みずあめ
2025-10-15 00:43:39
1586文字
Public brmy
 

ゆづあい

ワンライお題「プール」

※全て捏造

ナイトプールイベントの打ち上げの日、俺は水着に着替えた後に自分の胸元に虫刺されのような赤いあとがあることに気がついた。一緒に来て着替えていた恋くんが固まっている俺に気がついて「由鶴?」と声をかけてくれる。俺は咄嗟にシャツの前を合わせ、焦りを誤魔化すように笑顔を浮かべた。
「ごめん、一個連絡入れなきゃいけないこと思い出したから先に行っててもらっていい? 俺抜きで始めちゃっていいから」
……そう? まあでもまだ全員揃ってないだろうし大丈夫だと思うよ。じゃあお先〜」
「ありがとう、ごめんね」
恋くんが出て行き、一人きりになった更衣室の中でゆっくりシャツを開いて自分の体を見下ろす。そこには見間違いじゃなく赤いあとがあり、それは見る人が見れば──おそらく今日いる人のほとんどが、キスマークだと気がついてしまうようなものだった。
「逢さん……
昨日はイベント期間中ずっと泊めてもらっていた逢さんの家にお礼のお酒を持ってお邪魔して、時間も遅かったし少し酔ってもいたからそのまま泊まらせてもらった。イベント中は控えてもらっていた分、夜遅くまで体を重ねていて、今朝は寝坊ギリギリで慌てて身支度をしたから、キスマークをつけられていたことなんて少しも気がつかなかった。今日が打ち上げで、またナイトプールに行くことは言ってあったのに……。もしかしたら、というか絶対、わざと水着を着たら見える位置にあとをつけたんだろう。
今日はたとえ水着になったとしてもプールにいるのはaporiaのメンバーだけだし、絶対に水着にならなければいけないわけじゃない。逢さんのことだからそれを見越してこんなことをしたんだと思う。そんなの、怒れないどころか、可愛くて仕方なかった。
はぁと吐いたため息は熱っぽく、俺はスマホを取り出してまだ事務所にいるはずの逢さんに電話をかけた。数コールで繋がり、逢さんは『どうした』といつも通りの声で言う。
「逢さん……
…………心当たりがある』
名前を呼んだだけでそう言った逢さんに思わず少し笑ってしまった。仕方ないなぁとどうしてくれるんですかを混ぜた声音はきちんと伝わったようだ。
「そうでしょうね。もう、せっかくプールで遊べるはずだったのに……
『少しは悪いと思っている。が、俺が見られないのに俺以外のやつがおまえの水着姿を見ることを全く良いとは思っていないから、そこまで反省はしていない』
「開き直らないでください……。逢さんは、やっぱり来られなさそうですか?」
『ああ、まだ終わりそうにない。せっかく誘ってくれたのに悪い』
……俺も戻りましょうか?」
『人手が必要なわけじゃないから良い。おまえはちゃんとそっちを楽しんでこい』
……キスマーク、見られてもいいの?」
……水着は、なしで』
「ふ、ふふ、もう……
せっかくならプールで遊びたいし、夜でもまだ暑いから服は脱いでしまいたい。でも、ヤキモチを妬いてくれる可愛い恋人の心を無視してまでしたいことは一つもなかった。
「今日、逢さんの家に帰ってもいいですか?」
『ああ、もちろん?』
「逢さんだけ付けるのは不公平です。俺も逢さんにキスマークを付けさせて?」
…………ああ』
「よし。じゃあ打ち上げ行ってきますね。お仕事中にすみませんでした。後で会えるの楽しみにしてます」
……お疲れ』
「お疲れ様です」
電話を切って、自分の頬に手を当てる。緩んだそれをぐにぐにとマッサージしていつも通りの顔を作り、ロッカーから着替えを取り出した。
プールは、また今度逢さんと二人で来ればいい。俺はキスマークを見られたって構わないけど、いつも大人な逢さんが俺にだけ見せてくれる顔が大好きだから、今日はしっかり服を着たままで。心臓の上につけられた小さな独占欲の証は、俺だけの秘密にしておこう。