kanaco
2025-10-15 22:43:14
822文字
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【十二信】きみの手のひら

1000文字チャレンジ。十二の手が好きな信一のおはなし。

「お前の手が好き」

信一が言った。
クスクスと笑って機嫌が良さそうだった。

体育座りをする信一を後ろから包むように抱きしめていた十二は「んー?」と不思議そうな声を出した。信一の肩に顎をおき、信一に回した自分の手を覗き込もうとする。ついでに裸足を信一の素足にイタズラするように擦りつければ、信一の肩が楽し気に揺れた。

「けっこう厚いよな」

信一がそう言って、十二の手のひらへ自分のものを合わせた。次に指を一本一本しっかりと絡ませていく。ほっそりとした指が自分の手を包み込みこむ。十二は目を細めて眺め、言った。

「お前の手の方が綺麗だろ」

信一の手は、恐ろしい黒社会に属する男にしては薄くて細く、そして滑らかだった。過去にナイフで切った傷はあるし武器を扱う手の皮は固さを持つが、骨格のためなのか、それでも変わらず華奢で繊細な指先であった。

「俺が綺麗かは分かんねぇけど

2つできた貝殻つなぎを自分の膝の上に乗せ、信一が穏やかな声を出す。

「お前の手は俺より大きくて、固くてさ、荒々しい」

昔は小さくて可愛い手だったのに。お前が強くなるために、皮がむけるまで豆がつぶれるまで木刀を素振りしてさ。大切なもののために一切の躊躇いもなく幾度も刀を振い続けて。何度転んでも立ち上がって、血の滲むような努力をして、一線で戦って守って、がむしゃらに突き進み続けてきた、その証だから。

「虎兄貴を守る強い男の手だろ」
この無骨な感じがお前らしくて、俺は誇らしいから。

すごく好き。

「それにそんなおっかない手でも、俺には気遣うように触るからよ」

………
……なーんてっ」

喋る途中で恥ずかしくなってきたのだろう。信一が空気を混ぜ返そうと調子良さげな声を出して、急に後ろへ体重をかける。

それでも十二はどうしようもなく愛しい気持ちになって、自分に背を預けてケラケラと笑う幼なじみをぎゅうぎゅうと強い力で抱きしめたのだ。