三毛田
2025-10-15 16:18:37
1072文字
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46 046. 握りしめた指の中

46日目
君への贈り物

 その手のひらが傷ついて欲しくなくて、ゆっくりと力の入った指を外していく。
「穹?」
「お前の手が傷つくのが嫌だ」
「とっくに傷だらけだ」
「訂正。俺の目の前で、傷ついていくのが嫌」
 ああ。強く握り込んでいたからか、爪の跡がついている。
 そんなことをしても何も変わらないと思いつつも、爪の跡へ唇を落とす。
「っ」
 驚いたようで、腕を引っ込めようとする。でも、逃さない。
 意志を持って掴んでいるから、簡単には振りほどけないだろう。
「は、離してくれっ」
「丹恒が、こういうことしないって約束するなら」
「こ、こういうこと?」
「自分を傷つけようとすること。なんでだって顔してるな」
「当たり前だ。そんなこと、初めて言われた……
 まあ、そうだろう。俺だって、初めて口にしたんだから。
「痛いだろ?」
「お前より頑丈だから、そこまででもない」
「そうだとしても、俺は嫌だ」
「訳が分からない」
 ちょっと眉間にシワが寄せられ、首を横に振る。なんだか納得してくれなそうだが、俺も納得させようと思っているわけじゃないし。
 もっと自分を大切にしてくれ。その言葉は、今の彼には響かない。それだけは、胸を張って言えてしまう。それが少々悲しい。
 何故。
 その一言で簡単に切り捨てられてしまう。
「お前だって、俺が自傷したら止めるだろ。絶対」
「当たり前だ」
「それと同じ。戦って傷つくのと、自ら傷つけるのじゃ、全然違うんだよ。丹恒」
「っ」
 もう一回手のひらにキスをすると、やっぱり肩を跳ねさせ。
 ほんのりだけど、頬が赤いことに気づいた。
「姫子やヨウおじちゃんはもちろん、俺もなのもパムも、心配するから」
……
「覚えておいて」
 指の付け根をスリスリ撫でたら、流石に力強く振り払われてしまった。
 もう少し手を堪能したかったけれど、残念。
「穹」
「どうした? 丹恒」
「お前に、触れたい」
「ほら」
 手を差し出すと、恐る恐る重ねて。でも、嬉しいのか表情は柔らかくて俺の心を握り潰すかのように掴む。
「お前の手は、安心する」
「手、だけか?」
……おまえの、すべてが」
「よく出来ました。いい子の丹恒には、ご褒美だ」
 もう片方の手に握っていたものを、彼の指に通す。
「これは?」
「指輪。よくある給料ンヶ月分とかじゃなくて、安いものだけどさ。丹恒に合うものを選んだんだ」
「そうか……
 不思議そうに眺めた後、手触りとかを確認し。
「戦闘中は邪魔だから、ネックレスにして」
 チェーンを渡すと、いそいそとそちらへ通す。