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usagipai
2025-10-15 20:56:15
5580文字
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まとめ
🔸
風が草を揺らす音だけが、二人の間に流れていた。
外れの野原。組織の基地から遠く離れたこの場所で、マクシミリアンは、土の上に小さく手を合わせていた。
「ルー様からは特別扱いされてるかもしれないけどさ」
背後から声をかけたレントは、片手をポケットに突っ込み、ため息混じりに言葉を続けた。
「無意味なことして、何が楽しいんだか。死んだ奴らは戻ってこねぇよ」
呆れを隠そうともしないその口調に、彼は答えなかった。
ただ、風にたなびく花を見つめるように、目を細める。
レントの言い分もわかっていた。こんなことで報われる命などない。
それでも
――
見捨てられたポケモンたちを、このまま忘れてしまうことのほうが、彼には耐えられなかったのだ。
彼の足元には、小さな墓標がいくつも並んでいた。
マクシミリアンは、今日もまたひっそりと、犠牲になったポケモンを埋葬していた
+.・ꊛᱸ❄︎ꊛᱸ❄︎ ꊛᱸ.・ꊛᱸ❄︎ꊛᱸ❄︎ ꊛ.・ꊛᱸ❄︎ꊛᱸ❄︎ ꊛᱸ.+・
🔸
「よぉ、オス猫〜」
薄暗い取引倉庫の奥、レントがにやりと笑いながら声をかけた。
ウィスペルは肩越しにちらりと視線を向ける。
薄紫の瞳が、冷ややかに彼を射抜いた。
「君は本当に名前を覚えないねぇ。記憶力、死んじゃったのかな?」
挑発めいた口調に、レントは鼻で笑う。
「覚えても意味ねぇじゃん。所詮は“道具”でしかねぇのに、なんで正式名称以外の名前なんか使わなきゃなんねーんだよ」
「
……
ふぅん。じゃあ“ウィスペル”って呼ばれる度に、君は少しだけ負けた気分になるんだね」
「は?」
ウィスペルは微笑を浮かべながら、尻尾でレントの持つ捕獲装置を軽く弾いた。
「だって、僕が“道具”なら
――
君はそれを売る“人形”だろ? どっちが上かなんて、案外曖昧だよ」
レントの笑みが一瞬だけ引きつる。
だがすぐに、わざとらしく肩をすくめた。
「へぇ
……
口だけは一丁前になったじゃねぇか。ま、せいぜい“次の出荷”まではその口が利けるといいな」
そう言い残し、レントは倉庫を出ていく。
残されたウィスペルは、静かに息を吐いた。
首輪の拘束音がわずかに鳴る。
「
……
道具、か。君たちはいつまでそう言い聞かせていられるかな」
その声は、闇に溶けて消えた。
❄︎••┈┈┈┈••❄︎••┈┈┈┈••❄︎
🔸
薄暗い倉庫の中、モパモパの頬に冷たい風がかすめた。
縄で縛られた手首が痛む。そこへ、足音。
――
低く、確かな足取りが近づいてくる。
「おい、お前、大丈夫か
……
?」
影の中から現れたのは、淡い黄色の髪をした青年だった。
その瞳は燃えるように鋭く、それでいてどこか悲しげでもあった。
「
……
そんなに警戒すんな。俺はバシャーモの槐(えんじゅ)だ。あの人みたいに酷いことはしねぇよ。」
青年
――
槐はしゃがみ込み、モパモパの縄に手をかける。
荒っぽい見た目に似合わず、指先は慎重で優しかった。
縄が少しずつ緩み、痛みが和らいでいく。
「
……
なにして
……
」
掠れた声を漏らすモパモパに、槐は短く息を吐いた。
「お前、嫌がらせで誘拐されたんだろ?
……
すまん、少し話を聞いちまったんだ。」
モパモパは黙ったまま、槐の手元を見つめていた。
彼の言葉の中に、怒りでも哀れみでもなく、ただ“同情”のようなものが滲んでいた。
「
……
君、こんなことしたら
……
ただじゃ済まないんじゃないの?」
その問いに、槐は口の端を上げる。
「ははっ。なんだよ、こんな状況なのに俺を心配してんのか。お人好しって言われるだろ?」
「
……
」
「そりゃな、“ただじゃすまない”ぜ。でも俺は
――
あの人の手持ちだ。お立て方くらい、わかってるつもりだよ。」
“あの人”という言葉に、モパモパの目がわずかに揺れた。
「
……
そう。」
「それにな、元々あんな性格じゃなかったんだ。」
「え
……
?」
槐は何かを思い出すように、遠くを見る。
その瞳に映っていたのは、きっと今はもう戻らない過去だ。
「ほら、解けたぞ。」
縄が完全に外れ、自由になった腕がわずかに震える。
槐は立ち上がり、裏口の方を顎で示した。
「裏口に案内してやる。」
夜風が二人の髪を揺らす。倉庫を抜けると、月明かりが静かに差し込んだ。
「もうこんなところ、来るんじゃねぇぞ
それと
…
ウィスペルにもよろしくな」
そう言って歩き出す槐の背に、モパモパは声をかけた。
「
……
ウィスペルくんを、知ってるの?」
立ち止まった槐は、ほんの一瞬だけ振り返ったその表情は笑っているようで、どこか痛々しかった
「
――
昔、少しだけな。」
そう呟くと、槐は夜の闇に溶けていった。
残されたモパモパの胸には、得体の知れない温もりと不安だけが残った
❄︎ ❅ *. ❅ ✥ ✣ ✤
🔸
業者のひとりに腕を掴まれ、引きずられるようにして連れてこられた先は
――
円形のステージ。その周囲をぐるりと取り囲むように設けられた客席には、
怒号と歓声、笑い声、そして酒の匂いが満ちていた。
――
まるで闘技場。
小さなウィスペルには、その場所が“遊び場”だとは到底思えなかった。
眩しい照明に照らされ、足元がやけに広く感じる。
どうして自分がここに立たされているのかもわからない。
けれど、背中を押す業者の手がすべてを物語っていた。
逃げ場なんてない
――
。
「
……
や、やだ
……
どこなの、ここ
……
?」
問いかけても返事はない。
代わりに、冷たい掌が背中を叩く音が響いた。
ステージの中央へと突き飛ばされ、転びそうになりながらも必死に立ち上がる。
目の前には、一人の男が立っていた。
鋭い眼光、握りしめた拳。
その瞳に宿るのは、明確な“殺意”
――
。
言われずとも、ウィスペルにはそれが分かった。
「ぼ、僕
……
戦えない
……
嫌だ
……
無理ですッ!!!」
叫んだ声は、歓声と罵声にかき消された。
観客はそれを楽しんでいる。
まるで小さな命が壊される瞬間を、娯楽として待っているかのように。
震える手で顔を覆う。
そのとき
――
男が、ゆっくりと手を上げた。
「ッッ
……
!」
恐怖に息が詰まる。
心臓が痛いほど鳴り響き、涙が頬を伝った。
けれど、誰も止めようとはしない。
誰も、この“遊び”を間違っているとは思っていなかった。
――
あの日、ウィスペルは初めて知った。
この世界には、笑いながら人を傷つける者たちがいるのだと
◈◇♡◇◈
:;;;;;;:
◈◇♡◇◈**:;;;;;
🔸ウィスペルとパン
錆びた鉄格子の向こうに、淡い月の光が落ちていた。
冷たい石の床に並んで座る二つの影
――
ウィスペルと、隣にうずくまる小さな色違いのパモ・パン。
「ねぇパン
……
ここから出られたらさ、何したい?」
不意にウィスペルが笑う。
その笑みはどこか儚く、夢のように淡い。
「
……
またそのお話ですか」
パンが小さくため息をつくと、ウィスペルは肩をすくめて笑った。
「だってさ、少しでも幸せな時間があったらいいじゃん。ね? んで、何やりたい?」
少しの沈黙。
やがてパンは、ゆっくりと口を開いた。
「ふふ
……
なんですかそれ
……
そうですね
……
お姉様に会いたいです」
「お姉様?」
「はい。とても食いしん坊で、元気で
……
今もどこかでお腹を空かせていないか心配なんです」
ウィスペルは微笑んだ。
その瞳には、ほんの一瞬だけ羨望の色が宿っていた。
「いいね
……
。僕は、そうだな
……
」
言葉が途切れる。
少しの間をおいて、彼は静かに続けた。
「家族はもう
……
いないけど。
でも
……
“幸せになること”を、したいな〜って思うんだ」
パンはそっとウィスペルの袖を掴んだ。
その小さな仕草に、彼は少しだけ笑う。
「
……
きっとできますよ、ウィスペル」
「うん
……
できるといいな。」
月明かりが二人の頬を照らす。
冷たい空気の中で、その小さな希望だけが
――
確かに温かかった。
❄︎ ❅ *. ❅ ✥ ✣ ✤
🔸
「オランピア?
……
グローブをはめて
……
また家臣たちに怒られてしまうよ」
執務室の扉を開けたエトアールは、机の上に拳を置いて構えている妹の姿に目を細めた。
陽の光に透ける黄緑色の髪がふわりと揺れ、彼女はいたずらっぽく笑う。
「ふふ
……
好きな殿方を守るために、本気を出そうかと思いまして」
「そうか
……
好きな殿方を
………………
」
エトアールの声が止まる。
「
…………
殿方!!??」
反射的に机を叩いて立ち上がった兄の声が、部屋中に響いた。
「ふふ〜あらやだ、言ってしまったわ〜でもそうなの♡」
頬に手を当てて照れるオランピアを前に、エトアールは言葉を失う。
呆然としながらも、どこか安堵したように眉を下げた。
「
……
まったく、おまえはいつも急なんだから
……
」
「お兄様が鈍感すぎるだけですわ」
笑いながらグローブを外すオランピアの姿にエトアールは苦笑を浮かべつつも、少しだけ寂しげに呟いた。
「
……
でも、誰かを守りたいと思えるようになったのなら、それは良いことだよ。」
「ええ。だって
……
その人は、お兄様みたいに優しいから」
その言葉に、エトアールは揺らいだ
「
……
まったく、やれやれ
……
」
――
兄妹の部屋には、穏やかな笑い声が響いていた。
❄︎ ❅ *. ❅ ✥ ✣ ✤
🔸夕暮れの風が、研究棟の屋上を抜けていく。
ラギは手すりにもたれ、苛立たしげに舌打ちをした。
「どいつもこいつも恋バナなんぞ俺にしやがって
……
くっそ、気持ち悪りぃ」
ぼやく声に、背後から明るい声が返ってくる。
「?? ぱぎゅは幸せですぅ♡ ラギも好きな殿方が現れたら、きっとわかりますよ〜」
振り返れば、花飾りを髪に結んだ少女・ぱぎゅが、にこにこと微笑んでいた。
まるで春そのもののような彼女に、ラギは眉をひそめる。
「やめろ、ぱぎゅ
……
お前みたいに年中花咲かせてねぇんだよ」
「ふふ、でもスキンシップくらいはいいんじゃないでしょうか?」
「は? なに言って
……
お、おい近いって」
ぱぎゅが一歩、また一歩と近づく。
彼女の指先が、ラギの頬を軽く撫でた。
柔らかな花びらのような感触に、ラギの体がびくりと跳ねる。
「ほら♡ やっぱりここ、敏感なんじゃないですか〜?」
「ふぁっ♡
…
ッッッ!? な、なにすんだよお前ぇぇ!!」
ぱぎゅはくすくすと笑いながら、ラギの反応を面白がるように眺める。
「身体は正直なんですねぇ、ラギちゃん♡」
「どこ触っとんじゃコラーーー!!💢」
ぱぎゅの花飾りが風に揺れ、二人の影が重なって揺れた。
屋上にはまだ、夕焼けと笑い声が残っていた
❄︎ ❅ *. ❅ ✥ ✣ ✤
🔸『好きなあの人にデザートを贈ろう〜の会』
「僭越ながら本日の進行を務めさせていただきます、ウィネットです!」
彼女の声が教室に響く。机の上にはずらりと並んだ調理器具とチョコレート。
「今日作るのは
――
ガトーショコラ!甘さの調節もできて、美味しいケーキですよ」
拍手と期待に満ちた空気。
……
しかし、このメンバーで“無事に終わる”わけがなかった。
「それではまず、チョコを溶かして
――
」
――
チュドーン!!
「セクシー先生!!電子レンジが壊れました!!」
「なぜ!?あと鬼燈(ほおずき)さん、私“セクシー先生”じゃないです!」
ウィネットのツッコミが教室に響く。
煙がもくもくと立ちのぼり、チョコの香りと焦げの匂いが入り混じる。
「
……
えぇと、では次に生クリームを加えて
――
」
「わー!せんせい!!生クリーム致死量入れたら固まらなくなっちゃった〜」
「クラウンさん!?なぜ致死量を!?料理で命を脅かさないでください!」
ウィネットの額に冷や汗がしたる
彼女は深呼吸して説明を続けるが
「さ、最後の仕上げに粉砂糖を
――
」
「はい先生!できました!」
「
……
獅子丸さん、それは
……
おにぎりですね?」
「いやぁ、普通に握ってたんですが」
「握るものじゃないです!!」
ウィネットは頭を抱えた
「
……
好きな方の胃袋、みんな本当にこれで掴めるのでしょうか
……
」
そんな不安をよそに、数日後
――
。
彼女のもとに届いた数通の手紙。
『あの人、すごく喜んでくれました!』『おにぎりガトーショコラ完売しました!』
ウィネットは思わず微笑んだ。
「
……
結果オーライ、ですかね」
その日もまた、料理部の扉の向こうから
――
「先生ぇ!泡立て器が爆発しましたぁ!」
「なぜ!?!?」
……
悲鳴と笑い声が、甘い香りに混じって響いていた。
❄︎ ❅ *. ❅ ✥ ✣ ✤
🔸
「やぁ、ミリー」
「ルー様
……
いかが致しましたか?」
「いや、最近のリストはとても良質でね。君の仕事ぶりのおかげだろう? 少し労おうと思ってね」
いつもは冷淡で、何かを褒めることなど滅多にない人が、柔らかく微笑んでいる。
その“笑み”が、むしろ不気味だった。
「
……
えぇ、ありがとうございます。レントも最近は頑張っているようでして」
「そうだね。あぁ、わかっているよ。今度、久々に“休日”を与えるつもりだ」
“休日”。その言葉の意味を、この屋敷の誰も素直には受け取れない。
「
……
ありがとございます。それでは」
背を向けかけたミリーの耳に、低い声が落ちる
「そうだね
――
あのラティアスの娘にも伝えておいてくれ」
一瞬、空気が凍る。
ミリーの喉が、静かに鳴った
「
……
かしこまりました
……
」
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