めない」というケースもあると腹決めして、報道というもののリアリティを見据えながら、「正しいことをする」というのが最も大事だと思います※28 ※29。

(後半略)