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匣舟
2025-10-15 22:24:16
2365文字
Public
RKRN
閉じた扉の開き方
ショートショートの長乱です。
約束をすっぽかした長とそれを拗ねている乱の話です
乱太郎は自分が子どもっぽいな。と思いながらも、とあることで拗ねて箪笥の中に閉まってあった自分の布団に体を隠してすっぽりとくるまっていた。
箪笥の向こう側から、乱太郎。
…
すまなかった。といかにも反省しています。という声が聞こえるが、言葉を発する気にもなれなかった。こんなことで怒っている自分がとても惨めで、こんなことで彼に謝らせている自分が嫌だからだ。
(
…
こんなの、先輩に嫌われても仕方ないや、)
自分がここにいないように見せかけようとしている乱太郎はできるだけ声を押し殺して泣きながら、彼が早くこの場から立ち去るのを待つことにした。
(せんぱい、まだかなぁ
……
。)
事の発端は、放課後に恋人と待ち合わせをして会おうと約束していたのをすっぽかされていたことから始まる。乱太郎が待っていた相手
…
恋人は五つ上の図書委員会委員長の中在家長次で、ふたりは周りに付き合っていることを秘密にしながら少しづつ愛を育んでいた。
今日もいつもと同じ空き教室で会おうと約束していたので、放課後になった瞬間にいち早く集合場所に着いた乱太郎は、だいすきな長次がいつ来るのかどきどきしながら待っていたのだが、時間が経てど経てど長次が姿を見せることがなく不思議に思った乱太郎は、もしかしたらなにか図書委員会であったのかもしれないと図書室に覗きに行くと、長次の級友である小平太と談笑している姿を発見してしまったのだ。
(あ、あれ?今日だったよね
……
?)
前日、すれ違いざまに長次から日にちと場所が書かれている紙を懐にしまっていたのでそれを持ち出して見てみるとやはり、今日の日付になっている。
(
…
忘れてる?それとも私と話すのがいやになった
……
?)
考えれば考えるほどナイーブな気持ちになってしまった乱太郎はもうその時点で泣きそうになっていた。
図書室の近くからそっと二人を見ていたのに、気づいたら図書室の前に来てしまっていて長次と目が合った瞬間に脱兎のごとく逃げ出してしまう。
「
…
っ、乱太郎!」
後ろから珍しく声を荒らげながら自分を呼ぶ長次の声が聞こえたが、乱太郎は立ち止まる気にもなれなくて自分の部屋にすぐさま行って、今現在と同じように箪笥に身を隠して布団にくるまっている状況になったのだ。
乱太郎の行先をくまなく探したであろう長次が自室にきたのは数分たった後で、それからずっとかれこれ一時間も自分と対話すべく語りかけてくれているが、引くに引けなくなってしまった乱太郎は謝られれば謝られるほど嫌になるばかりで、どんどん涙が溢れてしまって止めることができなくなってしまう。
そもそも長次と付き合ってから喧嘩みたいなことをしたことが無かったので、どうすればいいのかがよく分からない。
自分がこんなにも子どもっぽいせいで長次にもう嫌われてしまっただろうか、呆れられてしまっただろうか。
返事をしたとして、こんなに涙でぐしゃぐしゃになっている顔を見られたくないし、箪笥を開けた時に長次の呆れたような顔をしているのを想像するだけで乱太郎はまた目に涙を溜めてしまう。
(わたし、どうしたいんだろう。)
心の中で色んな感情に苛まれて葛藤していると、長次からまた名前を呼ばれる。
「
…
乱太郎。」
急に呼ばれた反動から思わず反応してしまうところだったが寸のところで堪えたが、逆に堪えていた嗚咽が声になって出てしまう。
「
……
っう、っ」
慌てて自分の口を抑えたがもう遅く、口から嗚咽が出たあとだった。
…
泣いていることがバレてしまって、面倒臭いって絶対思われてるだろうな
…
。と布団にくるまって涙を拭っていると、パタンと箪笥の開く音が聞こえて、瞬く間に乱太郎がくるまっていた布団が剥がされ、暗いところにずっと居たからか視界がチカチカする乱太郎の瞳に映ったのは、優しい瞳でこちらを見つめてくる長次の姿だった。
「
……
すまない。本当に
……
。」
悲痛な声で謝ってくる長次を見たら我慢できなくて自分から飛びつくように抱きついた。
「
…
せんぱ
…
ぃっ、ごめ、ごめんなさいぃっ、」
わたしのこと、嫌いにならないで。と涙を拭うこともせず胸元で泣きじゃくり続ける乱太郎に対して長次は背中を撫でることしか出来ず申し訳なさそうに眉を下げた。
「
…
謝るのはこっちだ。本当に悪かった
……
。
…
許してくれるだろうか
…
?」
ぎゅうっと苦しいくらいに抱き締められればさっきまでのモヤモヤとした気持ちは霧散して、代わりに心の中が温かいもので満たされていく感じがした。
「
……
わ、わたしのこと、嫌いになりませんか?」
泣きじゃくったせいか少し赤い瞳をさせながら上目遣いで問いかけるとふるふると首を振られる。
「そんなことでお前のことを嫌いになることは無い
…
。」
むしろ私が嫌われたのかと思ったぐらいだ。と目を伏せた長次はそう言ってそっと親指の腹で涙を拭ってくれた。じわぁと胸が熱くなってまた涙腺が緩む。
「本当
……
ですか?」
「
…
ああ。」
優しく微笑みながら頷いてくれたので安心すると同時にこんな涙でぐちゃぐちゃな顔を見られてしまった恥ずかしさが襲ってきて顔を見られないように肩口に顔を埋める。それに合わせるように抱き締められる力が強くなる。
(あったかい
……
。)
その長次からくるぬくもりを感じながら目を瞑ると自然と瞼が重くなり意識が遠のいていく感覚を感じた乱太郎は必死に目をこじ開けようとするが、眠気に抗えずに長次の腕の中で眠りについてしまった。
乱太郎が眠ってしまったことを確認した長次は彼を横抱きにして、それから彼の唇にそっとキスを落とした。乱太郎が起きた暁には彼のことを精一杯甘やかして、約束を破ってしまった埋め合わせをするつもりの長次であった。
了
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